1 正史始まるも、俺はまだ凡隊員
今日から特撮ヒーローになった。
面接に行くと部屋に通された
白い部屋の中央にエロいスーツを着たお姉さんが足を組んで座っていた。
コツコツとペンを叩いてリズムを刻んでいたかと思うと、こちらをチラチラうかがうように目を向けて来る。
鋭い尖った目が何度も俺の顔と書類を往復する。
「君・・・採用ね」
「え、え!あ、はい!」
この人が後に俺の担任になる。小林詩織、小林教諭だ
いろいろすっ飛ばすとトントン拍子にヒーローになった。
表向き普通の学校をしているこの城塞高校は政府直轄の秘密基地でもある。教室間移動もカードキーが必須だ。
「これがLv1のIDカードと君の変身装置だ」
機械の塊をもらう。
「す、すごい。これが変身アイテム」
「変身と言ってください?」
「変身」
「音声認証を完了しました」
デジタルボイス、機械が変形を開始、全身に機械が広がっていき、マスクとツインアイを形成、完全変身する。
変身した。機械の戦士だあああああああああああああああああああああああああああああああ!
「マグネシウム合金を配合した量産型アクティブアーマーロストセイバーロディです。簡易的な武装を施した軽量級のロストセイバーです。量産性と汎用性に優れた次世代機ですよ」
カラーリングはモスグリーンとかザクとかそういう感じ。作った人のセンスがうかがえる。ピコーン!て目が光ってる。
「理論上アーマーはチタンや鉄に劣らない耐弾性能を持ち、9㎜弾などものともしません。武装は20㎜タングステン合金弾、装弾数は30発、マガジンは2つになります」
「す、すげー」
「訓練は明日から開始されます。指定の時間に集合してください」
「わかりました。」
ふふ、どうなるんだろ。
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訓練の日
俺は地獄にいた。
「はあ・・・はあ・・・はあ・・・」
なんでこんなに走るんだろ。もう2時間は走ってる。どうやら戦うための基礎訓練らしいが、俺はつらかった。ダルい。
「頑張りなさい!」
体操着を着た女性教諭が叫んでいる。
小林教諭だ。
初面接時と変わらず、ポニーテールでナイスバディなお姉さんだが、少し話した感じ性格がキツそうだ。生真面目というか融通が利かない神経質というか。
「そこ!ペースが落ちてる!」
「あああああああ、は~い!」
疲れた。つらかった。つらかったなあ~・・・。
明滅する視界、全身から噴き出す汗、重労働のあとのわずかな休憩時間、同僚たちが横たわっている。
「おい、頑張れよ」
横を見ると知らない同期の子が声をかけてくれたみたいだ
「う、うん」
訓練が終わると、昼食だ。
色黒の男が話しかけて来た。
ような気がしたが、男は俺を通り過ぎてクラスでも優等生タイプの子のもとへと向かった。
あれは確か谷口。
それからも誰も話しかけてこなかったな。
俺は一人で誰に話しかけることもできず、地面を見て、ただ何かを口に運ぶ。緊張して飯の味がしない。
どうせうまくいかないんだ。どうせ。どうせ。どうせ。
そんなときだった。
クラスの隅の方で一人机を見ている子がいた
あの子も一人なのかな?
俺は思い切って話しかけてみることにした
「や、やあ」
「うん、どうしたの?」
「いや、はは、なんかね。一人だと退屈でさ」
「そう、なら一緒に話でもする」
「そうしよう」
俺たちは何となく仲間になった
「あ。あの」
「「ん?」」
二人で同時に声のした方を見ると、男子がうつむいてこちらの様子をうかがっていた
「あの・・・その・・・」
すごい汗だ。顔が赤くなって、メガネも曇っている。あごがとがっている。
「おいでよ」
そういって俺は椅子を引くと
その子は少しうれしそうな顔をしたあとで椅子に座った
「自己紹介をしよう」
「俺は蛇神雄二だ」
「俺、源田哲生、よろしく」
「前田照木です。・・・よろしく」
俺たち3人は何となく一緒にすごすようになった。
以外とウマが合うのかもしれない。3人でいるとどこかなごめる。安心感のようなものを感じることができた。
キーコーン
「お昼の時間だ」
俺たち3人はご飯を食べながら、雑談をした。サンドイッチがおいしい。
「昨日のvチューバー見た?スパルが全然予想外の答えしてて笑っちゃったんだよ」
「うわ、それ見た!あの展開、まさかの展開すぎて爆笑だったよね」
「でしょ!もう何回も見返してさ」
「昼休みに動画見直しちゃおうかな~」
源田くんがニヤニヤしながらスマホを取り出した。
ここは訓練スペースでありそれはいけないことだ。
まあ堅いこと言わないでくれ。
3人でスマホを覗き込むとvtuberのスパルが変なことをして笑いを取っていた
アハハハハハハハと笑い声で沸き上がる。
そんな風にして日々をすごしていく
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模擬戦、当日
全隊員の変身装置が机の上に並べられている。
抽選が模擬戦をやる
「俺は3番か」
「次の試合は1と3番です」
模擬戦はアーマーで行われる。
「あれは・・・」
相手は訓練中1位を維持している谷口涼介だ。
強そうだ。磨き上げられた肉体、脂肪分3パーセント、綺麗な肌、つやつやの髪、頭が良く、運動もできそうだ。
源田くんが言った「蛇神くんやれええ!」
「うん!」
俺は声援に応えてから谷口に向き合う
互いに変身装置を装着
「「変身!」」
変身する。
機体は同じくロディタイプ、谷口機は赤黒のカラーリングだ。隊員たちには自機のチューニングが許可されている。
純粋な戦闘能力が競われる。
「はじめ!」
タッタッタッ!
前のめりに急速接近してくる。
それは歩法から違う。つま先を剣のようにして床の上をすべり走るような鋭さがある動きだ。足首に備え付けられた補助ブースターを最大限活用している
「なんだ!あの動き!早い!来る!」
腕をクロスしてガードするも、直前で拳ではなく足蹴りを突き刺して来る
ギャン!
金属音の激突
「ぐあ!」
アーマーによる補助力で凄まじい勢いで身体が吹っ飛んだ。
「ぐううこいつ!!」
なんとか踏ん張った俺は、一気にタックルをしかけた
パッ、と肩を叩くように身軽に交わされてしまう。
「ふん!」
ドスッ!
左下段突きが俺の腹を捕える
「かはっ!」
「はあ!はあ!」
両頬に殴られたような感覚が走る。実際殴られた?違う。そんなことはどうでもいい!!
ワンツーパンチだ。
「ふん!」
ズド!
「うえ!」
新たなボディーブロー、俺は地面に沈んだ。
「勝負あり!」
その戦いぶりを見て、谷口に対しライバル心と敵意をむき出しにするやつらもいた。
た、谷口・・つよ・・・。
ドガーン!
突然、訓練施設の壁が爆散すると、爆炎の向こうから異形の怪人が現れる。アリ怪人だ
「ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
「うあ!」
「ぶあああ!」
人を殺していく。
「前田!」
友人の前田が怪人に締め上げられている
「た、助けて・・・蛇神くん・・・」
グギ!
嫌な音がして前田の足が折れた。Y字に折れている。
「あ、ああああああああああああああああああああ!」
前田の悲鳴が上がる
「ウガアアアア!」
前田の腕が噛みつかれた
「あああああああああああああああ!」
「前田ー!やめろおお!」
俺は怪人に戦いを挑む
「うぉー!!」
「ウガ!」
乱暴な拳が俺を叩きのめした
「がはあああああああああああああああああああ!」
あり得ないくらいの怪力だ。数十キロはあるアーマーごとぶっ飛ばされる。
強いダメージによる活動限界だ。変身が強制解除された
「逃げろ!」
谷口が叫び、怪人と戦闘を繰り広げていく。
怪人は前田を投げ捨て応戦した
「はあ!はあ!はあ!はあ!」
「ウガアアアアアアアア!」
俺は力なく横たわる前田くんのもとへと向かう
「前田くん!前田くん!」
「蛇神・・・くん・・・」
「はっ!しっかりして!前田くん!」
前田くんは白目をむいてしまう。
同時に口と鼻から血を吐き出した。
「前田くん!しっかりしろ!」
意識はない
俺は心肺蘇生を試みる。
リズミカルにマッサージを繰り返す
「前田くん!死ぬな!!」
懸命に繰り返す。彼を死なせはしない!
「・・・がふっ・・・」
そのとき前田くんが血を噴き出した。呼吸が戻ってきている!
「しっかりしろ!」
「蛇神くん!」
そう呼びかけたのは源田くんだった。
「源田くん!前田くんを頼む!」
俺は前田くんをその場に残すと怪人に向き直る
「変身!」
ロストセイバーロディへと再変身した俺は、怪人へと戦いを挑む
「やああああああああああああああああ!」
怪人の頭部を殴りつける。
「ウガアアアアアアアア!」
怪人は俺を物ともせず拳打を繰り出す
「うあああああああ!」
殴り飛ばされた
谷口が叫ぶ
「さがってろ!」
谷口が殴りつけていく
谷口が叫ぶ
「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
怪人の胸に3連続を叩き込む、胸から火花が噴き出す。燃焼中のニトロエネルギー、怪人の生命源の1つだ。
「ウガアアアアアアアアアアアアアアアア!」
谷口が軽々と投げ飛ばされ華麗に着地する。
「クソ!なんてパワーだ!」
「谷口!気をつけろ!ロディの武器はないぞ!」
「わかってる!」
ロディタイプは量産性と汎用性の高いモデルだ。本来は帯刀や重火器などで攻撃能力を増強する必要がある。
俺は叫んだ
「ファイナルセイバーを使うんだ!」
「わかってる!」
谷口が腕のスイッチジョイントを押す
デジタルボイスが話しだす。
「ファイナルセイバーアクティブ」
「ファイナルセイバー!!!」
谷口の手に四つの補助アームが装着、横回転し、オレンジ色の光りが湧き上がる。ニトロエネルギーを集束させたロストセイバーの最強兵器だ。
「ロストセイバー・ファイナル・フィニッシュ!」
金の閃光が敵を貫く!
「ウガアアアアアアアアアアアアアアアア!」
ドカーン!
大爆発した
敵を灰燼に帰す。
救急車の荷台に前田くんがタンカーで運び込まれる
救急隊員さんに俺は言った
「お願いします!」
源田くんが言った
「蛇神くん、君は!」
「俺は現場の方を手伝うよ」
「わかった!」
ピーポーピーポー、車がサイレンを鳴らしながら行ってしまう。
バチ、バチチ、
配線がひしゃげてスパークが巻き起こっている。
周囲にはけがをした人が何人もいた。
かなりの惨状だ。
上官が俺に声をかけてきた
「蛇神、これを奥に運んでおいてくれ」
「了解!」
俺は医薬品の詰め込まれた段ボールを持って、建物の中庭にある簡易治療所へと向かおうとしていたそのときだった!
「はあ!はあ!はあ!」
治療所のはずれの裏側、熊のようなデザインの体格、全身青色のメタルの戦士が新たな怪人と戦っていた。
「あれは!」
急いで物陰に隠れて様子をうかがう
「はあ!はあ!はあ!」
華麗な拳打、怪人を圧倒していく。
「あれは!ロストセイバー!」
しかし、そのフォルムは俺の知るどのロストセイバーとも違っていた。
「はああああああああ!」
加速するスピードが戦士の息吹を高ぶらせる。
滑走していく彼の歩みを怪人は止められない。
一方的な攻撃方法が四方から襲い掛かる。
「ゲラァァァァァァァァァァー!」
怪人が悲鳴をあげた。
「なんて猛攻だ。やつはいったい!」
「はああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
ドカーン!
大爆発が巻き起こる
戦いが終わり戦士の変身が解除されると、そこに立っていたのは!!
「谷口・・・なぜあいつが・・・」
俺は学生としての彼と戦士としての彼の雄姿を目にすることとなったのだ。




