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第十話 土木科の12月21日

 一年なんてホントにあっというま――

 とある工業高校の女子高生は白い息を吐きながら学校へと歩いていた。

 そしてこの一年、正確には春からだが――彼女は普通の女子高生よりは個性的な一年を過ごしてきた。


 一年の終わりが早く感じると年寄りって本当だろうか。ならマズイ。

 ……きっとあまりにも高校生活の内容が濃いからだ。そうだ、きっとそうだ。まだまだ若い十七歳、麻井睦美は自己暗示をしつつ高校へと向かっていた。


 ま、確かに色んな意味で人生には刻まれるだろう。

 高校入学でいきなり貧乏キャラにされ、バカと出会い、高校生活をエンジョイしてるけど、でもクラスメイトは全員男子で。

「……」

 なんか可哀そうじゃないか?私。なんかだんだんそう思えてきた。

 いや、大丈夫。頑張れ私。とりあえず終わり。冬休みでバカとは二週間近くお別れさ。

 自分にポジティブに言い聞かせる。ため息ばかりの自分とはグッバイですよ。

「……」 

 でも今日の大掃除めんどいな。結局、白いため息をつきつつ私は学び舎へと足を運ぶ。

 ……よし、来月からグッバイしようか。

 

 師走。なぜか何かと忙しい月――


 工業高校に入学して、私は一つ勉強した。

 結局、工業高校だろうがなんだろうが終了式の日程というものは基本的に変わらないらしい。

「これから全校集会やって、大掃除やって、見たくも無い通信簿を渡されて。で、帰る」

「通信簿だけもらって帰りてえ」

 裏の席に座る飯島大介が、私が言いたくても我慢していたことをさらっと言っている。

 うん、同感だ。でも口に出すなよ。

「ていうかあんた成績大丈夫なの?」

 飯島の立場に私がなっていたら正直言って心穏やかに年末を過ごせる自信が無い。それくらいこいつの成績はボロボロなのだ。

 しかし飯島は、いつものようにヘラヘラしながら

「心配すんなって。滑り込みセーフしてやるから」

 と、他人事のように語る。いや、別に心配したわけではないんだけど。

 きっと目の前にいるこの男は将来フリーターか大物かのどちらかになるのだろう。確率的にはフリーターが多めで。

 さて、このバカは放っておいて、体育館に移動しますか。終了式に行かないと……


 ――――――

 

「ストーブ!」

 数十分前、教室を出て行った女子高生が震えながら教室に飛び込んできた。


 先生、全校集会ってのはどうして体育館でやるんですか?なんで暖房入ってないんですか?ねえ先生。

 足元がとても寒いです。女の子はデリケートなんです。冷えってのは足が太くなる原因なんですよ?

 全校集会が終わったあと、私を含めた土木科の生徒たちはわらわらとストーブを囲み始めた。

 さあ早く暖まるんだ。頑張って着火装置。

 私は心の中で今か今かと待ち望んでいた。


 ――期待に満ちた土木科の生徒たちに、思わぬ事態が待ち受けていた。

 『ムダに颯爽と登場した』(麻井談)担任に

「大掃除するんだからさっさと動け」と、教室の窓を全開にされ、さらにはストーブのコンセントが抜かれてしまったのだ。

「マジかよ……」

 飯島大介がつぶやいていたが、ほとんどの生徒は同じ気持ちだったろう。麻井睦美ですら顔に不快感が出ていたのを隠そうとしていた。

 こうして、強制的に大掃除が開始されることとなり、土木科の生徒たちはテンションが低いまま持ち場に散っていった。


 ――――――


「うわ……」

 テンション、コンディション最悪の大掃除は何とか終わらせ、本日最後の仕上げである通信簿をたった今、手に入れた。

 予想より悪いな。「1」が少し……。


「飯島、あんた顔が凄いことになってるよ」

 麻井が話しかけてくる。どんな顔になってんだよ俺。

「いやあ予想より良くってね」

「嘘つけ」

「お前はどうなんだよ」

「見る?」

「見ねえ」

 どうせそれなりにいい成績なんだろうしな。

「よし、麻井」

「何?」

「俺、来月から本気出す」

「…………そうか。とりあえず信じてやろう」

 なんだその間は。

「よーし、本気出すぞ!」


 やる気に燃える俺の前で麻井は

「うーんやっぱり明日からグッバイしようかなあ……」とか訳のわからないことを言っていた。

 そんな今年の学校最後の日。

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