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第四十四話「王になんて、絶対になりませんわ!!」

 ──この世界には、どうしようもない理不尽がある。


 例えば、突然の婚約破棄。

 例えば、貴族として生まれながら、淑女よりも剣の才能に恵まれていたこと。

 例えば、それが原因で社交界に馴染めず、"浮いた存在"になってしまったこと。


 そして──王位継承問題に巻き込まれる、というのも、そのひとつ。


「では、次代の王を決める方法についてですが……」


 ギルドの改修が終わり、私は再び受付のお姉さんに呼び出されたのだった。

 ギルドの宿を破壊した件についての事かと思っていたのに、

 彼女の口から出てきたのは、それよりも遥かに大きな話題だった。


「次代の王を……決める?」


 私は思わず聞き返す。

 つい数日前まで、王位のことなんて微塵も気にしていなかったのに、

 どうして突然そんな話になるのだろう。


()()()()()殿()()()()()()()()()()()()()()()()


「……!」


 胸の奥がざわめく。アレクシス。


 私を"貴族らしくない"と見下し、

 あろうことか公の場で婚約破棄を突きつけてきた、あの男。


 彼は、小さな戦場で"敗北"し、そのまま消息を絶ったと聞いていた。

 でも、どこかでまだ生きているのではないかという噂もあった。


 ──けれど、噂は噂。

 現実として、彼は"いなくなった"のだ。


「そうですか……」


 私は感情の読めない声で返す。

 驚きも、悲しみも、何もない。

 彼とはとっくに関係が終わったのだから。


 でも、これで王位継承権を持つ者が誰もいなくなった。

 つまり──王がいない状態。


「国を統べる者が必要です。そして、貴族会議で話し合った結果──」


 お姉さんが一拍置く。


「現在、最も王に相応しい人物として挙げられたのが、エルフェルト公爵家当主・レオン様、そしてそのご息女であるリリアナ様……貴女です」


「…………は?」


 頭が真っ白になった。


 今、なんと??


「えっと……つまり、私が王候補に挙げられた、ということですの?」


「その通りです」


 即答された。認めたくなかった。信じたくなかった。

 だってやっと自由を手に入れた。それをまた貴族だからと自由を奪われる。

 そんなの絶対に嫌だ。


「そんなの……絶対にお断りですわ!!」


 私は即座に叫んだ。

 そんなもの、受け入れられるはずがない!!


「だって、わたしは自由に生きたいんですの!! 王なんて、そんな責任の重い役職、やれるわけありませんわ!!」


「……とはいえ、王国を放置するわけにはいきません。リリアナ様の意志がどうあれ、この国の王を決める必要があります」


「なら、父上にやらせればいいでしょう!?」


「レオン様も『俺は政治向きではない』と仰っており、貴族たちも『リリアナ様こそ相応しい』と……」


「貴族会議、全員まとめてバカなの!?!?!?!?」


 どう考えても、父の方が適任だろう。

 なぜ私が"適任"になるのか理解できない。


 私は自由に生きたかった。

 冒険者として、好きな時に戦って、好きな時に旅をして──。


 王なんて……そんな、窮屈なものに縛られたくない。


「と仰ると思い、もしリリアナ様が王を継ぐことを拒否される場合、最終的な決定は"決闘"で決めることとなりました」


「……え?」


 思考が止まった。


 今、何て言った?


「決闘、ですか?」


「はい。貴族たちの話し合いでは、王を選ぶには実力が必要であるという意見が多数でした。 ですので、王国最強の騎士と戦って勝った者が王になるという形になりました」


「ちょっと待って、それはおかしい!! なぜそうなるの!!??」


「話し合った結果です」


「貴族って本当に話し合いが好きですわね!? ただし、ろくな結果を出さないですわ!!」


 私は叫ぶ。

 いや、もう呆れるしかない。


 なぜ"話し合い"の結果が"決闘"になるの!?

 言葉の意味を理解していないのでは!?


「そして、リリアナ様の相手は……」


 私は息を飲む。


「──()()()()()()()()()()()()()()()() ()()()


「無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理!!」


 私は首をブンブン振った。 今すぐ逃げたい。

 なんなら国境を越えて逃亡したい。


「リリアナ様は今やこの国の英雄です。ここで勝利すれば、王となることができます」


(え、私って英雄なの?)


「ならなくていいですわ!!そんなもの!!」


 というかお父様が王国最強の騎士なんて初耳なんだけど!?


 私は叫んだ。

 叫んだけど、周囲はすでに決闘モードに入っていた。話を儲けた場が悪かった。

 ここはギルド。普段は飲み食いばかりしている冒険者達も今回ばかりは血気に満ちていた。


 多方面から「リリアナの嬢ちゃんなら勝てるっ!」とか「やっちまえー!!」とか……。


「お嬢様頑張ってくださいっ!」


 中にはとても聞き慣れた声が、聞こえた気がした……。


 私の気持ちも知らずに周囲は盛大に声を上げる。


 ──こうして、私は王位を賭けた決闘をすることになった。


 もちろん、そんなもの望んでいない。


 絶対に勝つしかないとか、そんな展開にはならないはずだったのに──。


 私は自由が欲しいだけなのにどうしてこうなるの……。

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