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遠い彼方。


果てしない虚空の中で、ある三角錐状のものが浮かんでいた。


一見冷たい鉱石のように見えるその物体の中には、人とは異なる外見を持つ存在たちが過ごしていた。彼らの頭はカマキリに近く、胴部は細長い形をしていた。


そこの中枢と思われる広い空間では、深刻な表情をした彼らが集まって、大きな透明スクリーンを目の前に浮遊船の舵を操っていた。


そこで、空間の真ん中に座っていた一番体格が大きく、一目で違うオーラを解き放つ存在が隣にいる下僕に目を向けると、このように聞いた。


「あの件は一体どうなった?」


すると、下僕は圧倒されるような雰囲気に飲み込まれつつ、慎重に答えた。


「あのプロジェクトですが...今のところ、特に進展はないようです」


彼が言うと、その大きい存在は予想外の言葉に驚いたらしく、納得がいかない顔で拳に力を入れた。移動手段である浮遊船全体が少し揺れるくらいだった。


「は?何だと。あれからけっこう長い時間が過ぎたと思うが、まだだと言うのか」


「はい...」


彼は申し訳なさそうに頭を下げ、しばらく沈黙を維持した。これは生き残るための本能的な行為だった。


しばらくして、少し落ち着いたと思い、下僕である彼は再び口を開いた。


「実は確認してみると、遥か前から対象とは連絡が取れなくなっていたらしいです。少なくとも、私たちの操作の範囲からいつの間にか外されていたと...」


「は?そんなバカみたいなことが起こり得るのか?」


自分の王なるものが怒り気味で質問すると、下僕は恐る恐る答えた。


「はい...」


「その原因は何だ。何か心当たりはあるのか?」


「心当たりはありませんが、今の現状から察するに、おそらく何らかによって制御システムが破壊され、コントロールが効かなくなったと思われます」


「......」


「これは自分の個人的な考えですが、環境の変化によって自ら知性を取り戻し、制御システムから脱却したのではないかと...」


「......」


話を聞いて、王の彼は唸り声を出しながら深刻な表情を浮かべた。自分の中でじっくりとその言葉を吟味しているようだった。


しばらくして判断がついたらしく、彼は頭から伸びている触覚を震わせながら空間全体に目を向けると、そこにいる皆に伝えた。


「諸君たちよ。余の言うことをよく聞くがいい」


中央から響く声に、下で浮遊船の運転を管轄していた彼らは直ちに統率者である彼に注目した。


彼はその様子をゆっくりと見守りながら、話を続けた。


「今から諸君たちに命令する」


「......」


「軌道を修正しろ。これより戦争を行う」


彼の言葉に、そこにいる皆は衝撃を受けたらしく、一瞬ためらう様子を見せ、ざわざわと騒ぎ始めた。


それにもかかわらず、一任者である彼は演説を進めた。


「私たちの偉大なる計画はイレギュラーによって灰のチリへと変わった。今は、もはや自分の手足で動くしかない」


「.......」


「戦力を集め、体制を整え、戦場へ出ていく準備をしろ」


「......」


彼の言葉に耳を傾けていた彼らは、しばらく混乱しているように見えたが、やがて沈黙を破り、歓声を上げ、同調し始めた。


「自らの手で地球を奪い取ろうじゃないか」


彼の最後の言葉は、彼らの戦意を燃やし尽くすのに十分だった。彼を称える歓声だけがその場で響き渡った。


---


これは、約200年前のことだった。


宇宙人である彼らは2010年頃。宇宙を旅している中で、偶然にも地球という惑星を発見し、この惑星をどう扱うかについて議論し始めた。地球は多くの惑星の中で美しい外見と大量の水を所有しているだけでなく、あらゆる自然と多様な生態系まで持っていた。そのような特徴は宇宙人である彼らの心を奪うのには十分だった。長い旅をしている彼らには、地球という新しい場所がどれだけ大きな価値を持っているのか十分理解していた。


だが、そのような地球を観察していく中で、彼らは一つだけ引っ掛かることがあることに気づいた。それは地球には既に大きな文明が存在しており、その文明は彼らには匹敵しないものの、新しい居住地にするためには、その住民たちをある程度駆除しなければならないということだった。


さらに、彼らの気を触ったのは、その住民(人間)たちが文明を発展していく中で、原子炉や爆弾、環境汚染など、地球という美しい環境に大きなヒビを入れていることだった。それは、もともと地球が持っていた調和の総合体を壊すものであり、それは彼らの怒りを買った。


そこで彼らはどうすれば地球を占領できるかについて考え始めた。最初は戦争、つまり武力で奪い取ることを考えていたが、今の人類は70億を越える人口と、銃や核兵器などの軍事力を持っており、それに比べて彼らが現在引き出せる戦力は僅か120人しかなかった。無論、このまま戦争を起こしても数千万人は簡単に倒せるはずだったが、非効率であることと環境汚染の恐れの理由から、彼らは戦争で地球を略奪するのは諦めていた。


そんな中、方法に悩んでいた彼らは、やがて戦争をしなくても地球を占領できる良いアイデアを思い浮かべた。彼らが思いついたその方法とは、一人の人間を地球から連れ出し、彼らが持っている技術力を用いてその人間を「生物兵器」として改造することだった。


そうすれば比較的少ないダメージで目的を果たせるだけでなく、そこにいる生物を利用することからコスト的にも有利だった。(わざわざ自分たちで動く必要もなかった)


彼らはそのようなアイデアを思いついた後、直ちに行動に移した。人間たちの緻密な監視網に感知されないような飛行モードを使って、密かに地球の大気圏に侵入し、四方が海に囲まれているある島国に向かって移動し始めた。


そこで、彼らは夜道を歩いていた一人の若い女性を見つけると、そのまま何音もなく宇宙船の中に入れ込み、再び地球の外へと移動した。


研究対象を生保した後、初めて人間を目の前にした彼らは興奮せざるを得なかった。まず、自分達とは違う知的生命体を見たというのと、これから人間を使って新しい生物を創造するというのが、その原因だった。


彼女を気絶させ、実験室に移り、実際に生物兵器を作るための過程に入ってみると、彼らは人間という生き物の神秘さに驚かざるを得なかった。人間は自分達とは違って、外見を変化させることも、強い筋力も、安定した生物的反応も、何の能力も持っていなかったのだ。ただ人間が持っていることとすれば、それは生殖するための大きな犠牲と、いつ死ぬか分からない生物としての不安定さだった。人間は、一見完璧のように見えたが、その中身をちゃんと見てみると、体の一部が少しでも損傷を受ければそのまま死ぬぐらい弱い生き物だった。


なぜ、このような非効率的な生き物がここまで成長でき、地球の支配者になったのかは疑問に思えるぐらいだったが、彼らはそのような人間の短所は全部排除して、人間を殺戮するための新しい人間を製造していった。


それから数日も経たず、彼らは彼女を生物兵器として置き換えることに成功していた。生物兵器となった彼女は、彼らの間でプロジェクト-X001と呼ばれ、最初とは全く違う外見の生物に生まれ変わっていた。


特に彼女の顔は、東アジア系のものからヨーロッパのものに変わり、その理由とは、生物兵器として第二の人生を歩む彼女が、再び自分の本当のルーツを思い出さないようにするためだった。一応人間の体を使っているため、ふと昔の記憶を思い出す恐れがあったのだ。(人の記憶は体全身が覚えているとされていたため)


さらに、彼女はテレポート能力や自動回復能力、人間の約300倍を越える能力などを持ち、人間を抹殺するための大きな斧を彼らから一つ授かっていた。その斧は彼女と同じ物質で作られながら、同時に違う個体であり、彼女のパーフォーマンスを上げるための様々な能力が備わっていた。もちろん、これらは全部人を殺すためのものだった。


そんな彼女は、そのまま記憶を完全に消され、彼らによって静かに地球に運ばれた。それからの彼女の人生はとても単純だった。


大陸を横断しながら、本能の赴くまま多くの人を殺し、証拠を隠滅していった。それを数年間も繰り返し、彼女は気づけば地球にいる人間を数万人も殺していた。


当然ながら、彼女の犯行を当時の技術力と捜査力で明らかにすることは至難の技だった。最近原因不明の失踪者数が増えたぐらいで、それ以上のことを知ることはできなかった。彼女は彼らの望み通り、地球征服のための任務を遂行していったのだ。


だが、平坦に終わりそうだった彼らの計画にも亀裂が入り始めた。数年間も生活を続けていく中で、彼女の知能も同時に成長していき、やがて彼女は自分が意味のないことをしていることに気づいた。


最初は何となく気の向くまま人を殺していったものの、それを繰り返していく中で彼女は少しずつ虚無感というものを感じ始めた。その感情は、時間が経つにつれて益々大きくなっていき、ついに彼女の心の殆どを侵食じた瞬間、彼女は自分にもよく分からない衝動に駆られて、そのままどこかに走り出していった。


彼女は逃げて、逃げて、逃げていった。自分の中にある感情から逃げるために必死に逃げた。初めてであり、どうしても消えないこの虚無感が、彼女はとても怖かった。いくら逃げても、尽力しても良くなることはなかった。


逃げて逃げて力尽きて意識を失った瞬間、彼女は何かが間違っていることに気づいた。しかし、その時はもう遅かった。体はまるで電源が切れたかのように硬直し、動かなかった。


これは斧の力のお陰だった。彼女が成長するにつれ斧も成長していき、斧はこれ以上創造主である彼らからの指示を受けなくなっていた。それをそのまま彼女も影響を受け、また新たな独立した存在として進化したのだった。


そして、気づけば彼女は最初の場所である「日本」に戻っていた。



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