プロローグ
ずっと夢見てた。
物心ついた時からゲームが大好きで、気が付けばゲームオタクになっていた私。
いつか、大好きなゲームの世界に行ってみたい。
もし転生できるなら、大好きな恋愛ゲームの世界に転生したいって。
でもまさか、それこそゲームの中の出来事のような事が、現実に起こるはずないなんて諦めていたんだけれど。
まさか、夢が現実になるなんて思いもしなかった。
実は死んだ時の記憶が全くなくって、というか、ゲームが大好きなゲームオタクの腐女子だったという事と、プレイしたゲームの内容以外の記憶は全くなくなっていて、生前の自分がどこの誰だったか名前すらも忘れたけれど。
ゲームの世界に転生したいという夢はしっかり覚えていたから、大好きな恋愛ゲームの世界に転生した時は凄く驚いた。
けれど、それ以上に驚いたのは。
転生した後の姿がゲームのカーソルだった事だけれどね!
カーソル!?
こういうのって転生したら、大概は主人公とか、ライバル役とか、モブ子とかになるんじゃないの!?
なんでカーソル!?
生き物ですらないじゃない!!
なんて転生した当初は激しく動揺したけれど、よくよく考えてみて気が付いたんだよね。
これってよく考えたら美味しい展開じゃないのかと。
だって、たぶん私は恋愛ゲーム大好きだけれど、主人公に自己投影する夢女子型じゃなくてあくまで主人公と誰かの恋愛模様を見て萌え悶えたいタイプの観戦型のプレイヤーだったから。
自分が恋愛したいわけじゃなかったんだよね。
だいたいこういう展開に陥った主人公ってゲーム内の主人公そっちのけで、攻略キャラ達に溺愛されたり、自分がモテモテになっちゃってどうしよう!?な展開になるんだけど。
よく考えたら私、それいらないんだよね。
自分の恋愛とか邪魔なだけだし、そもそもしたくもないし。
でも、カーソルだという事は、主人公の邪魔をする事なく主人公と攻略キャラ達の恋愛を間近で、生で堪能できるわけで。
しかも、しかもだよ。
私がカーソルであるという事は、主人公をどこへ行かせて誰と合わせるか、どんな対応をさせるか、全て私が決められるって事で。
それってゲームの世界をリアル体験しながらゲームができるって事なわけじゃない。
めちゃくちゃ最高じゃん!!
という結論にいたった私は、今はこうして嬉々としてゲームのカーソルという第二の人生?を謳歌する事に決めたんだ。
そうと決まったら、攻略キャラ全員のイベントを網羅して堪能したいから、主人公を是非とも全キャラ同時攻略可能ルートを通らせないと。
頑張るぞ、おー!
そう強く心に決めて、私は実際にはない右手の拳を心の中だけで掛け声とともに高々と掲げたのだった。