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お父さんへ

作者: 有未

 幸せだった?


 耐え切れず生まれた言葉でした。


 病室で話した言葉に嘘はなく、私は本当にお父さんが退院したら一緒に暮らすつもりで楽しみにしていました。転院した時の手紙にも書いたように、治ると信じていたし、転院先が癌の末期治療の為の場所だと知った時も、同じ思いでした。


 あれから私は引っ越しをしました。偶然だけれど、お父さんの住んでいた家の近くに、今、私は住んでいます。目の前に線路が見えます。小さい時、会社から帰って来るお父さんを駅まで迎えに行ったことを、ここに来て何度も思い出しています。夕暮れ時、電車が走って行くのを見ると、その電車の行き着く先にお父さんが待っているような気がして、焼き切れるような切なさと共にその電車を見てしまいます。


 お父さんと一緒に暮らしたかったな。私は料理がうまくなったと思うので、二人で食べたかったなとか、パソコンを使って描いてくれた絵をもう一度、見せてほしかったなとか、小さい頃からの思い出を話したかったなとか。こういう思いをどこに持って行けば良いのか分からなくて、私は迷子になります。


 家の前を行く線路の先にあるはずの、お父さんが住んでいた家に行けば、遊びに行った日と同じように出迎えてくれる気がして仕方ありません。こういうことは、お墓の前で言うべきなのかもしれないけれど、私はまだ、一度もお墓参りに行っていません。その石の下で眠っているという事実を見る決意が、長い時間が経った今でも、どうしても出来ないのです。お墓にお花はあるのだろうかとか、気になっています。もうお墓参りに行く心を持たなくてはいけないのかもしれないとも思っています。


 私は、お父さんと暮らすことが出来たらきっと幸せでした。それはもう夢でしかなくなってしまったけれど。お父さんは幸せでしたか? 私はどうしても、それが知りたい。もしも、お父さんが幸せで、その中に、私と過ごした時間が少しでも入っていたら。私はもう、本当に幸せです。私のお父さんでいてくれて、ありがとう。

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