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天文19(1550)年5月26~31日

 家を建てながら、他にも二つのことを目論んでいた。一つは実際に手を付け始めており、もう一つは計画中だ。手を付けたというのは開墾して畑を作ることで、我々の新居の近くは森が近すぎて、伐採地も根起こし出来ていないから不適。結局、部落裏手の畑の更に奥の草地を借りることにした。部落の畑には粟・黍が蒔かれているようで、既に芽が出始めていた。部落民に手伝って貰い乍ら隣の草地を刈る。エンジン付き草刈り機の音と、その威力に驚いていた。最も植生は多くない。元々、土地が瘦せているのだろう。草の根は手伝いの部落民が難なく引っこ抜き、ホームセンターから購入した腐葉土と肥料を撒きながら、小型のエンジン付き手押し耕運機(250万円もした)で掘り起こす。あっという間に畑になって行く有様を、部落民は呆れたように見ている。鍬を渡して、一定の間隔で30cm位の高さの畝を作らせた。三郎を通して、なぜ畝を作らなければならないのかを説明したが、分かったのかどうか。マルチを被せて均一の間隔で穴を開け、ジャガイモ、ナス、ニンジン、トマト、トウモロコシ、ダイズを植えたが、半月経って全て芽生えた。チッカに携帯で写真を見せて、このような作物が出来るから世話を手伝って欲しいと頼んだ。勿論携帯の写真にはもの凄い食い付きで、大声を出すから、三郎やらイカシパ、イメルッカ、キサラハップ等、皆集まってしまった。

「(チッカ)何、これー。この小さなのに入ってるの?」

「(秀明)ちょっと違う。神様が作った不思議な箱で、いろんな絵を撮っておける。」

「(三郎)えーと、よく分からないんですが・・・・」

「(優也)おい三郎、ちょっとこっち向け。--パシッ、パシャ」

絵柄が良く見えるようにと思って、反射光が無い暗がりに居たのでフラッシュが働いてしまい、またまた大騒ぎ。

「(優也)三郎、見てみ、お前が写ってるから。」

「(三郎)・・・・・」

皆で回し見て、口々に大声で話し始める。イカシパが自分を指さして何か言っているが、

「(三郎)イカシパにも同じ事が出来るのか?と言っています。」

「(優也)出来るぜ。おぅ、イカシパ、--パシッ、パシャ」

撮影されたイカシパをまた皆で回し見て、騒がしい。

「(秀明)分かったか、これを通して見た通りの物の絵を、そのまま撮って置けるんだ。写真という。ほらチッカ、さっきのをよく見ておいて。(スクロールしながら)ジャガイモ、ナス、ニンジン、トマト、トウモロコシ、ダイズだ。あと月が2巡りか3巡りすると、これらの野菜が出来る。分かったか?」

「(チッカ)あんまり分かんない。世話はする。水やる、草、取る。」

「(秀明)それでいい。その度にもっと教えるから。」

後日、畑の更に裏側の丘の中腹を伐採して同様に肥料を施しながら耕し、ブドウ・リンゴ・サクランボ・柿・栗・胡桃・ユズの木を植えた。まだ苗木は小さいが、ブドウ棚も作っておく。寒すぎるかもしれないし、伐採した切り株も抜いていないのであまりいい条件じゃないけど。柿は必然的に渋柿になるね。まあ柿渋なんかは使い道が多いし、干し柿にしても良い。下草刈りとか、切り株からの(ひこばえ)とかの整備は、三郎を通じてイカシパに頼んでおいた。時々は自分でも見回ってみよう。殺虫剤が必要になるかもしれない。

 ところで、この前は見当たらなかったが部落の中央に干し台が並べられていて、アワビとかナマコが干されていた。三郎に聞いたところ、これも重要な交易品だそうだ。モ・ルエラニの湾内では、アワビやナマコは良く採れるらしい。昆布も、本当はモ・ルエラニの湾から内浦湾まで出た処の方が良いものが採れるらしいが、如何せん、この小さな舟で重たい昆布を積んで戻ってくるのは危険でやりたくないらしい。過去に、冒険しすぎて溺死(凍死?)した者は少なく無いそうだ。この時代の北海道の交易品と言えば塩引き鮭を直ぐ思い起こすが、三郎に聞いてみたところ、モ・ルエラニ湾に注ぐ小川は小さすぎて鮭の遡行が無いとのこと。モ・ルエラニ湾を形成する半島の向こう側にちょっと行くと良さそうな川が数本あり、秋になるとそこでは沢山の鮭が捕れるのだという。昔はそこの部族とも仲が良く、塩引き鮭を回してもらってそれが蠣崎にも渡り、結構な儲けになっていたようだ。しかし今は、安東の息がかかった商人が直接取引に来るので、疎遠になってしまっているとのこと。安東は蠣崎の主家みたいなもんだからな、逆らえないのだろう。うん、松前に行ったら日本海側の海岸を北へ向かって開発し、鮭も捕ろう。

 もう一つは、ここにも神明社を建立したいと思った。なにせ我等は天照坐皇大御神の御業でここにいる訳だから、社を創立するのは義務?かもしれないと思った。焦る必要はないので、ゆっくり建てよう。三郎や部落の皆も引き込むか。我等の拠点が一応できて部落の連中も肉を報酬として貰えるエクストラの仕事が無くなって、若干がっかりしているようなので、また建築の仕事を与えるのも良かろう。


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