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天文19(1550)年5月7日

 いよいよ砂利セメントを溝に流し込む作業に入る。先ずは砂利セメントの作り方を教える。バケツに砂を何杯、砂利を何杯、セメントを何杯、水を何杯と数えながら大型の桶に入れて、大きなステン攪拌棒でかき混ぜる。力がいるので、男共が交代で作業する。出来上がった砂利セメントをバケツで掬って溝に流し込んでいく。すかさず別の男がトンボモドキで均す。1人は居残って桶の砂利セメントを攪拌し続ける。静止すると固まっちゃうんでね。基準の処まで入れて、トンボモドキと塗りコテで平らにしろと教える。これが結構難しい。また、決められた間隔および深さで鉄筋を埋め込んでいく。今日は我ら二人も、皆を指導しながら塗りコテを振るうと同時に、鉄筋の埋め込みを行う。

今日は男3人が新人に替わっている。女性1人と男2人は昨日のメンバーだ。新人が3人いるから、三郎もあちらこちらから呼ばれ、右往左往しながら通訳している。6名のうちの半分しか新人にならなかったのは、(食事とお土産の肉につられて)誰が行くのかについて熾烈な争いを行った結果のようだ。三郎を通して、なるべく公平になるよう手伝いの順番を回せと指示しておいた。

昼食迄に1/3程が終わり、午後残りをやり終えて夕食、解散になった。この土台がほぼ固まるまで、3日間は作業が中断する。作業の中断を伝えると、一様に悲しそうな顔をする。まぁ、作業無しで食事や肉を提供しても良いんだがね、働かざる者食うべからずと云うし、これで終わりと謂う訳じゃないから。

その日の深夜、部落の方で大きな声が飛び交い、何かが暴れる音も聞こえてきて、三郎の声で、

「クマが出たぁー。助けてくれー」

女子2人には重武装して留まるように言い、我等2人は急いでパジャマのままでザイロンの上下・手袋とメットを付け、火縄銃と拳銃、槍を持って部落に駆け付けた。部落の男達がヒグマの成獣を取り囲み、先端に石とか骨とかの穂先が付いている原始的な槍で攻撃している。しかしどれもこれも大した攻撃には為って居らず、寧ろヒグマを怒らせているだけのように見える。持ってきた槍2本を三郎とイメルッカに渡して皆を守るように言い、我等は火縄にライターで火をつけて火蓋を切り、後ろの者達をどかせて、左側から先ず優也が、右側から俺が続けて発砲した。近くからの発砲なので狙い過たずいずれも首の根元の左右に当たり、頚椎にダメージを与えたようで、ヒグマは一吠えした後崩れ落ちた。まだ死んでいないので、三郎達に火縄銃を渡して代わりに槍を受け取り、なるべく毛皮に傷をつけないよう止めをさす。2人で協力して石突を使ってヒグマをひっくり返し、穂先を心臓のあたりに突き入れた。2人がかりで深く刺して、グリグリやるとビクンッとなった後、死んだ。

部落民の男1人が爪で掠られて結構出血しているので、美香と咲耶を呼び寄せて治療を頼んだ。筋や骨には異常が無いようなので、傷口を洗って消毒し、抗生物質軟膏を塗って包帯してお終い。その間中、イカシパが叱責のような小言を言っているので聞いてみると、三郎曰く、この男は昼間手伝いに来ていた1人だが、もらった肉を干し肉に加工しようとして外に出し忘れて居たとのこと。その匂いがヒグマを呼んでしまったと謂う事らしい。そうは言ってもなぁ、食事時、普通に肉や魚を焼いて匂いを出しているし・・・・運が悪かったと言えばそうなのかもしれんが、今後は注意するか。米国の国立公園では、クマ等が来るから食品の匂いを出すな、バーベキューでステーキ等止めなさい、とレンジャーから注意されるそうだ。野生の王国か・・・・部落は今日か明日がイオマンテ(熊祭り:イヨマンテともいう)だろう。今、深夜2時だわ、俺たちはもう一度寝よう。

「(秀明)あれ、二人して、シュラフ持ってきて如何すんの?」

「(咲耶)あのヒグマ、ひょっとすると此方に来たかもしれないでしょ。怖いよ。」

「(美香)後で何か手立てを考えるとして、今日は此方で寝させて。」

「(優也)まあ気持ちは分かるし、しょうがないね。俺らは使っちゃった火縄銃に充填してから寝るわ。余裕持って五人迄は入れるテントにして良かったぜ。」

「「おやすみなさい。」」


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