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日々  作者: 大槻凪
3/4

春光

3話目投稿しました。

今日はデートの日。私は待ち合わせ場所に先に着いたので携帯のインカメラで自分の髪の毛を見直す。一応天気予報では曇りであったのだが、予報は外れてポカポカのいいデート日和になった。春先ということもあって少し薄着でも過ごすことができそうな気温だ。上に羽織っていたカーディガンを脱ぎ、綺麗に畳んだあと腕にかけた。少し待っていると見慣れた髪型の男性がほんのり駆け足で寄ってきた。


「沙羅ちゃんごめん、待った?」


「ううん、私もさっき着いたところだよ」


「そっか、待たせちゃったかと」


そう言いつつ、少し申し訳なさそうにする彼は朝日くん。私の彼氏。くしゃっと笑う人で、笑った時の目尻に寄るシワさえ愛おしく思える。彼とはもう3年の付き合いになる。私にはもったいないくらいいい人。側にいると満たされて、幸せだと思える。私の大好きな人。好きという漠然とした態度だけではなく、「好き」や「可愛い」などの言葉を隠さず伝えてくれる。そこが彼の好きなところ。怒鳴り合いの喧嘩なんてしたことがない。私の機嫌が悪いときは、悪くなくてもいつも彼が折れて謝ってくれる。私はそれに甘えてしまっているけどいい関係が築けていると思う。


「今日の水族館楽しみだね」


「うん。でもなんで水族館にしたの?せっかく天気もいいのに」


「え、前言ったじゃん!最近改装されて新コーナーができたから見たいって!」


「あ、そうだった。てっきり魚を食べてるときに思いついたのかと」


「沙羅ちゃんは僕のことなんだと思ってる?」


「食魚族」


「普通の人間!魚は沙羅ちゃんも食べるでしょ!」


「いいや?私は魚なんて食べないけど?」


「昨日食べてたでしょ」


なんて魚の話で盛り上がりながら水族館に向かう。魚を食べる話をしながら魚を見に行くなんてサイコパスだと我ながら思う。でもこういう少しおかしいようなノリのいいような、なんてところが好きだって言われたのを覚えている。なら私も隠さず彼にぶつけてやろうじゃないかと思っているし、彼のこの性格のおかげで、素でいられるというのはこういうことなんだと感じられる。でも私は直接好きだとか言うのは照れくさい。そういった意味ではまだ素直になりきれていないのかもしれない。だけどたまに私が勇気を出して想いを伝えるから彼も喜んでくれるのだ。まあ、毎日伝えても喜んでくれそうではあるのだが。伝えられていないから嫌な思いをさせているんじゃないかという私の気持ちを相談した場合、彼は照れくさそうに、嬉しそうに笑って私に心配しなくていいよと言ってくれるのだろう。彼らしいと言えば彼らしい。いつか詐欺にでも引っかかってしまうのではないかと思うほどに私のことを疑わずに信じてくれるのは嬉しいのだが、心配も多い。そこは私がしっかりせねばと思う。

程なくして目的地に到着した。自動ドアをくぐって、電子チケットの購入画面を表示したスマホを入り口の係員に見せる。春休みの時期ということもあり、少し値上がりしていた。そんなこともあるのだなと思った。そんな夜行バスや新幹線じゃあるまいし。需要と供給によって価格変動するものだっけ水族館って。

中高生には少し高い値段であるはずなのに、新コーナーの設置されたことによる人気で学生がとても多い。家族や恋人、友人といった様々な団体が水族館に来ていた。中学生から大学生のカップルが非常に多く、中高学生のカップルはまだまだ初々しくて微笑ましく思える。家族で来ている人たちを見ると、私も朝日くんとの将来を考えてしまう。あたたかい家庭を持ちたい、というよりは持てそうだと思える。朝日くんとの間に子供ができても、きっといいパパになってくれるというビジョンが見える。これからを楽しみにしておこう。

水族館では正直いろんな魚が混ざって泳いでいるなーくらいの感想しか出なかった。実は私は水族館という場所があまり好きではないのだ。魚の種類が分かるようになれば興味も出るのだろうが、あいにく私は魚は食べる専門なのだ。博士でも専門家でもなんでもないただの可愛い一般人。愛嬌だけなら人一倍。愛でてくれとでも言おう。

そんな私でも、ジンベエザメを見たときは少し心が躍った。小さい頃見たきりで忘れていた、あの圧倒されるような巨躯が優雅に泳いでいる神秘。これぞ水族館の醍醐味だとか言ったなら、興味ないのにそんなこと言うなとか言われたらお手上げだけど、水族館なんてジンベエかシャチかイルカくらいしか目玉になりそうなやついないだろ!と反論できそうじゃないか?

私の愚痴はさておき、ジンベエザメが見れる場所は新しく設置されたコーナーらしく、360度ガラスで、どこからでも水槽の中が見れるもので、だからこその感動があった。そのあとはイルカショーを見たが、やはり目玉になるのはジンベエかシャチかイルカでしかなかったという残念さがショーの終わりに残ってしまった。しかし、水族館自体が楽しくなかったわけではない。魚に詳しくないから少し見るのが退屈だった私と違って、朝日くんは全部楽しそうに、少年のような目で魚を追っていた。サメのお触り体験にも積極的に参加していて、子供みたいというより子供だった。そんな朝日くんを見るのが楽しかったから結果オーライ。


「沙羅ちゃんごめん、お待たせ」


精神年齢が大人に戻って、そう言いながら駆け寄ってくる姿はギャップもあって笑ってしまうくらいには楽しかったよと帰り際に笑いながら伝えたら、彼は照れくさそうに笑ってくれた。

読んでいただきありがとうございます。

引き続き更新してまいります。

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