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陰謀論者と猫

作者: 葉沢敬一

毎週日曜日午後11時にショートショート1、2編投稿中。

Kindle Unlimitedでショートショート集を出版中(葉沢敬一で検索)

 牛の乳を飲むと牛になるという話を知っているだろうか。もちろんそんなことはなくて、多分、牛痘の接種をジェンナーが始めたときに広がった噂が変化した物だろう。


 この「真実ではない噂を本気で信じる人々」がいつの時代になっても存在するということが分かったのがコロナ禍だ。


 ワクチン打ったら5Gに接続するとか。


 現在、猫用の首輪にGPS付けた物は存在しないのをご存じだろうか? 機械が大きくなりすぎて実用化してないのだ。大型犬用のものはある。だが、猫にとっては大きすぎる。まだまだ、技術レベルはそんな物なのに注射で無線LANに繋がるものなどありえない。


 陰謀論者は自分たちが正しくて、調べれば分かることだろうというがその出典が怪しい物と気づいてない。政府の陰謀という創作物の見過ぎである。


 あるいは過敏な被害者意識。問題はそれを他人に強制しようとするものだ。


 昔、下北沢の薬問屋でバイトしていたときの話である。昼、雨が降らない限りコンビニで買ってきた弁当を近所の公園で食べていた。


 野良猫が多く、13匹まで数えたが、弁当を食べていると食べ物をねだってくる。毎回、数少ない鶏の唐揚げを与えていた。


 一応、書いておくが猫の健康には悪かったらしい。当時そんなことは知らず、後年、ツイッターに書いたら叩かれてしまった。でも、腹空かせている動物に、健康に悪いからとご飯を与えないのも非情ではないかと私は今でも思っている。猫は今空腹で、餓死するかもしれないのに。


 当時、猫に対する知識もそう無く、猫缶も当時少なかったコンビニに置いているのかもわからず、そもそも猫缶をあげるという発想もなかった。


 それはさておき、弁当を食べていると、中年女性が挨拶して話掛けてきた。僕が女の子だったら、ナンパ? と思うかも知れないが、多分そうでは無く。


「その弁当、身体にわるいですよ」

 あの……独身でバイトに来ている僕に他に選択肢はないんですが。


 活動家か、宗教かわからないが、僕はこう返事した。

「すみません、僕の意見としては、あっち行ってくれませんか?」


 女性はちょっとだけ戸惑って去って行った。


 バイトは僕が対人恐怖症で社員さんと顔を合わさないようにしていたため、サボっていると思われていたので、ギクシャクとした形で終わった。


 最終日、猫に弁当の全部の唐揚げを与え、仕事をし帰った。


 以後、下北沢に来る機会はない。笑顔で持論を押しつけてくる人とも会うことはなかった。


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