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気まぐれな銀のペルシャは、婚約者の想いを知らない

作者: 茉莉花
掲載日:2026/05/31

「オーウェン様、今度カフェに行きませんか?美味しいケーキが評判なんだそうなの」


「それは素敵だね、リンジー。ただ、私はこうやって君と寄り添っている方が好きなんだ。カフェではテーブルが私たちの邪魔をするからね」


「まあ、オーウェン様ったら」


 リンジーは肩に頬を寄せる。

 オーウェンはリンジーの癖のある髪を指先に絡ませる。

 傍から見れば、恋人同士の逢瀬だが、周囲は知っている。リンジーが恋人ではないことを。



「それじゃ、リンジー。私は行くよ」


「え?もう終わりなの?」


「ごめんよ。また君に会いに来るからね」


 そう言うと、オーウェンはリンジーの頬にキスを落とす。

 リンジーは、頬に手をあてると笑みを浮かべ、空いている手をヒラヒラと振った。




 オーウェンが歩み出した先には、たくさんの書類を抱えた令嬢がいる。


(クローディアだ……)


 彼女の名は、クローディア。黒い長い髪をバレッタで留め、ピンと伸びた背筋が美しい。

 オーウェンは、彼女が行く先をしばらく見つめる。すると一人の男性が近づいてくるのが見えた。

 生徒会長のカーティスだ。

 最終学年になりクローディアが彼といるのをよく見かけるようになった。婚約者以外の異性と親しくしている様子に、なぜだか胸の奥がざわつく。

 しかし、よく考えてみれば、自分も似たようなことをしているのだ。

 それなのに、クローディアが他の男と並んでいる姿は、妙に目についてしまった。

 オーウェンはなんとも言えない気持ちになり、くるっと方向を変え歩き出した。




 銀の髪とエメラルドの瞳を持つオーウェンは、軟派で気まぐれな性格から『銀のペルシャ』と呼ばれている。

 オーウェンには幼いころから婚約者がいる。その婚約者がクローディアだ。

 クローディアはオーウェンと反し、硬派で実直。華やかさや刺激はないが、礼儀正しく誠実で、侯爵家の妻として申し分ない令嬢だとオーウェンは思っていた。

 だからこそ結婚相手として不満はない。

 だが、学生の間くらいは恋や遊びを自由に楽しみたいとも考えていた。

 そのため、学園に進学する際、クローディアにこう告げた。


「ちゃんと結婚はするから、学園生活を満喫させてほしい。いろんな人と交流したいから、君とは他人でいたいんだ。婚約者であることは内密に」


 クローディアはコクリと頷き、それを肯定と受け取ったオーウェンは自由気ままにいろんな令嬢と交流している。




 今度は淡いブラウンヘアが流れるように美しい令嬢に声をかける。


「やあ、マイナ。今日も君は美しいね」


「あら、オーウェン様、ごきげんよう」


 すっと近づいたオーウェンは、マイナの手を取ると甲に口づけた。


「これからランチをしようと思っているが、君も一緒にどうだい?」


「ええ、よろしいですわよ」


「では、食堂に行くとしよう」


 オーウェンはマイナに腕を差し出し、彼女をエスコートする。




 オーウェンには遊び相手が多数いた。令嬢たちも遊び相手だと認識し割り切っているものがほとんどであり、トラブルになることもなかった。

 ところが、この日はそうではなかった。


「オーウェン様、どういうことですの?」


「おや?キャロラインではないか。どういうこととは?」


「今朝お食事をご一緒しないかとお誘いした時には、今日は誰かと食事はしないと仰っていたじゃありませんか」


「ああ。今朝はそういう気分だったんだ。今はマイナと一緒にいたくてね」


 キャロラインは眉間に皺を寄せ、マイナを睨みつけた。

 マイナはというと、やれやれとばかりに席を立った。


「私は行くわ。元々お約束していたわけではございませんし。こちらどうぞ」


 トレーを持ち去っていくマイナ。そこにキャロラインは座った。


「キャロライン、後日改めて食事を共にしよう。そうだな、明日のランチは君ととると約束しよう」


そう告げると、マイナの行く方を見つめているオーウェン。自分に関心がないのだと理解したキャロラインは、すっとオーウェンの飲み物に細工した。


「明日、……期待せずにお待ちしておりますわ」


 キャロラインはオーウェンを残し去っていった。


(やれやれ……。今はふわふわした髪じゃなくて、サラサラした髪に触れたかったんだ)


 立ち去るキャロラインの弾む毛先から目をそらすと、オーウェンは残っていた茶を飲みほした。




 クローディアの前に一匹のペルシャが現れた。どこから入ってきたのだろうか。

 学園の門にはいつも職員が立ってくれているはずだが……。

 真っ直ぐにクローディアに近づいてくるペルシャ。ニャーと何かを訴えている。

 クローディアは手を伸ばすと、ペルシャを抱き上げた。

 まじまじとペルシャの瞳を見つめる。銀の柔らかい毛並みにエメラルドのような瞳。


「あなた……そっくりね」


 その呟きに返事をしたかのようにニャーとなくペルシャがかわいくて、思わず微笑んだ。


「ふふっ」


 するとペルシャはクンクンと鼻先をクローディアの顔に近づけてきた。

 その鼻先がクローディアの口元に触れようとした瞬間、クローディアは腕を伸ばし、ペルシャと距離を置いた。


「ここはだめよ」


 クローディアは窘めた。

 ペルシャを下に下ろしたクローディアは、教室へと戻っていった。





 時を戻すこと数刻前。

 茶を飲み終えたオーウェン。しばらくすると、体がぽかぽかと温まりだした。心なしか呼吸も荒くなる。


(どうしたというのか……)


 物陰にうずくまったオーウェン。

 気が付くと、視界が低くなっていることに気が付いた。


(え?)


 手を見れば、銀色のふわふわとしたものがある。


(毛?)


 オーウェンは猫に変わっていた。


(どういうことだ!?)


 後ろを見れば、長いモフモフがゆらゆらとしている。


(……これは、しっぽじゃないか……)


 キョロキョロと辺りを見回す。人気はなかった。

 誰かに見られた様子がないことにほっとするが、これからどうしたらいいものかともう一度辺りを見回す。

 すると、遠くを歩くクローディアを見つけた。


(クローディア!)


 慌てて駆け寄ると、クローディアに抱き上げられる。


(クローディア! 私だ! オーウェンだ!)


 いくら叫んでも猫の鳴き声しか出てこない。

 じっと見つめてくれるクローディアの瞳はサファイアのように輝いていた。


「あなた……そっくりね」


(そっくり? いったい何に?)


 聞き返そうにもやっぱり鳴き声しかでない。必死に訴え続けていると、


「ふふっ」


 目の前のクローディアが笑った。


(かわっ……)


 オーウェンは彼女に顔を近づける。

 滑らかな肌に、その愛らしい口元に……。

 まるで吸い込まれるかのように、首を伸ばし鼻先をクンクンと近づける。

 あとちょっとのところで、急に距離が遠くなった。


「ここはだめよ」


 クローディアに窘められると、地面に下ろされてしまった。





(はあ、はあ。いったい、どういうことだ?)


 どうにもならず無我夢中で家に戻ったオーウェン。その頃には異変はなくなっていた。


「クローディア……」


(かわいかった……)


 クローディアの笑顔に思わず見惚れたオーウェン。

 いつもの女遊びの延長で、彼女にもキスを送ろうとするが、唇にキスをすることを咎められた。

 今日のクローディアの様子を思い出すと体が熱くなるのを感じた。


(クローディア……)


(……っ!?)


 そして、あることに気付く。

 女性の唇にキスをしようと思ったのは初めてだったことに……。






 クローディアの笑顔が頭から離れない。

 また見たいと思ったオーウェンは、クローディアに近づこうとするが、学園では他人でいようと言った手前、遠巻きにみつめることしかできずにいた。

 この日もクローディアは、凛とした背筋に添ったさらさらと長い流れる黒髪をバレッタで留め、颯爽と歩いていた。


(綺麗だったな……)


 クローディアを思い出しため息をつく。


「オーウェン様、何をお考えですか?」


 声をかけられ、はっと意識を戻したオーウェンは、今はキャロラインとランチ中だということを忘れていた。


「ああ。君との出会いについて思い返していたんだ」


「あら、オーウェン様ったら。ロマンチストなんですね」


(いや、そうじゃなくて……何でこうやって俺に近寄ってくるようになったんだっけ……。俺は気の強そうな女性は好きじゃないんだけど……)


 リンジーにしかり、マイナにしかり、とても穏やかな性格で柔らかい笑顔の女性だ。

 オーウェンの女友達はみんな雰囲気が似ている。その中で、キャロラインだけ異質だった。


「私の落としたハンカチを拾って追いかけてきてくださったんですよね。私は運命だと思いましたわ」


 オーウェンは本当にただ拾っただけだった。以降なんだかんだ声をかけられるようになったのだ。


(運命か……クローディアが婚約者なのは、奇跡なのかもしれない……)


 やはり頭の中はクローディアで埋め尽くされていく。

 心ここにあらずのオーウェンに腹を立てたキャロラインは、再びオーウェンの飲み物に細工する。


「オーウェン様、本日は調子がよろしくないようですから、また後日お会いしましょう」


 キャロラインは去っていった。




 オーウェンはまた体に異変を感じた。


(はあ、熱い……まさか、まさかな……)


 念のため人影のない場所へ向かうと、やはり、オーウェンは猫に変わっていた。


(どうしてしまったんだろう……)


(あ!)


 今ならばクローディアに会うことが出来るかもしれないと、オーウェンはクローディアを捜し歩いた。

 すると、カーティスと共にいるクローディアを見つけた。

 オーウェンは近くまで行くと身を潜めた。会話が聞こえるギリギリの距離まで近づく。


「本当に素敵な方ですね」


 クローディアに告げられカーティスは微笑む。


「貴方が婚約者ならいいのに……」


 ようやく聞き取れたその言葉に、オーウェンは衝撃を受けた。

 クローディアはまるで自分とは真逆のカーティスを想っているのか、あの愛らしい笑顔を彼は向けられているのかと思うと、なぜ他人でいようと提案してしまったのだろうかと後悔した。

 他の男が近づける余地を残してしまっていたことに気づいたからだ。

 その後は、どのように家に戻ったのか覚えていない。

 ただ、いつの間にか異変はなくなっていた。


 クローディアはカーティスを想っているんじゃないだろうか……。

 もし彼との未来を望んでいるのなら、自分はこのまま婚約していて良いのだろうか。

 オーウェンはクローディアと話をする決意をした。




 定例となっている茶会で、オーウェンはクローディアに話を切り出した。


「もし、他にいい人がいるなら、婚約を破棄しても、構わないが……」


 最後の方は声が小さくなってしまった。

 すると、クローディアの表情はいつも以上に色を失った。


「何をおっしゃっているのですか? 私もちゃんと結婚はしますよ? 貴方が婚約者ですから……」


──ちゃんと結婚はするから……。その台詞は、自分が先に伝えていた。


(君も……こんな気持ちだったのだろうか……)


 彼女は義務で結婚すると言っている。複雑な思いを抱いた。




(急にどうしたんでしょう……。婚約破棄しても良いなんて言い出すなんて……)


 クローディアの心は沈んでいた。

 幼い頃からの婚約者オーウェンは、華やかで陽気でいつも楽しそうにしているが、自分の前でだけ仏頂面で視線を合わせてなどくれなかった。

 次第に、彼に私は相応しくないのかもと考えるようになった。

 そう思っていた矢先、入学前に告げられた言葉に心を痛めた。


(私といるの嫌だったのね。公にしないって私が婚約者だなんて恥ずかしいと思っているのかも。でも結婚はするって……。親が決めたものだもの、仕方ないのかも……)


 彼は義務で自分と結婚する。

 そう信じていたのに、今はそれすらもなくなりそうだということに、クローディアはベッドに顔をうずめた。




 すっかり大人しくなったオーウェンは、女性と戯れることがなくなった。

 クローディアじゃなければ一緒にいても意味を持たなかった。

 結婚するならクローディアが良い。

 クローディアとの結婚は妥協でも義務感でもない。

 妻になるのは彼女以外に考えられなかった。




 そんなある日、カーティスが王女殿下と親しくしているのを見てしまった。


(え?)


 すると、同じく二人の様子を見かけた令嬢らが盛り上がっていた。


「今日もお二人は仲がよろしいですわね」


「ええ。卒業後に挙式の予定だそうですわ」


「王女殿下が留学中はこうやってお会いになることができませんでしたものね」


「大切にされていて、王女殿下が羨ましいですわ」


 オーウェンは、二人が婚約をしていることを知った。

 思い返せば、カーティスとクローディアは節度ある距離感で接していたように思えた。

 互いに婚約者がいたのだから当然だろう。

 そして、今のカーティスを見るに、王女殿下を大切にしていることがよくわかった。

 自分はクローディアに他人でいようなんて告げて、学園内では全く交流時間を持っていない。

 こんな婚約者を婚約者と言っていいのだろうか……。


──貴方が婚約者ならいいのに……。


 そんな誠実な彼をクローディアが想うだろうことは想像できてしまう。

 そして、そんな彼女の想いは通じないとわかると、オーウェンはクローディアを不憫に思った。




 以前のように令嬢たちを誘うこともなくなった。

 すると、それはそれでやきもきしているキャロラインに捕まった。


「オーウェン様。最近お会いしてくれませんが、どういうことですか?」


「今は誰とも過ごす気がないんだ……」


 オーウェンはキャロラインに見向きもせず答えた。そこにずいっと一つの包みが差し出された。


「では、こちらをお受け取りくださいませ。クッキーを焼きましたの」


「あ、ああ。ありがとう」


「誰かとお過ごしになる気になりましたら、お声掛けくださいませ」


 キャロラインは去っていった。

 手元に残った包みを見つめる。


(そういえば、今日はランチを食べてないか……)


 小腹が空いていたオーウェンは一つ食べることにした。




 クローディアの元に向かったオーウェン。

 なんと三度、猫へと変わってしまったのだ。

 またクローディアに会うチャンスを得た。

 またあの笑顔が見たい。彼女の気持ちを聞きたい。

 オーウェンは探し回った。


 視界の先にクローディアを見つけた。

 ペルシャに気づいたクローディアは笑顔で迎え入れてくれた。

 オーウェンは抱き上げられると膝の上に乗せられた。頭から背中までなでられる。

 指先が毛並みを梳くたび、気持ちよさに目を細める。

 もっと触れて欲しくて、オーウェンはころりと寝転がり、お腹を見せた。

 ふと見上げたクローディアの笑顔はとても柔らかかった。


 そして、そこで彼女の本音を聞く。


「本当にあなたはオーウェン様にそっくりね。銀の毛並みはオーウェン様の髪と同じように輝いているし、緑の瞳は同じ輝きだもの。本当に美しい……。かわいそうなオーウェン様……彼は仕方なく私と結婚するのよ。こんな地味で面白みのない私と。婚約破棄、して差し上げられたらいいのだけれど、でも、私からはできないの……。好きなんだもの……。愛がなくてもいいから、彼と夫婦になりたい……」


 オーウェンは目頭が熱くなる。

 胸が張り裂けそうになるくらいに苦しかった。


(クローディア! 俺はここにいる。愛がなくてもいいからなんて……そんな風に思わせていたなんて……)


 彼女の表情は全て、オーウェンに向けられたものだった。

 暗い愁いを帯びた表情は、他人のように扱われて悲しかったから。

 ペルシャを見て微笑んだのは、オーウェンにそっくりな猫が愛らしかったからだ。


 オーウェンはそれを、猫を通じて知る。




 名残惜しかったがクローディアと別れたオーウェンは、家に戻る頃にはまた人間に戻っていた。

 どうやったら自分の愛がクローディアに伝わるだろうか……。なんてひどいことをしていたのかと悔いる。

 オーウェンは心を入れ替え、クローディアに行動で示し始めた。




「オーウェン様? いかがなさったのですか?」


 朝から屋敷の前でクローディアを待っていたオーウェン。


「おはよう、クローディア。一緒に学園へ行こう」


「え?」


 クローディアはエスコートされるがままに馬車に乗る。




「クローディア、次の授業はどこで受けるんだい?」


「オーウェン様? あの、私はこのまま同じ教室です」


「そうか。では終わったらまた来るよ」


「はあ……」




「クローディア、一緒にランチをしよう」


「……なぜ私なのですか? いつものご令嬢は?」


「君と食べたいんだ。いいかな?」


「ええ。構いませんが……」




「クローディア、一緒に帰ろう。送っていくよ」


「……ありがとうございます……」





 他人でいようと言っていたにも関わらず、態度が一変したオーウェンにクローディアは戸惑う。

 三日も経たずに学園内では銀のペルシャに飼い主が現れたと話題になった。

 たった一人に懐き、まとわりついていると。

 今までのご令嬢とは違い、真面目で清楚なクローディアだ。

 これまでとは違った様子に、周囲はオーウェンの本気を見た。




 ところが唯一納得しなかったキャロラインは、クローディアを呼び止めた。


「ちょっとあなた、いったい何なの? あとから出てきて何様?」


「え?」


 何のことかわからないクローディアは首を傾げる。

 この日もクローディアにまとわりついていたオーウェンは、クローディアを探していた。キャロラインの声が聞こえると避けようと思ったのだが、一緒にいるクローディアが目に入ると慌ててかけつけた。


「何をしているんだ?」


「オーウェン様! この女に聞いていたのです。あなたは何様のつもりかと。オーウェン様の何なのかと」


 キャロラインの敵意がクローディアに向いていると知ったオーウェンははっきりと告げた。


「彼女は私の婚約者だ!」


 辺りは一瞬、静寂に包まれる。


「こ、婚約者⁉」


 キャロラインの声が響き渡った。


「そうだ。クローディアに危害を与えないで欲しい。俺の態度に文句があるなら俺に言え。思わせぶりなことをしていたのかもしれないが、正直に言うと、君のことは迷惑だった」


 今までにないオーウェンの様子に、キャロラインはかっと顔を真っ赤にすると、踵をかえし去っていった。




 オーウェンはクローディアに頭を下げた。


「君との関係を内密になどと言って申し訳なかった」


「関係を明かしてしまってよろしいのですか? 私なんかが婚約者だと知られたくなかったんじゃ……」


 オーウェンは首を振る。


「そういうんじゃないんだ。俺は……君は安泰だと思ってたんだ。……婚約しているし、もう俺のものだと思っていた。しかし、君に近づく男がいることに不安になった。なんで、俺は安泰だと思っていたんだろう。君は、こんなにも綺麗なのに……」


 彼女は派手ではない。しかし透き通るような美しさがあった。


「クローディア、俺は、君に愛される夫になりたい。君に愛を与える夫になりたい。恋人じゃなくて、夫婦になりたいんだ。今まで、すまなかった……」


 オーウェンは頭を下げた。

 クローディアの瞳からは大粒の涙が零れ落ちた。


「……そんな言い方、ずるいです。それではまるで、永遠の相手でいてほしいと言われているみたいです」


「ああ、そうだ。俺は君の隣にいたい。これから先、ずっと……」




 この日の帰り道、馬車に揺られる二人は初めて隣同士で座る。

 ピタリと肩を寄せ、クローディアの手を握るオーウェン。

 クローディアの頬に絡むオーウェンの髪があの子を連想させた。


「本当にあなたは猫みたいな人ですね。私、貴方にそっくりな猫ちゃんに会ったことがあるんですよ」


「ああ。あの時みたいに頭をなでてくれないか?」


「え?」


 驚き固まるクローディアの頬を包むと、オーウェンは口づけを落とした。





お読みいただきありがとうございました。


気まぐれな銀のペルシャが、本当に大切な相手に気付くお話でした。


楽しんでいただけましたら、ブックマークや評価で応援いただけると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
改心したなら許してやることにしましょう。 一歩遅ければキャロライン刺されていたかもしれない。
ペルシャってことはかなり鼻の低い潰れっ子なのかしら…??長毛種がうろついてたらそりゃ抱っこしちゃうよね〜〜わかゆいもんねぇ…!! キャロラインに三回も薬を盛られてるのに学習してないのはどうなんだ、とは…
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