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第六十一話「白旗の末に」

……今回の話、正直あんまり書きたくない内容だ。


まぁ、読めば分かる。

俺はいつも通りやっただけだし、特別なことなんて何もしてない。


それでも……妙にいろんな意味で記憶に残る気がする。


……あとは、お前らが見届けろ。

 目の前にいるエルという青年は、微動だにしない。

 まるで、自分に攻撃が届かないと確信しているかのような、ただそこに"在る"だけ。


 けれど、それがどれほど異様なことか。

 どれほど異質なことか。


(……これどういう原理なの)


 普通、対峙していれば、何らかの動きはあるものだ。

 こちらが剣を構えれば、相手も身構える。

 こちらが動けば、相手も応じる。


 だが──彼は何もしない。


 まるで、すべての攻撃が無意味だと、最初から決まっているかのように。動じない。


「はああああああああっ!!」


 私は、その異様な光景を振り払うように剣を振るった。

 一撃、二撃、三撃。


 風を裂く音が響く。

 それでも、エルの姿は変わらない。


「……はぁ、はぁ……」


 息が上がる。

 汗が額を伝う。


 それでも、彼はただ静かに私を見ていた。


「無駄だ」


 その一言が、私の胸の奥に響く。


「俺に攻撃は当たらない」


(……どういうこと?)


 確かに、攻撃が届かない。

 剣が触れることすらない。


 でも、それは単に速さが足りないわけではない。

 力が足りないわけでもない。


 まるで、"見えない壁"が、彼の周囲を覆っているように、私の刃は空を切る。


(まるで、鉄壁ね……)


 違和感の正体を掴めないまま、私は剣を握り直した。


 しかし、私はここである事に気付いた。


「ですが、そちらは攻撃してこないんですのね」


「……」


「──あっ、なるほどなるほど。そういうことですか」


「何だ」


 エルの瞳が、僅かに鋭くなる。


「貴方、防御に特化しているだけで攻撃は出来ないんですのね」


「……ああ」


「……あら、素直ですわね」


「嘘を言ったとてしょうがないだろ。それに、それを知ったところで俺にその剣が当たらない事実は変わらない」


(……さて、どうかしら?)


 私はゆっくりと息を吐いた。


 エルの言葉を鵜呑みにする気はない。

 彼の防御がどれほど異常なものだとしても、攻略できないとは限らない。


(まだ、試していないことはある)


 私は一歩、下がる。


 ダインを倒した後から、私の身体が明らかに軽くなっている。

 まるで、何かの枷が外れたかのように。


 力の流れが違う。

 筋肉の動きが違う。

 空気の感覚すら、鋭くなっている。


 まるで、《剣聖》、《武神》の二つを常時発動しているような感覚。


(これは……いけるかもしれませんわね)


 私は一歩、前へ。


「さて、ではここから少し本気を出していきますわよ」


 エルの表情は変わらない。どうせ変わらないと。


 けれど、その目が、私の動きを注視している。


 私は──宣言する。


「──スキル《戦乙女の咆哮・極》発動」


 その瞬間だった。


「──っ」


 エルの表情が、初めて動いた。


 彼の瞳が、わずかに揺らぐ。

 その身体が、僅かに固まる。


 まるで、本能が危険を察知したかのように。


「……何?」


 低く呟かれたその声は、今までの無感情な響きとは違っていた。


 私は構わず剣を握り直す。

 確信した。


 このスキルなら、彼に届く。


「さぁ、行きますわよ──」


「──降参だ」


「……はい?」


 私は思わず動きを止めた。


「だから降参だ。参った」


「……まだ何もしてないのですけど?」


「”その何か”をしたら俺は死んでいる」


(……そこまで!?)


 スキルを発動した瞬間、彼は"負け"を悟ったということ?

 まだ攻撃すらしていないのに?


「……あら、そうでしたの」


 私は剣を下ろしながら、僅かに目を細める。


 エルは、長く息を吐いた。


「はぁ……お前、スキル持ちか。厄介だな」


(……スキル……スキル!?)


 彼の言葉に、私は反応する。


「貴方スキルをご存じで!?」


「……ああ」


「……」


 私は、じっと彼の顔を見つめた。


 スキルを知っている。

 この世界の人間には、本来知られるはずのない概念を、彼は当然のように知っている。


 つまり──。


「貴方、()()()()()()?」


「……まぁな」


 エルは、淡々と認めた。


 私は、ゆっくりと息を吐く。


「最初から疑っていた」


 エルは静かに言う。


「お前は他の者とは違う波長を持っていると感じていた。だが、今ので確信した」


 私は剣を下ろしながら、静かに言葉を紡ぐ。


「……そうでしたのね。貴方もスキル持ちだったのですね」


「フンッ」


 エルは腕を組み、軽く首を鳴らす。


「女、今すぐあいつを止めさせた方がいい。ミカもスキル持ちだ」


「何ですって!?」


「ミカのスキル名は──《破壊神》」


「……なんか物騒な名前ですわね」


「まぁ、名前の通りだと思っていい。効果は単純。一度当たれば破壊……つまり、()()


「なっ……」


 私は思わず息を呑んだ。


(もし私もあの子の拳に当たっていたら死んでいたってこと!!!??)


「お父様が危ない……!?」


「そういうことだ。ミカのスキルは俺でも耐えられない……多分」


「……」


(当たれば即死……そんなチート、あるわけ……あるわね)


 エルは私の反応を見て、静かに言う。


「はぁ……だから忠告したろ」


 私は唇を噛みしめる。


「……お父様は、それでも負けませんわ」


 エルが、じっと私を見る。


「女、自分の父親を殺してぇのか?」


「……」


「……いや、そもそも本当の意味では父親じゃないのか」


「いいえ、父親ですわ。本当の意味で、ね」


 私は静かに言い切った。


 エルの目が、わずかに細められる。


「なら何故止めない」


「お父様は私たちのような”転生者”ではありませんわ」


 私は胸に手を当てながら、静かに言葉を紡ぐ。


「……でもね、お父様は……彼はね、その生涯を剣に費やした愚か者なの」


 エルが眉をひそめる。


「……愚か者?」


「ええ」


 私は微笑む。


「色んなものを犠牲にして、後悔して、つい最近になってやっと改心したバカなのよ」


 エルは沈黙する。


「だから、負けないよ」


 私は微笑みながら、はっきりと告げる。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 エルはじっと私を見つめたまま、静かに息を吐いた。


 そして、低く呟く。


「……だといいがな」


 ──私の言葉は、どこまで父に届いたのだろうか。


 だが、それを確かめる暇はなかった。


 二人の戦闘は未だ続いているのだから。

うおおおおおっ!!読んでくれてありがとじゃあああああ!!


どうじゃどうじゃ!?今回の話、なかなか熱かったじゃろ!?え、熱すぎて読みながら汗かいた?それは運動不足じゃな!


ところで、妾のスキル《破壊神》、ようやくちょびっとだけ片鱗を見せたのじゃ~。

でものう、これ、まだほんの入口じゃからな?これからもっともっと、とんでもないことになる予感がするのじゃ!


それにしてもエルのやつ、見た目クール系のくせして、案外分かりやすい反応しよるよのう。妾としてはああいうの、けっこう好きじゃけどな!


次回はどんな祭りになるかのう?また血がドバドバのグチャグチャになるやもしれんぞ!……ふふ、楽しみにしておれ!


ほいでは、また会おうぞ!次回も読まぬと破壊するぞ~~!!

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