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第八話 男子たるもの(後)

 文化祭はいつもより早めに家を出なければいけない。

 麻井睦美は、彼女の友人である数少ない女子生徒と学校に向かっていた。 



 ――さて、突然だが私は生徒会のイメージがあまりない。

 せいぜい高校野球応援で応援団をやってたな、ぐらいのイメージだ。

 なぜそんな話になったかと言えば、今、隣にいるのが生徒会役員なのである。

 

 私の女友達は数少ない工業高校の女子にして生徒会役員である。その娘の話によれば、陰ながら、F工生徒会は文化祭準備でも頑張っていたらしい。

 昨日の準備も、夜遅くまで各教室のチェックを行っていたというのだから恐れ入る。

 時々「この学校の生徒会は恐れられている」的な小説があったりするけど

 私立の御曹司みたいな生徒ならともかく、県立高校の民主的に選挙で選ばれた生徒会に権力などあるわけがない。

 少なくとも私の高校生活に時々出てくる生徒会は権力を持った連中ではなく、学校のためと信じて頑張っている苦労人集団のようだ。

「私にはムリだなー」

 何気なくつぶやいたのを友達に聞かれ苦笑されたところで、きり良く我が母校に到着した。



 秋晴れの学校は文化祭一色になっていた。

 昨日は準備のために良く見る余裕は無かったがこうしてみると、どこも結構飾ってあるな……。

 私はふと、ベランダの一角にアダルティな吊り看板を出している教室を見つけてしまった。

 おお、あれは間違いなく一年土木科。

 再び苦笑した友達とともに私も笑うしかなかった。


「遅いぞ麻井」

 スーツに身をつつんで格好だけはホスト風の飯島大介は気合十分だった。

 わかったからポーズを決めるな気持ち悪い。ジョジョ立ちっぽいぞ。

「ベランダの看板どうしたの」

「お前帰ったあとに俺たちが残って作ったんだよ」

 だからその行動力をなぜ勉強に活かせないのだろうか。

 突っ込もうとしたが、すでに男子連中は円陣を組んで気合を高めていた。

 これからある意味、男目当ての女たちがぞろぞろ来るのだから気合の入り方も違うのだろう。

 女子高ってこんな風だったかな、と私はロッカーに荷物を入れながら考えていた。まあ女子高によっては男子禁制とか外部の人禁止の文化祭とかあるからなあ。

 そういえば、女子高でお化け屋敷をやるとき、男の人のセクハラを防ぐために

 安全そうなら「いってらっしゃーい」と見送り

 ちょっと触ってやろうか的な危なそうな人だと「気をつけてー」と使い分け、お化け役の子に注意を促すと聞いた事がある。ホントかな。

 そんなどうでもいいことを考えているとぼちぼちお客さんが入ってきた。


「いらっしゃいませえ!」

 元気のいいというより威勢のいい男連中の声が響く。いや、すし屋じゃないんだから。

 やはり女子高生が多い。あと誰かのお母さんらしき人や女の先生なんかも入っていったりする。またたく間に教室のイスは一杯になってしまった。

 これだとここにいるのはジャマかな。早々に私は教室を出る事にした。


  そして私は朝一緒だった生徒会の友達と今現在、校内をブラブラしているというわけだ。

 生徒会も準備までは忙しいがいざ本番になるとほとんどヒマなのだという。

 そして彼女のクラスである電気科はお見合いゲームとしてねるとん風の喫茶をやっているらしい。

 生徒会、マジ適当。

 ま、当然ながら普通の出店風の教室もあるわけで、そこでホットドックをほお張ったりフライドポテトを食べたりと有意義な時間を送った。やはり色気より食い気だよ、うん。

 

 やがて、文化祭終了の時間となり、私も教室へ戻ってきた。

 土木科の連中もどうやら有意義な文化祭だったようだ。飯島はお客さんとメアドを交換したらしく勝ち誇って一緒に撮った写メを見せてきた。いや、別に見たくないし。

「いやーやっぱ俺ホスト向いてる」

「それはよかった」

 適当に流す。浮かれバカは始末におえん。

「その調子で、明日も頑張ってね」

 飯島は不思議そうな顔で聞いてくる

「あれ、明日って……?」

「片付けでしょ」

「あ」

 飯島、お前。

 準備があったら片付けもそりゃあるだろ。なんですっかり明日は授業の気分なんだよ。

 ……明日は、男子のヤル気もいつもどおりなんだろうなあ。


 おそらく明日の掃除は男子の協力は得られないことを感じ、睦美は大きくため息をついた。 


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