16
頭がジーンとした。呼吸をするのが難しく、視野が左右に揺れ続けた。耳からはピーという音が聞こえ、それ以外の音は全く入ってこなかった。まるで、自分だけがこの世の中に取り残されたかのような、そんな感覚だった。
立ち上がろうとしたが、体が言うことを全く聞いてくれなかった。そもそも、なぜこうなったのかさえ、彼女はちゃんと覚えていなかった。
今まで何があったのか思い出すことができなかった。きっと何かがあったはずだが、体は鉛のように重く、頭が少しも回らなかった。
しばらくして、下を向いてた頭をゆっくりと上げると、目の前に人の両足が近づいてくるのが見えた。ぼやけていたせいで、何がどうなっていたのかはよく分からなかったが、確かなのは、今こうしてじっとしている場合ではないということだった。本能がそう告げていた。このままだと死ぬと。動けと。
彼女はその瞬間、まるで何もなかったかのように、地面から素早く立ち上がった。そして、目で追えない速度で近づいてくる存在から距離を取り、自ずと警戒の体勢に切り替えた。
「......」
その時だった。やっと気を取り戻して周辺に目を配ってみると、多くの人によって完全に取り囲まれていることに気づいた。人たちの視線は全部中央にいる彼女自身に向けられており、その目は、まるで異端者を見るような目だった。カミラーはその時、体の奥から何かが込み上がってくるのを感じた。おそらく、怒りだったのかもしれない。自分にも分からなかった。なぜ、このような感覚を受けるのか。長い間を生きてもまだ分からなかった。ただ、多くの人に見られているこの状況がとても不愉快で、今の感情を押さえるのが難しかった。彼女は、しばらく地面に視線を置き、今にも気が狂いそうな自分を宥めるために必死になった。
「何者だ。今すぐ降参して両手を挙げろ。でなければ、武力で鎮圧する」
前の方から声が聞こえた。AIヒューマノイドは、真ん中にいる正体不明の人物に声をかけ、銃を向けた。同時に、隣にいたAIヒューマノイドたちも姿勢を整え、同じ体勢になった。その中からリーダーは、まだ銃は打つなという合図を送り、人々の注目を浴びている彼女に向かってゆっくりと言った。
「目的は何だ。どうして、まだ生きている。抵抗しなければ、命だけは助けてやる」
「......」
しかし、カミラーには何も聞こえていなかった。内なる声を遮るだけで、十分しんどい状況だったのだ。時間が経つにつれ、ますます意識が遠退き、何かがはずれていくような気がした。AIヒューマノイドのリーダーは、言い返さない彼女を不審に思い、話を続けた。
「今の君は完全に包囲された。余計なことは考えるな。これは最後の警告だ。今すぐ両手を上げて降参したことを示せ」
「......」
「もう一度言う。抵抗はせず、降参しろ。この後はもうない。3秒を数えても何も変わらなければ、武力で対応する」
「......」
カミラーは、頭を下に垂らしたまま沈黙を維持し続けた。その時、彼女はなぜ自分がこの状況に陥ってしまったのか、その経緯について思い出すことになった。考えてみれば、その原因は全部AIヒューマノイドのせいだった。頭に銃を打たれ、高層ビルから落ちる場面が脳裏をよぎったのだ。その背景には、AIヒューマノイドがいた。瞳に焼き付くされたAIヒューマノイドの残像はまだ鮮明に残っており、決して忘れることはできなかった。
「3...」
「......」
AIヒューマノイドは、彼女に向かってカウントし始めた。周辺にいた人たちは、緊張が解けない顔でその様子を見守っており、当事者のカミラーは何も変わっていなかった。
「2...」
「......」
「1....」
「......」
カウントが終わる直前、そろそろ限界に達した彼女は、もはや違う存在へと変貌したらしく、小さな声で呟いた。
「うるさい...」
彼女はそのあと口角をあげて微かな笑みを浮かべると、その瞬間、目を瞑る短い間に、その場で見当たらなくなっていた。
「なんだと...」
現実的に説明できない状況に、AIヒューマノイドのリーダーは驚きと戸惑いを隠せなかった。AIヒューマノイドたちは、直ちに周囲を見渡し、消し去った彼女を探し始めた。
しかし、AIヒューマノイドたちの目が止まったのは、すぐ近くのところだった。そこには、AIヒューマニイドの胸部が彼女の手によって完全に貫かれ、機能を停止したあとだった。
リーダーは、落ちづいた態度を維持しながらも、素早く近くのAIヒューマノイドたちに命令した。
「銃の使用は禁止する。近接武器だけを使って目標を制圧しろ」
残りのAIヒューマノイドは、命令に従い、背中から専用武器を取り出して彼女に突撃し始めた。だが、自分に近づいてくるAIヒューマノイドを眺める彼女の目は、先ほどとは違っていた。生物とは言いにくいほど目は赤く充血しており、焦点は合っていなかった。もはや彼女は理性や知性などは切り捨てて、怒りと殺戮の念だけが取り残された化け物になっていた。
狂い果てたカミラーは、AIヒューマノイドを排除すべき存在として認識し、一人の首もとを掴んで、そのまま地面に叩きつけた。次に、もう一人のAIヒューマノイドに即座に近づき、頭を殴り付けて粉砕した。破片が地面に散らばっていった。
近くにいた人たちは、いきなりの攻撃に悲鳴を上げながらその場から逃げ始めた。先ほどの状況とは真逆に、優勢だったAIヒューマノイドがいつの間にか叩かれる立場になっていた。
カミラーは続けて、AIヒューマノイドを無慈悲に攻撃し続けた。人の目では追えないぐらいのスピードで一人ずつ相手し、倒していった。AIヒューマノイドたちは予想外の事態に、まともに対応することができず、陳を崩して彼女のエサになっていった。今の彼女には全ての動きが遅く見えた。自分だけが違う空間にいる気分。頭が少し熱くて、吐き気がしそうなのを除けば、悪くはなかった。
一方、AIヒューマノイドのリーダーは、そこから少し遠く離れて自分と同じモデルのAIヒューマノイドたちが、次々と倒れていくのをただ眺めているだけだった。現場で起きている情報を全部集めて分析はしているものの、全くあの化け物を倒す術が見つからなかった。下に見えるパラメーターは勝率0パーセントを示していた。それは、ここにいるAIヒューマノイドたちは全員全滅することを意味した。彼は思わず、うーんと唸り声を出した。
リーダーがにチームの生存について考えている間、最後に残っていたAIヒューマノイドが倒れ、瞬く間にその化け物はリーダーのすぐ前まで来ていた。そして、対応する暇もなくパンチを受けて後ろに吹き飛ばされた。ビルの壁が酷く抉られた。
「......」
コンクリートの埃が周辺を覆い尽くす中で、機体はかなりの損傷を受けていた。システムは、今すぐ修復が必要であることを示していた。あの一撃でここまでとはと、リーダーはしばらく建物の破片の中に埋もれていながら、感心の声を上げた。リーダーは、そこからゆっくりと立ち上がると、武装してから再び外へ足を踏み出した。
外に出ると、その化け物はリーダーを待っていたらしく、すぐに現れては攻撃し始めた。最初は何とか攻撃を防げたものの、パターンを全部覚える前に防御が崩れ始めた。全く動きを予測することができなかった。動きを追うことはできたが、その後の動きがどうなるかは分からなかった。リーダーは自分が既に戦いで負けたのも知らず、戦いを続けていった。気づいてみれば、彼はいつの間にか跪いていた。体はボロボロになっており、立ち上がることすらできなくなっていた。相手は確か素手だったのに、どうして負けてしまったのかその理由が分からなかった。武器を持っていたにもかかわらず、相手にすらなっていなかった。そもそも、これを戦いと言うべきかも疑問だった。
「......」
リーダーは、ほぼ戦闘不能の状態で路上に倒れたまま、あの化け物の正体が気になっていた。正直に言えば、彼はこの世の中に生まれて以来、自分が一番強い存在だと思っていた。実際、この地球の中に、自分に物理的に勝てるような存在はいないからだ。しかし、生物でも、機械でもない何かによって、いつの間にか完全に打ちのめされていた。まるで、災難が具現化したようなものだった。数百年をかけても絶対に乗り越えない壁があった。
リーダーは完全に起動を停止する前に、残りのエネルギーを使って今までの情報を全部集め、増員を求めるシグナルとともに、それをどこかに送り始めた。これは、人類と地球を守るためだった。あの化け物は危険すぎた。まず、今の人類の技術で、あの化け物に歯止めをかけられるものがあるかどうかは不明だったが、これが少しでもその役に立てるのであれば、それで十分だった。
リーダーの胸の辺りはしばらく弱く点滅し、やがて起動を停止した。
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「神谷さん、速報です!」
いきなりドアをパタンと開けて入ってきた彼女に、神谷 陽斗は眉間にシワを寄せながらも、読んでいた資料を置いて落ち着いた声で言った。
「何?」
「彼女が捕まったそうです!」
「.....?」
言葉を聞いた後、神谷 陽斗は、しばらくじっとして黙り込んでいた。今までずっと頭の中を巡っていたことが現実になり、自然と言葉が口から出てこなかった。同時に安心もした。命が危険な状況に置かれているのではないかと考えていたが、無事だったのは何よりだった。
「どこで発見されたんだ?彼女だけ見つかったのか?」
彼が少し興奮した声で聞くと、彼女は相変わらずのまま答えた。
「場所は中央アフリカのある国だそうです。今のところ見つかったのは、彼女だけですね」
「中央アフリカ?それは本当か?」
信じられなかった。日本でもなく別の大陸で発見されるとは完全に予想外だった。
「はい、本当だそうですよ。只今、護送中なので、あと数時間で日本に着くかもしれないですね」
神谷 陽斗は、その後しばらく考え込み、受け取った情報を整理し始めた。現時点で彼女が誘拐されてから約5時間が経っていた。にもかかわらず、彼女が発見された場所は、ここから約10000km離れた中央アフリカだった。現実的に考えて、飛行機に乗っても最短10時間はかかる。しかし、たったの数時間で大陸を横断し、そこで発見された。そもそも、飛行機に乗る手は不可能だった。搭乗口に入って飛行機に乗ろうとしても、その前にそこの職員たちによって絶対に引っ掛かってしまうからだ。ということは、別の移動手段を使ったということになるが、車や船も結果は同様だった。となれば、考えられる線はひとつしかなかった。
「あの化け物か...」
神谷 陽斗は自分にしか聞こえないぐらい小さな声で呟いた。そう、一瞬で大陸を移動できると考えられるのは、あの化け物しかなかった。もし、そのように考えた場合、今までの連続殺人事件の筋道が通り、謎が解けた。全国で発生した殺人事件。そして、異常なほど動きが早く、監視カメラなどに全く観察されない犯人。それらを一括りして説明できるのは、欠けた文章の中に「どこにでも一瞬で飛んでいける能力」を入れば完璧になるはずだった。
神谷 陽斗は一人静に微かな笑みを浮かべた。これは今まで謎に包まれていたものが、明るみになって真相にもう一歩近づけたという喜びだった。実際に会ったこともなく、会話を交わしたこともなかったが、頭の中で描いている幻想の何かにもう少し近づけたというのは、彼に大きな喜びを与えた。
彼女は、しばらく黙って何も話さない彼のことを不思議に思ったらしく、首を傾けて再び声をかけた。
「えっと、神谷さん急にどうしたんですか?」
すると、彼は何でもないというように手を横に振って答えた。
「いや、何でもない。ちょっと何かについて考えていただけ」
「え、そうなんですか。今日何か変ですね」
「......」
神谷 陽斗はしばらく黙り込んだ。他人に変に映っていたのが少し恥ずかしい気分だった。彼は、その反動として襟元を正した。
「いつもだろ」
「まぁ、それはそうですけど...」
「......」
「あと、もう一個お伝えしなければならないことがあるのですが...よろしいですか?」
「......?」
予想外の質問に、神谷 陽斗は頭の上にクエスチョンマークを浮かべた。
「何?」
「実はさっき連絡と一緒にある動画が送られてきたんですけど、向こうの刑事からのものらしいです。メモには日本の刑事さんが絶対に見てほしいと書いてありますね。この動画があなたの仕事に役に立つかもしれないというのが、その理由だそうです」
「.....?」
神谷 陽斗はしばらく自分の耳を疑い、呆然とした顔になった。その動画というのが一体何なのか全く見当がつかなかった。
「...私にも見せてくれる...?」
彼が言うと、彼女はタブレットを開いて操作し始めた。少しして、その画面を彼に見せると小さく言った。
「これなんですけど...」
神谷 陽斗は、それと同時にタブレットの画面に目を凝らした。見ている間、彼女はタブレットを彼に手渡しし、もうこれ以上の用件はないらしく、後ろを向いて静かに部屋を出た。それから約3分後、部屋の中で一人になった彼は、信じられないという顔でタブレットの画面を見つめていた。
「これは...」
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「彼女が殺人事件を隠していたんです」
神谷 陽斗は、部屋の中にいる烏丸 健司に自分の意見を述べた。烏丸 健司は納得がいかないらしく、両手を上げてよく分からんという風に言った。
「つまり、君の言うことをまとめると、被疑者の美口 凛は犯人が殺人をしたことを既に知っていて、その事実を俺たちに隠した。そして、その理由というのは、おそらく自分が被る被害を避けるためであって、その犯人が超能力を持つ化け物だからそうせざるを得なかった、というのが言いたいのか?」
「はい、そうですよ」
その後、烏丸 健司は下に向かって大きなため息をついた。そんなことを信じろうと?と無言で言っているようなものだった。
すでに予見していたことだった。こんな状況信じてもらえないのが普通だろうと、彼は考えていた。
「神谷くん、君が優秀なのは俺も知っているが、君はたまに変なことを言うんだよな。それは頭のよさから来るものなのか、それとも疲れているからなのかは俺には知らんが、多分、疲れているんだろうね。しばらくは、君の仕事は他の人に任せるから少し休んでおいた方がいいよ」
「......」
無視するような彼の言葉に、神谷 陽斗はしばらく黙り込んだ。どうやら、全く受け入れられていないようだった。思わず、拳に力を入れた。
「ただ推測のことを言ってる訳じゃないんです。今までの捜査の結果を基に言ってるんですよ」
「......」
しかし、烏丸 健司の表情は少しも変わらなかった。彼の態度は頑固だった
神谷 陽斗は、それでも諦めずに話を続けた。
「もちろん、まだ全ての資料に目を通してなくて、事件の全体像が見えていないのだと思いますが、今まで現場を見てきた私からして、これ以外の可能性はありません。信じてください」
彼の情熱的な説得に、彼の心は少し動いたように見えたが、烏丸 健司は頭を横に振り、口を開いた。
「いや、どう考えても、そんなわけないだろ。とてもいい推論だとは思うが、それは度がすぎる。化け物なんか...あり得ない」
「一回だけ信じてみてください」
彼は引き下がりそうになかった。烏丸 健司は、しつこい彼の態度に半分諦めたらしく、大きなため息をしてから言った。
「でも、なぜそうなる。普通に考えれば、彼女が犯人の手助けをしたと考える方が納得がいくだろ。もし、百歩譲って君の言う通り今回の事件が人ではなく化け物よるものだったとしても、なぜ犯人は彼女を殺さなかったんだ。あれほど事が大騒ぎになって、自分の存在を知っている彼女を殺さない理由がよく分からないんだが。下手をすれば、彼女が犯人を裏切って事件に関する大事な証拠を警察に提出するかもしれないだろ?そうじゃないのか?」
「......」
「そもそも、この世の中に化け物なんかいるわけねぇだろ」
否定するような烏丸 健司の言葉に、神谷 陽斗は頷かざるを得なかった。まさに、その通りだった。
「でも、お見せしたじゃないですか。この動画が彼女の携帯から見つかったことも、彼女が捜査に非協力的だったことも、彼女が誘拐されて以来未だ殺害されておらず、数時間で中央アフリカで発見されたことも、犯人が何の痕跡も残さず警察署の中から彼女だけを連れ去ったことも、全部です」
「......」
「これをどう説明すればいいと思いますか?これをまとめて説明できるのは、一つしかないです」
神谷 陽斗の言葉を聞いて、烏丸 健司はしばらく考え込んでいるように見えた。確かに、彼の言うことは少しも間違っていなかった。人がやったことにしては、説明できないところが多すぎた。
「確かに、君の言うことは間違っていない。しかし、だとしても犯人を化け物扱いして、適当に結論を導き出すのは良くない」
「......」
「忘れるなよ。俺たちは刑事だ。事件の真相をただの化け物によるものだと、そう簡単に決めつけるわけにはいかないんだよ」
「でも...」
「それが職業ってやつだ。君もすでに知ってたんじゃないのか?これが絶対に通らないってことを。もし、これが本当だとしても、いけないのがいけないんだよ」
烏丸 健司の言葉を聞いて、神谷 陽斗は再び現実について思い知らされた。そう、この世の中はいくら真実が目の前にあっても、それが世界の常識と合わない限り受け入れられることはない。最初からこの世の中に存在しなかったことになってしまうのだ。
彼は俯いて、空しい思いに飲み込まれた。今まで真相を明かすために頑張った自分が馬鹿馬鹿しく思えた。自分は何のためにあんなに頑張ったのだろうかと、自己否定したい気持ちになった。無力感が全身を覆った。その状態がしばらく続いた。その時だった。
遠くから足音が聞こえた。正確には廊下の方だった。足音はますます部屋の方に近づき、やがてパタンとドアが開くと共に、聞こえなくなっていた。後ろに振り向くと、若い刑事の一人が、息を切らしながら両膝に手をついていた。彼はすみませんと言いながらも、何か言いたそうだったが言葉が出てこないようだった。しばらくして落ちつくと、彼は口を開いた。
「大変です。本当に大変ですよ」
同じ言葉を何度も繰り返す彼に、烏丸 健司と神谷 陽斗は何のことかと不思議に思いながらも、その中で烏丸 健司が少し機嫌が悪そうに彼に事情を聞いた。
「ノックも無しに入ってきていきなりどうした」
「それがですね...」
彼はそう言った後、部屋の中にあった大きなテレビに目が行くと、それを指差しながら言った。
「すみませんが、今ちょっとニュースをつけてもらえますか?」
すると、烏丸 健司は言い返した。
「何でだ用件を言え」
「一旦、そうしてもらえれば分かると思いますが...お願いします」
烏丸 健司は仕方ないらしく、舌打ちをしてからテーブルの上に置いてあったリモコンに手を伸ばすと、ボタンを押してテレビの電源を入れた。
「これでいいのか」
彼は、笑みを浮かべて答えた。
「はい!」
その後は、烏丸 健司からリモコンを渡され、チャンネルを変え始めた。そして、あるニュースに落ちつくと、それを視聴した。
烏丸 健司と神谷 陽斗は、まだ何がしたいのか分からないという顔でテレビを視聴し、やがて、その顔は驚きの顔へと変貌していった。
「これは...」
ニュースでは今日アフリカで起きた出来事について話しており、その出来事とは交通事故や武力事件に関するものだった。そして、AIヒューマノイドから送られてきた内容は衝撃的だった。AIヒューマノイドが最後に残したメッセージは次の通りだった。
「人間よ。災難が形を成した。今すぐ逃げろ。そして、できる限りの知識や武器を総動員してあいつを止めろ。でなければ、人間の存続はない」
烏丸 健司はあり得ないと言わんばかりそうにしていた。神谷 陽斗も、これが犯人に関するニュースだとすぐ気付いたが、実際に目にしてはそう簡単に信じられなかった。あくまで頭の中で考えていたことであって、実際に化け物が存在していたとは心のどこかで疑っていたからだ。何より、こんなにも深刻な状況だったとは予想していなかった。




