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初めて見付けたあの日から

作者: かみのみさき
掲載日:2026/03/07





 暖かな春の日差しを浴びて、土煙を起こさない様に、ゆっくりと、慎重に歩いて行く。

 ふと、木の上に猫が居たので、そっと撫でようとしたら、「ふしゃあああっ」と威嚇され、爆速で逃げられた。


(猫ちゃん……撫でたかったなぁ)


 撫でようとした手を下ろし、溜息を吐きながら、またゆっくりと歩き出す。

 目的の場所まで、あと僅か。

 私の身長と、殆ど変わらない門をくぐり、体育館へと足を運ぶ。そこには、"並々高校入学式"と書かれた、小さな看板が立て掛けてあり、私は一度、小さな出入口から離れ、手鏡で身嗜みを整える。

 お婆ちゃんに無理を言って、何とか許可を取り、初めて入学する、普通の高校。

 大丈夫、大丈夫と息を整え、小さな出入口に、頭をぶつけない様に入り、沢山の小さな椅子の、最後尾に座る。

 背が高い事は、自覚している。だからこそこうして、最後尾に座ったのだ。

 ポケットから、一枚の紙を破らない様に取り出して、自分のクラスを確認する。


『1ーC 鬼乃目(おにのめ) 里美(さとみ)


 そっと折り畳み、またポケットに仕舞う。

 辺りを見渡すと、沢山の同級生達が、和気藹々と話をしている。

 時折りこちらを見ては、直ぐに目を逸らされるけど、何処にも違和感なんて無い筈だ。

 念の為手鏡を取り出し、顔を確認する。


(うん、問題無い)


 座ったまま、再度ぐるっと、同級生達を見渡して行くと、最前列の真ん中に座る、一人の男子生徒に、目が止まった。

 他の同級生達と違い、"違和感"があった。

 ここからだと、後ろ姿しか見えないけど、それでも分かる、"違和感"があった。

 その"違和感"から、目が離せないでいる。

 寧ろ、座ってても自然と、その"違和感"が視界に入るので、どうしても見てしまう。

 入学式が始まり、校長先生の長話しが延々と続く最中でも、私はその"違和感"の有る男子生徒ばかりを、見てしまっていた。そして、いつの間にか、入学式が終わっていた。

 

(あっ、移動しなきゃ)


 ゆっくりと壊れない様に、パイプ椅子から腰を上げ、他の同級生達の、後ろを付いて行く。


(1ーC、1ーC……あった)


 ゆっくりと扉を開け、中腰になりながら、教室へと入ると、既に居たクラスメイト達が、一斉にこっちを見て来た。


(何っ、何で見て来るのっ)


 視線から逃げる様に、腰を曲げながら、黒板に貼られた、自分の席の位置を確認して、おどおどと、窓側最後尾の席に座った。

 

(机……小さいなぁ)


 足を曲げると、"机が"持ち上がってしまう。

 仕方無く足を伸ばすと、前の人の椅子に当たってしまったので、机ごと後ろに下がった。


(うぅっ、一人だけ列から外れるぅ)


 自然と溜息が、口から漏れた。

 誰にも話かけられず、話しかける勇気も出ずに、ぼーっとしながら、教室の扉を眺めていると、なんとあの、違和感の有る男子生徒が、入って来た。

 どうやら、クラスメイトだった様だ。

 動きを目で追っていると、違和感のある男子生徒が、何故かこっちに向かって来る。


(ええっ!? 何でこっちに来るのっ! もしかして……見てた事、気付かれてたっ!?)


 小さな机に目線を落とし、ビクビクと震えていると、足音が近付いて来た。


(怒られるのかなぁ……嫌だなぁ)


「宜しく」


(ふえっ? 今、話かけられた?)


 目線を前に持って行く。違和感の有る男子生徒の、威圧感の有る後頭部が見えており、どうやら前の席だった様だ。


(あれっ? 前向いて……私の勘違い?)


 きっと、違和感の有る男子生徒は、私では無く、前の席のクラスメイトに、挨拶したのだろう。そう考えると、少し寂しかった。

 

(でも、気になるなぁ)


 さっきの入学式の時ですら、あれだけ離れていたのに、目が離せなかった。それなのに、今度は目の前に、あの違和感が有る。

 聞くべきか、聞かざるべきべきか。そんな事を悩みながらも、一月が過ぎ、二月が過ぎ、あっという間に、一年が経過していた。

 その間、何もしていなかった訳では無い。

 休み時間を使い、あの違和感の有る男子生徒を、そっと屋上から観察したり、スマホで撮影したり、学校終わりには、後を尾行し、家を突き止めようともした。

 それらが全て、失敗しただけ。

 屋上に居たら先生に見つかり、長々と説教を受けて、違和感をスマホで撮影したのに、画像や動画がブレブレで見えず、何度尾行しても、突然消えたかの様に、居なくなる。

 二年の始業式を終え、2ーCに向かうと、一年の時と、クラスメイトは変わっておらず、慣れ親しんだ定位置へと、ゆっくり向かう。

 そしてまた、ボーッと扉を眺める。

 もう少ししたら、あの違和感の有る男子生徒が、扉を開けて来るだろう、ちょっとした予感。

 ガラガラっと扉が開き、"違和感の増した"男子生徒が、ゆっくりと入って来た。

 私は直ぐに、目線を落とす。

 この一年間、まともに顔を見た事が無い。

 足音がゆっくりと、近付いて来た。


「宜しく」


(今度こそは、返事をするんだっ!)


 そう思って前を向くが、一年前と同じ様に、違和感の増した男子生徒の後頭部だけが、こっちを向いていた。

 

(うぅっ、気になるよぉーっ)


 誰もその違和感に、気付かない。

 気付いているのは、私だけ。

 そしていつもの様に、学校が終わると、こっそりと後を付け、また居なくなる、筈だった。

 その日だけは、いつもと違った。何故なら、違和感の増した男子生徒が、車に轢かれそうな子供を助けて、そのまま車にぶつかり、飛んで行ったからだ。


(えっ……えええ────っ!?)


 それは見事に、飛んで行った。

 まるで、違和感の増した男子生徒が、体重など無いかの様に、ポーンとビルを越えて、飛んで行ったのだ。


(助けなきゃっ!?)


 私は全力で"道路を飛び越え"、違和感の増した男子生徒が落ちたであろう、ビルの隙間へと突撃して────見てしまった。


(あっ……開いてる)


 地面には、まるで衣服を脱いだあとの様に、ペラペラの男子生徒が横たわり、その側には、一体の軟体生物が、"紫色の血"を流しながら、座っていた。


(えっと……えっ?)


「見られたか……」


(あれっ、その声……っ、まさかっ!?)

 

「鬼乃目さんだよね?」


 私がずっと、抱いていた違和感。

 男子生徒の後頭部に、ずっと見えていた、誰も何も言わない、"大きなチャック"の存在。その中身が、目の前に居る、軟体生物。


(名前知られてるっ!?)


「認識阻害が通じ無いなんて、何者なんだい?」


(認識阻害って、何それ!?)


「まあ良いや。出来ればこの事を、黙っていてくれるかな? 僕にとってこの星は、とても居心地が良いんだ」


 何と言えば良いのか、この数秒の出来事が、頭の中をぐるぐると掻き回し、冷静になる為に、コンクリートの壁へ、頭を打ち付けた。

 ゴズンッと壁に"角"が突き刺さり、コンクリートが剥がれるのを見て、無意味である事を悟り、ゆっくりと男子生徒を見る。


「今の……何? えっ、壁が……」


(軟体生物に、ドン引きされてるよぉぉぉっ)


「鬼乃目さん。君は……人間なのかい?」


(違います、立派な"鬼"です。もっと言えば、人喰い鬼です。何て言えないよぉぉぉっ!!)


 人間なんて、食べた事無いですけど。

 寧ろ食べるよりも、友達として、仲良く出来たら良いなぁって思ったから、こうして姿を偽って、学校に入学したんです。


「その角……まさか、妖怪? 凄いな……妖怪って、実在したんだ」


(その感想は可笑しいっ! 貴方はどうみたって、地球外生命体なのにっ!)


「ふぅ……ようやく傷が治ったよ」


 軟体生物が、ニュルンっと男子生徒の皮に入り、ゆっくりとチャックを閉めて、こっちに顔を向けて来た。


「鬼乃目さん。今日の事はお互いに、見なかった事にしよう。その方が、お互いの為だしね」


(それはっ……そうだけど……)


「それじゃあ鬼乃目さん。また明日」


 違和感の増した男子生徒がそう言うと、直ぐに姿が見えなくなり、私はそれを見て、ふと、思った事があった。


(宇宙人って、本当に居たんだなぁ)


 お互いに、秘密を共有した二人。

 宇宙人と、人喰い鬼。

 この出来事以降、互いが互いを意識し合い、恋と成る。かどうかは、まだ分からない。


(そう言えば……名前、知らないなぁ……)




 はいはいどうもーっ! かみのみさきです。

 気分転換に、思い付いた恋愛モノを、書いてみましたが、如何でしたでしょうか?

 恋愛? 恋愛なのか? 始まる前ですね。

 現実に、後頭部にチャックが付いてたら、間違い無く摘んで下にジィィィっと下ろして、中身を確認するわ。

 人喰い鬼と、宇宙人の、ラブストーリーw

 しかも学園モノです。

 読んで『なんじゃこりゃ?』と思っていただけたら、書いた甲斐が有ると言うモノです。

 評価等々頂けましたら、今後の作品作りに、モチベアゲールですので、気が向いたらお願い致します。

 ではでは短いですが、またの作品でーっ!



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