表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/82

第六話「舞踏会での試練、そして婚約破棄の予感」

「皆様、ごきげんよう。本日は舞踏会ですわ!」


……ええ、そうですわね。舞踏会、貴族令嬢として避けられない社交の場ですわね。

素敵なドレスを着て、優雅に踊り、貴族社会に馴染む……

そう、これこそ私の望んだ令嬢ライフ……のはずでしたのに。


──なのに、王太子殿下がこちらを試すような目で見てくるのはどういうことかしら?

まさか、この舞踏会が"私の審査"になっているとは思いませんでしたわ。


……ええ、分かっています。

この空気、この流れ──これは、"婚約破棄"フラグが立っていますわね?


はぁ……皆様、どうぞ最後まで見届けてくださいませ。

宮廷の舞踏会。


煌びやかな装飾が施された広間には、王族や貴族たちが集まり、優雅に談笑していた。

豪奢なシャンデリアが照らす中、華やかな音楽が流れ、貴族令嬢たちは色とりどりのドレスに身を包み、優雅に踊っている。


──そんな中、私は緊張した面持ちで立っていた。


「お嬢様、とてもお美しいです」


専属メイドのミレーヌが微笑む。

私が身に纏うのは、エルフェルト公爵家の象徴である深紅のドレス。

胸元に施された繊細な金刺繍が、気品を漂わせる一着だ。


……見た目だけなら、どこから見ても完璧な貴族令嬢。


──だが、私は知っている。


この舞踏会は、単なる社交の場ではない。

王太子・アレクシスによる、私への審査の場であることを。


「お嬢様、王太子殿下がこちらへ向かっておられます」


ミレーヌの囁きとともに、私はゆっくりと顔を上げた。

すると、青のタキシードに身を包んだ王太子が、優雅な足取りで私の前に現れる。


「リリアナ・フォン・エルフェルト公爵令嬢」


「王太子殿下」


私は優雅に一礼した。


彼は私を一瞥すると、静かに右手を差し出す。


「……私と踊っていただけますか?」


その言葉に、周囲がざわめいた。


王太子が正式に舞踏会で相手を指名するというのは、貴族社会において非常に意味のある行為だ。

「お前が次期王妃として相応しいか、この場で確かめる」──そう宣言するも同然なのだから。


私は一瞬迷ったが、断る選択肢はない。


「光栄ですわ」


私は彼の手を取り、ダンスフロアへと向かった。


──そして、舞踏会の音楽が始まる。


優雅なワルツのリズムに合わせ、私は王太子と向き合う。

彼は流れるような動きで私の腰に手を添え、軽くリードした。


私は、内心少し驚く。

王太子は、ダンスが上手かった。


まるで舞踏会の主役のように、彼の動きは洗練されていた。

貴族令嬢たちの憧れの的となるのも納得がいく。


「……意外ですね」


私は思わず呟いた。


「何がです?」


「王太子殿下は、どちらかといえば堅物な方かと」


彼は微かに口元を歪める。


「貴族社会において、舞踏もまた重要な教養の一つです」


「ええ、存じておりますわ」


私は優雅に微笑みながら、彼の動きに合わせた。

自分でも驚くほど、私はスムーズに踊れている。


──だが、それも当然か。


《剣聖》のスキルによる反射神経と動体視力が、私の動きを完璧に調整しているからだ。


もし普通の貴族令嬢であれば、少しでも足を踏み外せば台無しになるようなステップ。

だが、私はまるで剣を振るうように、舞踏の動きを習得していた。


「……」


王太子の視線が、鋭く私を見つめる。


彼は何かに気づいたのか?


私の動きが、普通の貴族令嬢と比べて異様に洗練されていることに。


「リリアナ殿、貴女は剣を握る令嬢だと聞いていますが……舞踏も得意なのですね」


「……さあ、どうでしょう?」


私は微笑んだまま、彼の問いに答えなかった。


舞踏ができるかどうかではなく、これは「私の資質」を問われているのだ。


私は、この場でどう振る舞えばいいのかを考える。


貴族令嬢として相応しくあるべきか、それとも──


「……リリアナ殿」


王太子はダンスの動きを緩め、静かに囁くように言った。


「この舞踏会が終わった後、改めてお話ししたいことがあります」


私は一瞬、眉をひそめる。


「……これは、良い話でしょうか?」


「……それは、どうでしょうね」


彼は、ほんの僅かに微笑んだ。


私は、その表情に確信した。


──これは、間違いなく婚約破棄の話だ、と。


舞踏会が終わり、私は王宮の一室へと案内された。


王太子は静かに椅子に腰掛け、私を見つめる。


「リリアナ殿、単刀直入に申し上げます」


「……はい」


「私は、この婚約を見直したいと考えています」


やはり、そう来ましたか。


私は軽く微笑みながら、彼の言葉を待った。


「貴女の資質は確かに素晴らしい。しかし、王妃となる者は、貴族社会において理想的な令嬢であるべきだ」


「……つまり?」


「剣を握る者が、王妃として相応しいとは思えない」


彼は淡々と告げた。


──ここまで来て、やはりそうなるのですね?


私はほんの少しだけ、期待していた部分があったのかもしれない。

王太子が、私の資質を理解し、剣を振るうことを認めてくれるのではないか、と。


だが、現実は甘くない。


「……分かりましたわ」


私は静かに頷く。


「王太子殿下がそう望まれるのであれば、婚約は解消いたしましょう」


「……」


王太子は、僅かに驚いたような表情を浮かべる。


「……意外ですね。もっと抵抗されるかと」


「私が無理に婚約を続けたところで、未来があるとは思えませんもの」


私は軽く微笑んだ。


「私は、王太子殿下の理想とは違っていた。それだけのことですわ」


──そして、私は立ち上がる。


王太子はしばらく私を見つめた後、ゆっくりと頷いた。


「……貴女は、強い方なのですね」


「いいえ、ただ現実を受け入れただけですわ」


(物理的には強いですが……)


私は優雅に一礼し、そのまま部屋を後にした。


──こうして、私は王太子との婚約を破棄された。


貴族社会では一度婚約破棄された令嬢は、立場を大きく失うことになる。


だが、私は不思議と、何も感じていなかった。


むしろ、これで自由になったのだから──


「……これから、どうしましょうかしら?」


私は、夜空を見上げて微笑んだ。

「……まさか、ここまであっさり受け入れるとはな」


どうも、アレクシス・フォン・ルクセリアだ。

私は今回、正式な婚約者候補であるリリアナ・フォン・エルフェルト公爵令嬢を見極めるため、

舞踏会の場で彼女を観察していたわけだが……。


彼女は"異端"だった。

剣を握る令嬢。

格式ある王妃として相応しいかどうか、慎重に見極めねばならなかった。


……そして、私は決断を下した。

彼女は"理想の王妃像"ではない。


だから、婚約を見直すと言った。

だが、彼女はそれをあっさりと受け入れた。

それどころか、"解放された"かのような笑みを浮かべていたではないか。


……一体、彼女は何を考えているのだろうな?


まったく、興味深い令嬢だ。

次に彼女と会う時は、どうなっているのか……。


まぁ、婚約破棄は決まったが、これで終わりとは思えないな。

読者諸君、次回も見届けてくれ。


それと、評価やブックマークを忘れるなよ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

★ 面白かったら応援を! ★

『転生令嬢、淑女の嗜みよりも筋肉と剣を極めます』
〜チートレベルアップで最強貴族令嬢になった件〜

面白かったら、★★★★★評価をお願いします!
ブックマークで続きをお楽しみに!


あなたの応援が、物語を加速させます!
コメントやレビューも大歓迎です!

カクヨム版はこちらから!

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ