第一話 管理者
- 第一話 管理者 -
遥か昔──────
そこはまるで無としか言いようがない空間と言うべきなのか、変わり果てた宇宙と言うべきか…。星も光も何もかもがない空間に、足首まで続く長いコートを羽織ったたった一人の男が、そこに孤独を感じさせるような雰囲気でその場に座り込んでいた。
この男はかつて、管理者と言う地位にまで成り上がった存在。誰が見てもあの男が出すオーラは異質、全ての攻撃が彼の手の平の上で完結してしまうかのような恐怖が辺りを漂う。
そんな男の名前は「式破支配」。この物語の主人公になる存在だ。
式破はまるで悲しみを感じさせるような雰囲気で語り始めたのだった──
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─?????─
「俺はどうしようもねぇ人間だ。こんなに愛した世界、宇宙を自分の手で終わらせてしまうなんてな…」
「例え俺が元に戻したとしても、争いは絶えないだろうし、同じ結末を迎える可能性だってある。」
( 俺は式破支配。って言っても誰も知るはずがない。だって俺は、もう1人なんだからな!
無だけになったこの宇宙も、全部俺のせいで起きた事。責任は取りたいが、余計な事をする羽目になるだろう。
俺はため息をつきながら何年もこんな生活を暮らしてきた。だが、ようやく覚悟が出来た。
俺は勢いよく立ち上がり、無の中に1つ大きな白い光を作り出す。そして間もなく俺の口は開いていた。)
「一か八か、未来に託して見ようじゃねぇか。何年後……何万年後でもいい。平和な世界を願って、この命くれてやろうじゃねぇか」
「転生・引継」
( この能力は通常の転生と違い、昔の全ての記憶、フィジカル、能力、何もかも引き継いだまま転生するものとなる。でもしっかりデメリットもある。完全な力を取り戻すのに長い時間を要するからだ。1年……嫌、3年程掛かるかもしれない。まぁ基礎的なものは全部、転生後から扱えるから気軽に待てばいいだろう。
俺は覚悟を決めた顔で先程行った白い光の中へ入り込む。その瞬間、俺は紙に火をつけたかのように儚く消えていった。1つの強大な魔力にも気付かずに──────。
あれから何千年がたったある日、大きな森の中で1つの白い光の柱が天を貫くように現れる。やがて光は消え、中から現れたのは……?
そう、俺だ。俺は開始早々感動した。あの時になかった全てがあるのだ。風は吹き、葉は揺れ、鳥は鳴き、太陽が俺を照らす。俺の望んだ世界だ。
それより気になるのは、俺が眠ってからどれくらいたったのだろう。早速俺の根源に聞いてみる事にした。俺の根源はどういう原理か知らんが、会話が可能なのだ。
生意気にも俺はこいつに勝てない。)
「おはようさん。"相棒"」
「おはよう。管理者」
( 俺の根源は、優秀で俺の為になんでもやり遂げる有能さんなのだ。だから、根源というよりストレイターと呼ぶことした。それもなんか呼びにくいので俺は相棒って良く呼んでいる。
俺が言葉を送るとすぐに帰ってきた。落ち着いた良い声だ。俺は間もなく相棒に問い掛ける。)
「今って何年なんだ?」
「今は年と言うのがリセットされ、2200年6月6日です。管理者が眠った所から計算すると軽く2万年は経過しています。」
「2万年?!結構時間がかかったんだな」
( 意外と時間が経ってしまっていた。とりあえずこの世界を堪能する為に森から出ないと行けない。奇跡的に近くから声が聞こえる。俺は迷わず声を頼りに歩み始めた。
数分は歩いただろうか、ようやく森の出口が見えてきた。俺は森を抜け大量に光が差し込んできたので思わず目を半開きにしながら先の景色を見た。
俺は驚きのあまり、すぐに半目は消えた。そこには綺麗な街並みに、ど真ん中に目立つように建てられた学院のような贅沢な建物、俺が作れなかった世界だ。俺は思わず笑みを浮かべ、口を開く。)
「これが、平和……。力…必要なかったかもな」
( 俺に力なんて必要ないと思ったのは初めてだ。それほど今の世界は平和だった。俺はこの街を歩き回りながら、新しくこの世界で優雅に生きていこう!そう思った。やけに視線を感じながら歩いていた時。突然、1つのアナウンスが耳に入り込む。その内容は俺だけが驚絶してしまう程だった。)
「ごきげんよう。この世界に生きる全ての生命よ。我はこの世界に生きる神、全知全能のラグエルである」
( 全知全能ラグエル……その言葉だけで辺りは大きくザワつく。俺も全知全能は知っているがラグエルと言うやつは聞いたことない。恐らく新たな全知全能なのだろう。昔の全知全能は俺が殺しちまったからな……。
ラグエルはザワつきも無視し話を続けている。)
「今日はとある報告があってここまで来た。皆は奴を知らない者などおらぬだろう。最低最悪の管理者(式破支配)を……。単刀直入に言う今日奴はこの日に降り立った!!今、この世界に!!奴は1度この世界を終わらせた最悪の男……!!」
( 俺は大きな冷や汗をかいた。なぜ俺の転生がバレたのか、それに……何故俺のしでかした事も知っているんだ。
この放送はもう聞かなくていい。聞かなくても分かる。今俺は……命を狙われている!!!
すぐさま1度身を隠そうと俺は後ろを向いた。その僅かな時間に、低身長の可愛らしい女性が俺の間合いに入り込んでいたのだ。彼女はその勢いのまま右の拳を俺の後頭部目掛けて振り下ろす。
俺はすぐに反応し右腕で受け止めようとする。だが、力がまだ戻りきってはいない。俺は女の子に威力は相殺したが大きく後方へと飛ばされてしまう。街を突き抜け砂漠のような場所にまで吹き飛ばされた。俺はすぐに受け身を取り前方を確認した時、彼女はまた俺の後ろを取っていた。)
「(こいつ…速い!!)」
「死になさい!!式破支配ーッ!」
( この女、殺意が篭っている。俺は追撃を咄嗟にガードしすぐに距離を置く。
お互い睨み合いながら俺から口を開く。)
「何の真似だよ。君に何かした記憶もないんだけど」
「うっさい!こんな平和な世界に式破!貴方みたいな人が居たら迷惑なのよ!」
( 何かしたかと問い掛けても答えになってない返答ばかり、だが俺は見逃さなかった。彼女の中には殺気ともう1つ、"抵抗"が感じられる。俺はストレイターに彼女の状況を見てもらうことにした。)
「干渉をした結果、彼女には高レベルの洗脳が掛けられている事が分かりました。ですが彼女は何らかの力でそれを抵抗しているのです」
「なるほどね……じゃあ対処法はある訳かな?」
「勿論」
( 少し手荒くなってしまうが、抵抗があるなら助ける一択。さて、この世界で初めての人助けやってみるか。)
「何もしないならこっちから行くわよ!!」
( 彼女は痺れを切らし自ら攻撃を仕掛けてきた。炎の弾幕が俺を襲う。俺はそれをいとも容易く彼女の間合いを取るかのように距離を詰めつつ全て避けて行く。そして、薄らと見える胸元にある黒いモヤ。あれが洗脳の根本だろう。場所が分かればもう容易い。)
「手荒くなるが、助ける為だ我慢してくれ」
「何を言ってるのか分からないけどここまで来たら私の勝ちよ!!獄炎弾!!!」
( 彼女は手の平から赤黒く燃え盛る炎の玉を即座に至近距離で解き放つ。
俺もここらで少し力を解放させる。その瞬間、俺に炎の玉が命中し俺全体を炎が飲み込む。誰もが負けを確信するその時、俺は炎の中から手を伸ばし彼女の胸元に触れる。
「あらゆるものを支配下に置く」彼の任意で発動できるちょっとした特性だ。名の通り支配下に置くだけではなくそれを支配し操り無力化したりなども可能である。
今もただ単に炎を支配下に置き炎を効かなくしただけだ。彼女は焦った顔をしていた。俺に触れられたのだやられると思っている頃であろう。 )
「少しおやすみだ」
「削除」
( 削除、触れた者の何かを1個だけ削除する消滅系魔法。いちいち触れなければ行けないので使い道はなかったが、これのためと言わんばかりの魔法だなこりゃ。
俺は洗脳の根本を削除し洗脳を強制的に解く。その衝撃に耐えれず彼女は気絶してしまった。とりあえず、安全な所に運ぶ事にしよう。
俺は彼女をお姫様抱っこし安全な場所を探し始めた。)
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( 俺はあの後、ちょっとした宿を見つけたので受付人との会話をめっちゃ頑張ってくぐり抜け少し広い部屋へと駆け込んだ。
彼女はベットで寝かせている。)
「(にしても、結構高レベルの洗脳だったな……あんなことが出来る奴……)」
( 俺はソファに座り考え事をしている最中、彼女は「ん〜」と言う掠れた可愛らしい声で目を擦りながら起き上がってきた。俺はすぐさまそちらを見ると彼女も寝ぼけてはいたがこちらを見てきた。数十秒の沈黙の後、俺がゆっくり近寄る。)
「おっ!起きたか」
「え、えーっと……?もしかしてだけど貴方、式破支配…様?」
( 軽い笑みで声を掛けに行ったつもりが彼女を混乱させてしまった。と思いきや、本物?と言わんばかりな雰囲気で俺の名前を呼んでいた。しかも様付きで俺は思わず笑ってしまった。)
「パチパチ~!よくわかったね!君!」
「ほんとなの?!良かった……」
( 俺が彼女をからかう理由がないのでストレートに本物と言い切った。するの彼女は俺の事を殺そうとしてたとは思えないなんとも可愛い笑顔で俺を見つめ安心したような雰囲気を出した。)
「さっきまで殺そうとしてきた癖によ。いや覚えてないのかな?」
「あと様付けじゃなくてもいいよ。君が唯一の洗脳から逃れた人でもあるし」
( 彼女は何も分からなそうな顔でこちらを見つめてきたのでさっきの出来事を一から話してあげた。話が終わった後凄い反省しているのかずっと謝っていたのである。)
「ごめんなさいごめんなさい!!!覚えてるのは私、学院の生徒でね。呼び出しをされた事までしかないの」
「謝りすぎだよ。というより学院って何?」
「ストゥレイター学院って言って、貴方の歴史を勉強したり魔法とか体術とか色んな勉強ができる学院のことよ」
( ストゥレイターって……まんまじゃないか。でも、行く価値は有りそうだな。宿主に俺の存在がバレるのも時間の問題だし早めにした方が良さそうだ。)
「君!名前はなんて言うの?」
「あっ、私は色味色夏」
「色夏ね!早速なんだけどその学院に案内してもらっても良いかな?」
「分かったわ!着いてきて!」
( この子、結構素直だな。俺だからってのもありそうだけど。俺は言われるがままに色夏について行く。
そして、辿り着いたのは1番最初に見たあのでかい建築物だ。俺の予想は当たってたらしい。)
「ここよ。式破様……じゃなくて式破」
「案内ありがとう。様付けしなくていいって言ったのも守れてて偉いじゃん」
「うるさい!早く行くわよ!」
( 彼女は不貞腐れた顔をしながら学院の方へ歩いていく。俺はただ単に彼女にニコニコした顔でついていくだけ。その前に軽くフードでも被っておこうかな身バレ防止~。俺はフードを深く被り学院の中に足を踏み入れた。
ストゥレイター学院に潜入開始──!)




