Scene2 - 3
それから俺とアキラは付き合い、梓ちゃんとは別れた。梓ちゃんは泣きながらもあっさり承諾してくれた。「だって……あなたにその気がないんじゃないかって思ってたから…」と言われたときは、謝罪の言葉をただひたすら述べるしかなかった。こういう心苦しい別れ方は精神的によくない。
晴れて恋人同士になった俺とアキラは、少し恋の相手と意識するも今までとさほど変わらない生活を送っていた。というのも、2人とも同じ学校で恋人同士になる前から登下校も学校にいるときも何となく一緒にいたし、お互い家も近いのでよく遊びにいっていたからだ。
でもデートするときは、もっと好かれたいと今までよりキマッた格好をするようになった。恋人らしいこと――キスも頻繁にするようになった。もちろんディープもあった。セックスも…した。したけれど、アキラはいつも最後の最後でやめてしまうのだ。
「何で…ここまでしといてッ」
「ごめん…。これ以上やるとハイネを汚してしまいそうで」
見るからにアキラ自身も限界に来ているはずなのに、こんなことを言って決して俺の中に挿れることはなかった。付き合って何ヵ月経ってもそれは変わらなかった。
(どうしてだろうか…)
普通好きな相手とセックスするのだから、もう少しガツガツ来てもおかしくないのに、アキラは変に遠慮する。前戯のときだってそうだ。まるで俺を蝶の羽を掴むように扱う。この頃の俺はアキラへの想いが固まっていたし、心も躰も開いていたはずだ。なのに、アキラは……。
(もしかして、あまり好きではなかったりして……俺が梓ちゃんにキスさえできなかったように、俺にも……)
そう思ってしまったら涙が出てきた。きっと梓ちゃんの件の罰が今ごろ回ってきたのだろう。
(どうしよう…もしアキラに振られたら)
その心配はこの後見事に的中してしまうのである。
***
その日もアキラの家に行こうとしていた。事前に連絡を取り、いざアキラの家の前に来たところで俺は来た道を引き返した。
(……やっぱり…!!)
俺は悔しくて悲しくて涙が出た。何度袖で拭っても涙が溢れてくる。
(…何だよアキラ、嘘つきやがって……っ!!)
俺は早足から駆け足になった。行き先は定まっていない。ただアキラの家から離れたい一心で走った。
(……やっぱり…俺のことは好きでも何でもなかったんだ……)
声を上げて泣きたかった。
その日アキラは、家の前で知らない女と抱き合い、キスをしていた。