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再び目を覚すと、カミラーは最初とは違う廃墟に成り果てた周辺の異様な光景に気づいた。先程まであった高層ビルが立ち並ぶ現代都市の姿は見当たらなくなり、同じ場所なのかと思えるぐらい惨めな荒野が目に入るだけだった。


いくら周囲に目を配っても、目の前の光景が変わることはなかった。最初は夢でも見ているのかと思ったが、しっかり感覚器官が働いているのを見ると、どうやら、これは夢ではないようだった。



「......」


とにかく何がどうなったのかは後にして、カミラーは頭が絞り出される苦痛に耐えながら、ゆっくりと地面から立ち上がった。そして、今のこの破局を作り出した原因を究明するために、動き出すことにした。


しばらくすると、周辺の偵察を続けていたカミラーは、遠くから先程の巨大な宇宙船と、その向こう側に小さな人の群れが集まっているのを発見した。よく見ると、それは人というよりかはロボットに近い姿をしていた。おそらく、AIヒューマノイドなのだろう。


その宇宙船の中で自分が作り出した結果物を鑑賞していた彼は、何もない地面に再び現れたAIヒューマノイドたちを見つけると、目を細目ながら言った。


「しつこいやつらだな。あれほどの威力で都市をまるごと吹き飛ばしてあげたというのに、まだ相手する気になるのか...」


彼は舌打ちをした。面倒臭いと思うのが表情から滲み出ていた。


「あれは...」


だが、画面越しでAIヒューマノイドたちの戦場の配置が変わるのを見ていた彼は、やがて彼らの動きを観察している中で、何かに気づいたらしく妙な表情を浮かべ始めた。


それから空高く停止していた宇宙船は、いきなり高度を下げて地面に向かい始めると、しばらくして静かに地面に着地した。


宇宙船の中から数人の宇宙人が外へ出ると、2メートルは遥かに越える宇宙船の持ち主は、向こうにいる彼を見て、喜びが混ざった眼差しで同じところをじっと見つめた。


向こうもそれに気づいたらしく、彼よりも先に口を開いた。


「久しぶりだね。兄貴」


予想通りの答えに彼は満足したのか、先程まで戦争をしていたのはすっかり忘れて、力の入った声で言葉を返した。


「よぉ、これは久しぶりね。こうやって再び会うのは何年ぶりかな、アモス」


「ヴァルス...」


お互い何キロメートルも離れていたが、目には見えない妙な気の張り合いが行われているようだった。


先程とは違うオーラが周辺を覆い尽くした。仲良しの雰囲気が変わるのは一瞬のことだった。


「......」


「......」


ヴァルスは建前のことを言うのはもうやめることにして、改めて息を整えると口を開いた。


「で、アモス。お前は何でそこにいるのだ?」


その一言だけで、一瞬で戦場には静けさが訪れた。誰も動こうとせず、風の音が彼らの余白を通りすぎた。


アモスは暫くして、その静けさを破るようにゆっくりと言葉を発した。


「それは、兄貴の口出しの範囲ではないはず」


「......」


予想外の言葉に、ヴァルスはかなり衝撃を受けたようだった。自分の弟からこのような言葉を言われるとは夢でも思っていなかったのだろう。本来なら直ぐにでも命懸けの戦いを申し込みたい気分だったが、それはひとまず控えて慎重に状況を見守ることにした。暴力はあくまで最後の手札だったから。


ヴァルスは引き続き会話を続けた。


「まぁ、いきなりどっかに消えたのかと思いきや、今まで地球に潜り込んでいたとはな...」


「......」


兄にそう言われてアモスはしばらく黙り込んだ。彼の言葉には、なぜそのようなことをしたのか疑問に思う意味が込められているようだった。しかし、アモスは相変わらず口を閉じて黙ることにした。言ったところで、自分には何の得もないからだ。


「......」


長い時間が経っても何も言わずにいると、ヴァルスは彼に話す気がないと悟ったのか、軽いため息を一つついてから言った。


「結構心配してたんだぞ...いつの日から急に消え出して、どこで何をしてるのか散々探してたんだから」


「.......」


「うん....いつ頃のことだろう...あの日からだったか...確か...王選の儀式が始まってた頃だね...思い返すと君と余、二人だけが候補者に選ばれた中で、余が君を差し置いて王になったが、その後申し訳なくなって慰めにいってみると、君はその日から完全に姿を消したんだよね...」


「......」


「君があの時何を感じ、どんな感情を抱いていたのかは自分には分からんが、きっと辛い思いをしていたはず...王になれなかった自分に対してかもしれないし、王の席を奪った余への恨みだったかもしれない...そこは余も悪いと思うが...まぁ、何にせよ、こうして無事会えたのはとても嬉しいことだ」


「......」


「ただ言ってみたかっただけだ。気にしなくていい」


「......」


ヴァルスはその後、気まずくならないよう手を横に振って何でもないような身振りを見せた。実は、これは彼から話を聞き出すためのものだった。


だが、少しは答えてくれると期待していた彼からそれでも返事がないと、兄であるヴァルスはもううんざりしたのか、何もかも諦めた顔で頭を横に振りながら言った。


「まぁ、いいか。どうやら君には話し合う気が全くなようだ...これは自分の独り言だったことにしよう」


「.......」


アモスは、そんな彼の姿を遠くから眺めていた。最初から最後まで全部見ていた。なぜか、心の奥から暑い何かが込み上げてくるような気がしたが、無意識的にその感情を押さえ込んだ。その代わり、拳にその圧力を分散させた。手が張り裂けそうになった。


「じゃ話題を変えて、そこに立っているということは、今からこの余に立ち向かうつもりであると理解してもいいかな?」


ヴァルスは、もうそろそろこの無駄な会話に終止符を打ちたいのか、向こうにいる弟にそう言った。


「その通り」


アモスは彼の言葉に短く答えた。これは、今の状況に対する彼の意思が込められていた。


「今だけ機会を与えよう。これ以上抵抗しなければ命だけは勘弁してやる」


「......」


「今でも遅くない。許しを請って降参すれば、その生意気で愚かな判断は、この余の広い心をもってなかったことにするよ」


ヴァルスが真面目な顔で最後に提案すると、アモスは最初から許しを乞うなんて選択肢の中になかったのか、迷うことなく答えた。


「お断りする」


彼の躊躇のない答えに、ヴァルスの両目はしばらく大きくなったが、やがて口元に染みる細やかな笑みとともに落ち着きを取り戻していった。


「なるほど、そうか。分かった。君のその意志よく承ったよ。幸運を祈る」


振り向いて宇宙船に戻りながら、ヴァルスは後ろにチラッと目をやり、小さく言った。


「アモス」


彼が残す最後の言葉には色んな意味が込められているようだった。アモスは遠のいていく彼の後ろ姿を見つめているだけだった。


再び宇宙船の指定席へ戻ると、ヴァルスは身を軽くほぐしながら、目の前の透明スクリーンに目を固定し、口を開いた。


「これは面白い。兄弟同士の戦い。いつかはこの日が来ると思っていたが、それが今日だったとはなぁ...見せてやるこの余の本気を」


ヴァルスはその後、全身に流れ込む興奮とともに、狂喜に満ちた表情を浮かべた。そして真っ直ぐに腕を伸ばすと、指を前に突き出しながら言った。


「全軍!進め!」


---


カミラーは地球上最大の戦争が始まろうとするその瞬間を、その場で見守っていた。武装を済ませた宇宙船は向かい側のAIヒューマノイド軍隊に向かってだんだんと進んでいる。その様子は、まるで小さな虫を殺しにいく一人の人間のようだった。


その一方、AIヒューマノイド側(人間側)も攻撃に備えて、それなりの準備をしていた。無論、彼らの行動が実際に戦争の役に立つかどうかは別だったが、彼らは彼らなりで必死になって対策を練っていた。


カミラーは戦争一触即発の状況の中で、どうすればいいか迷い始めた。まず、戦争の準備をする前に、そもそも自分が何者なのかについてすら、正しく分かっていなかった。いきなり戦争が起ころうとして自分のことについてじっくり考える時間がなかったこともあるが、それより、全ての真実に気づいてしまった今だと、自分というのが何なのか少しも分からなくなって人生の目標が狂ってしまったのが、一番大きな理由だった。


何かをしなければならないことは頭では分かっていたが、それが何故自分と関係があるのか、また、そんなことをしても実際に意味があるのかなど、頭の中には疑問だけが浮かぶだけだった。自分が宇宙人によって開発された生物兵器であれば、もし、自分がそれに気づいたのであれば、もうこれ以上本能のまま生きなくてもいいのではないか、というのが彼女の頭を詰め込んだ考えだった。


カミラーは暫くその場で立ち止まって自分なりに深く考えていたが、二つの大きな勢力の距離が近づく中で、これ以上時間を無駄にできず早く決断を下さなければならないと気づいたのか、思わず拳に力を入れた。これは心を決めたというサインだった。


心の準備が済むと、カミラーはあるところに向かって動き始めた。既に答えは出ていた。今まで色んな言い訳をして自分を誤魔化していただけ。


「......」


彼女は昔の自分の仇を討つために、戦場に潜り込むことにした。



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