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天文19(1550)年5月5日-その2

 20分程ゆっくり歩いて部落の入り口に着いた。矢張り警戒しているのか、人の気配はするものの、誰も外に出ていない。出発する時に見えていた煙の出処であった集落中央の焚火も消されて、ちょっとだけ燻ぶっている。とりあえず、弓とかでの攻撃はされないみたいなので、男二人はバイザーを上げて顔をさらし、前衛に出る。

「(秀明)優也、アイヌ語での呼びかけはできるか?」

「(優也)ああ、ちょっとだけ。誰かいるのか、と問いかけてみようか。・・・・(アイヌ語)おーい、誰かいないか? 出てこーい。」

優也が数回呼びかけて、しばらく待っていると、山刀と弓矢で武装した長とおぼしき年寄りと20歳位のがっしりした男2人が一番大きい家から出てきた。皆、筋肉質で強そうだが、身長は150cm無いくらいで低い。若者は年寄りの跡継ぎらしく、相貌がよく似ている。その1人の若い方が少し早口でわめいているのだが、もちろん分からない。

「*+#$%=&@・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「(優也)言葉、分からない。」

「?&*+=!!・・・・・・・」

長とおぼしき年寄りが、年長の男に向かって何か言いつけると、年長の男は長の家の2軒隣の家に早足で向かって中を覗き込み、何か言っている。その家から、和人と思しき男が出てきて長の隣に並んだ。

「某は、松前の蠣崎若狭守季廣(かきざきわかさのかみすえひろ)様の重臣である長門廣益(ながとひろます)様の家人(けにん)にして、渡会三郎(わたらいさぶろう)と申す。長門様のご意向にて、このアイヌの部族と交易を行うための繋ぎとして、ここ、モ・ルエラニ(室蘭のアイヌ名)の部落に居を構えおり申す。貴殿等は、見たこともない装束の方々だが、如何様な用事でモ・ルエラニ御出でになったのか? と長が尋ねている。」

「(秀明)我は、天照坐皇大御神様の使いである。北のこの地より順に南に下って、倭の国を須く(すべからく)従え、天下統一を図れとの命を受けて参った。其方等も、この命に従い持てる力を馳走(ちそう)せよ。いずれ蠣崎にも同じように命ずる事になるであろう。」


〔馳走とは、(食事を出すなどして客をもてなすこと。また、そのための料理)というのが現代の捉え方ですが、この時代は(走り回ること。転じて尽力、奔走すること)です。馳(はせ-る)は馬を駆って早く走らせることなので、馳・走は、(はしる・はしる)と二重になっています。戦などにいち早く駆けつけて味方し、尽力するということになります。〕


「(三郎)随分と大仰な物言いだが、俄かには信じがたい。」

「(秀明)まあ、そうであろうな。如何すれば信じる?」

「(三郎)貴殿等が天照坐皇大御神様の使徒だと言うなら、何か奇跡を見せてもらいたい。(長に向かって何事か相談するように話す) 長が言うには、食糧が不足しているので何か貰えないかと言っているが、可能か?」

「(秀明:小声で)勅使河原さん、粟とか稗の袋を10か20出せない? 可能なら布か丈夫な紙袋のものがいい。」

「(美香:小声で)やってみます。金貨2枚くらい入れて、と。金貨1枚95万円ですね。慶長小判で新品だから価値が高いみたい。(普通の声で)先ず、莚を出しますので広げてください -ストッ-。次に粟袋を出します。まず1袋、誰か転がらないように受けて。」

「(秀明)おう、任せろ。優也、頼む。三郎も手伝え。」

「(美香)いきますよ、-ドスンー」

「「「おっととっ」」」

「(三郎)ひえー何もないところから出てきた。持って来るのではなく、本当に “出す” とは・・・・ (小声で)本当に使徒様なのか。」

「(優也)(袋の口を開けて中身を見せる)ほら、粟だぞ。」

「(美香)あと粟を9袋、稗を10袋、順に出します。-ドス、・・・ドス、・・・ドス・・・ー」

「(秀明)三郎、これで良いか? お前達、何してる?」

三郎、長、その他二人、皆ひれ伏している。

「(三郎)有難うございます、使徒様。長たちも有難く、恐れ多いと思っているようです。」

「(優也)構わないから、皆、立てよ。他の者を呼んで、湿気ないうちに早くしまえ。」

三郎や長達はアイヌ語で短く話し、長が集落に向かって吠え立てると、男たちが各家から出てきて粟の袋を各家に1つずつ、残りの12袋は取り敢えず長の家に運び込むようだ。

「(秀明)三郎、長に話してくれ。当分此処に滞在する。後程家を建てるので、その時は手伝って欲しいが、取り敢えず直ぐに仮の家を作る。どこの場所なら良いか、長に聞いてみてくれ。」

「(三郎)長の家では駄目ですか? 広さはあると思いますが。」

「(秀明)彼方の二人は我らの妻でな、女子故、他人の家では過ごしにくいのだ。」

「(三郎)分かりました。聞いてみます。  $&##+*・・・? (長)+*@@#$・・・。」

「(三郎)彼方の小川の上流が良いと言っています。」

「(秀明)分かった。彼方に設置させてもらう。小川が炊事などの水源か?」

「(三郎)そうです。皆、あの小川を使っているので、水を汚さないようにお願いします。ところで、お互いに名前というか、呼び名を確認しましょう。長がイカシパ、長男がイメルッカ、次男がキサラハップといいます。」

「(秀明)我らの名前は長いので簡単に言っておく。我が桜井秀明、この男が木下優也、こちらが優也の妻で咲耶、もう一人が我妻で美香、という。(小声で)後で説明するから。斎藤さん、適当な安物の日本酒の720mL瓶を5本程買って。(普通の声で)それではイカシパに言って貰いたい。我等は、日が落ちぬうちに作業を終えたいので彼方に行く。その前に、酒を授けるから皆で飲むとよい。」

「(美香)はい、1本ずつ出すから受け取ってね。重いよ。 -ドスッ、・・・ドスッ、・・・」

「(秀明)三郎、イカシパ、イメルッカ、キサラハップ、此方に来い。酒を下げ渡すが、飲み過ぎるな。我等は、食事等は自ら作るので、気遣い無用だ。良いな。」

「(三郎)何ですかっ、この透明な瓶は?」

「(秀明)ギヤマンあるいはガラスと呼ばれるものだ。落とすと割れてしまう。割れると鋭利な角が出来るから、注意しないと手を切ったりする事になる。割らなければ、全部飲み終わった後洗って、水等を入れておくのに使える。その瓶は一番上の処を此のようにして開ける。 -開けてみせると、酒の香が漂うー それでは、後でな。」

三郎、イカシパ、イメルッカ、キサラハップが頭を下げて見送るのを後に、小川の上流へ移動する。

「(秀明)さっきは “妻” なんて勝手に言って申し訳ない。我々は身長があるから、この時代だと成人しているとみなされる。女子2人が独身であると種々不都合だと思ったのでね。今はバイザーを下ろしていて顔をよく見ていないだろうが、ずっとそのままではいられない。顔をさらすと、2人がこの時代には似つかわしく無い色白の美人であることが分かってしまい、言い寄られたりするだけならまだマシだが、強引に事を為そうとする者も出て来る可能性があるから。此処は戦国時代である事を忘れる訳には行かない。」

「(美香)そんな事だと思いました。別段不都合は無いので構いません。咲耶も構わないでしょ。」

「(咲耶)うん、しょうがないよね。」

「(秀明)それじゃあ先ずは住居を用意しようか。今度は我々男性陣が購入してみる。俺がテントだとかの大物を探す。優也も追加入金して、鍋、釜、コンロの類をお願い。」

「(優也)分かったー。シュラフも秀明に頼む。」


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