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ぴーすふる  作者: 金山トーツカ
Prologue: Begin the new world.
2/2

001『初日』

『目を覚ますとそこは異世界だった。』


最高にイケてる冗談だ。スレタイなら5コメ上等レベルの。

本当に、冗談だったらよかったんだが。


…ついさっきの記憶で転生しているのは確実だ…と思う。


俺の部屋、こんな趣味じゃねぇし。


白髭の男性を描いた大きな肖像画。赤いカーペット。高そうなシャングリラ。

王天幕付きのベッドに、高そうな服が沢山入っている大きなクローゼット。

窓ガラスやランプなどにも無駄に凝った金の装飾がされていたり、全体的に金がかかりそうな部屋だ。


ー中世の画像検索でもしてもらえりゃ一瞬で出てくるんじゃねぇかな。

っていうレベルでの典型的貴族屋敷風の部屋。


でも、断定するのはよくない。一応幾つかの可能性は想定しておくべきだ。


まず一つ。ここが異世界ではなく、天国である可能性。

俺は『神を信じていないので、天国に行ける可能性は皆無である』という真に驚くべき事実を発見したが、この余白はそれを書くには広すぎる。Q.E.D


次に一つ。ここが異世界ではなく、地獄である可能性。

地獄であれば、これほど夢見心地のよいベッドの上ですやすやなどという状態はありえないだろう。

うん、ニ〇リにも負けて無いゼ、君は。現代でも通用できるレベルだ。

ガチャガチャ、構造は…あっ。一応スプリング使っているのか。中世のくせにやるな。


また一つ。これまでの全部含めて夢であったという可能性。

生憎、俺は眠りが深く夢など産まれてこのかた見たこともない。

…しかし見たことはないということは、ありえなくもない、ということだな。

だが、そんな希望的観測に頼るのは余りにも現代一般市民としてはふさわしくない。


ーといっても、これが夢であることが希望であるというのは甚だ疑問ではあるのだが。


ま、世界を救えなんていう胡散臭い噺よりゃマシか。


しかし、周りに人がいなかった点だけは不幸中の幸いだ。

今のうちに現状把握をなるべくしておくことが生存率上昇に繋がるはずだろう。

…場合によっては国外脱走とかも視野に入れておくか。


では御託はいいので、まずはお約束の身体的変化の確認だ。

上半身、なし。下半身、あり。ヨシ!No TS!GG!


そうすれば、あとは外見だが、鏡を見ながら確認してみるか。

…なんとなく、違和感は感じているのだが。

あれ、鏡は…あ、あそこか。

ほほぅ、割かし美少年じゃないか。

少し…というか大分中性的な見た目ではあるが。

というのも、幾分瘦せすぎていて筋肉がほとんど無いんだよね。

生まれつき体が弱いのかね、逃げるのには不利そうだな。

…といってもまだ6歳程度だろう、成長すればなんとかなるよ、うん。


…あれ、そういやなんで俺、黒パーカーを着ているんだ?他にも転生者がいたのかね。


まぁいいや。


それよりも、体が弱い理由は顔を見れば一瞬で分かった。

いや、小食顔とかそういうわけではないんだ。

誰でも、紅眼白髪、色白の肌と来ればアルビノであることは容易に予測できるだろう。


…だが、それならば俺にはいくつか言いたいことがある。


西日の当たる部屋にするな!せめて、カーテンをしろ!日光は全ての病気を治す訳じゃないんだよ!貴方は百薬の長だからといって酒を患者に飲ませるのかという話だ!中世か!


…ゴリゴリ中世でした。なんか申し訳ありません。

だけど、王天幕でカーテンは作らせてもらった。反省はしている、後悔はしていない。


だが、ということは、ですよ。

あのいかれた時代なら紅眼白髪は迫害の対象であったとしてもおかしくはないのだよ、ジョー〇ター。


…しばらく遊んでいたけど、もうそろそろふざけている場合でもないな、真面目にやろ。


…コホン

つまり、次にやるべきなのは明らか貧弱なこの体でも逃げ切れるであろう逃走経路の確認というわけだ。

まずは壁にあるかもしれない抜け穴を調査…


コンコンコン。

不味い、刺客か?


「御食事をお持ちしました、聖那卿」


なるほど、この世界が中世ヨーロッパと似通った世界なら、聖那卿と呼ばれている当たり、

俺はどこかの貴族の次男坊で名は聖那であるようだな。


…しかし、聖那は俺の前世の名でもあるんだよな、あのカミサマのサービス?


いや、それは無いか。

俺を見る目、ゴキブリを見る目となんら変わらなかったもんな。


その前に、余りにも自然だったせいで一瞬気づかなかったけど、扉の外のあいつが話している言語、日本語じゃないか。


...ちっ、ここまでご都合主義だと冷めるんだよなぁ。


でも、同じ転生者の刺客という線も大いにある。


…どれにしても一回攻撃してみればいっか。


「返事がございませんのでしたら、入らせていただきますよ。」


来た、だけどまだ耐えだ。

彼女(声のトーンからそう思われる)が入って一度周囲を確認したら隙ができるはずだ。

そこを叩こう。

ガチャ。


「あれ、どこにいったんで…」


その女が俺の隠れている扉と逆の方向を向いた瞬間、彼女が持ってきた料理をのせたカートの上に陳列されているナイフを取り、飛び掛かってそれを首元に押さえ付ける。


「動くな、殺すぞ。」


異世界に来て初めて声を出したというのにちゃんと低い声を出せた。

だが、思ったよりも凄味がないな。やはりまだ声帯も子どもなんだな。


…あれ、なんでだろう?


唐突に眩暈がしてきた。しまった、病弱の身で急に動きすぎたか。


が、ここで倒れるわけには…あっ…


ドタッ。


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