郷愁
2話目投稿しました。
彼と初めて出会ったのは中学の頃で、1年生で同じクラスだったことがきっかけで知り合った。名前もた行とな行で出席番号が近かったことを覚えている。ただ、最初に何を話したかはもう覚えていない。それでも学校行事を通して仲良くなっていった。そこから付き合うまでにそれほど時間はかからなかった。
私たちが中学2年生になった最初の頃、4月の本当に最初に彼から告白された。付き合ってほしいと。私は彼より仲のいい男子が存在してなかったので、今で言うところの若気の至りというやつで、付き合うことに承諾した。今だから言えるが、当時は彼のことを恋愛対象として見てなかったが、思春期の女の子なんて彼氏が欲しいとぼやきまくっているお年頃なのだ。仕方がない。
こうして私は人生で初めて彼氏という存在ができた。付き合ってからというもの、一緒にいる時間が必然的に多くなった。一緒のクラスであったことはもちろん、下校も一緒の時間にするようになった。休みの日にはデートを、月に一回は必ずしていた。中学生のデートなのだから大人と違ってそう遠くは行けず、遊ぶ場所も限られている。しかし、デートの場所や内容がマンネリ化することはなかった。同じデート場所でも毎回違う楽しさがあった。この楽しさを感じることができるようになってから私は彼のことを好きになっていったように思える。我ながらなんてチョロいのだろうか。
もちろん楽しかった思い出ばかりではない。学生というのはまだ心身ともに未熟であるがゆえ、思い通りに行かないことが納得できないということで何度も衝突もした。私たちは子供だったから。約束してたのに一緒に帰れないだとか、他の子と仲良くしてただとか、今となってはどうでもいいようなことで喧嘩した。だけど1番鮮明に覚えていることが中学3年生の頃にあった。彼と初めてのキスをした。それだけは忘れようとしても忘れられなかった。きっと幸せな時間だったから。修学旅行では大阪に行き、道頓堀でグリコの看板のポーズを一緒にしてみたり、お好み焼きを食べてみたり、中学の青春の締めくくりに相応しい思い出が完成したと思う。もちろん受験勉強を一緒にしたことも私の大切な思い出だ。同じ高校へは残念ながら行けなかったということもなく、無事に合格した。残す卒業式は特に泣くこともなく、私と最高の青春を送ってくれた友人たちと写真を撮り、彼とのツーショットも撮った。中学生活は後悔はない。
高校生活も中学生の頃のように過ごしていたが、少しだけ後悔がある。それは高校2年生になって進路の話をしていたときに彼と離れることになることが判明し少しひどい言葉を言ってしまったために、少しだけ、ほんの少しだけ私たちの間に溝ができてしまった気がすることだ。彼は地元に残ることになり、私は出ていくことにした。その当時が1番喧嘩したように思う。私の方が子供だったということもあり、なんでついてきてくれないのかという駄々をこねた記憶がある。お互いのやりたいことのためなら仕方のないことなのに。でも。私の言い分もわかってほしかった。それほど彼のことが好きだった。
別に彼は俗に言う、イケメンというわけでもなければ、特別優しいわけでもない。それでも妙に気が合うところがあった。彼の隠さず正直に全て話してくれるところが私の性格にピタッとハマったのだと思う。居心地が良かった。誰よりも私が彼のことを知っていた。そんな自信を持つ私が好きで、彼のことを好きな私のことが好きだった。だからこそ高校最後の日に別れを告げなければならなかった。離ればなれになっても付き合い続けることはできそうにないからだ。もちろんできる人もいるのだろうが、少なくとも私にはできない。別れることに抵抗がないといえば嘘になる。しかし、私は私を嫌いになりたくない。嫌いになれない。ちゃんと物事にはケジメをつけたい。正しくあろうとする私が好きだから。
こんな自分勝手な彼女でごめんね、と伝えた時に涙がこぼれた。それで彼とはもう関わりがなくなると思っていたが、私の旅立ちの日に空港で見送りたい、と言ってくれた。正直者の彼ならほんとは私のことを引き止めたかっただろうに、口を噤んだ。それが分かって泣きたくなった。
今はもう、そんな思い出すらも懐かしく、愛おしい。彼のことを忘れたわけじゃない。でも、頭の片隅にあるだけで未練はないと言い切れる。私は彼との学生時代の大恋愛の思い出が好きなのだ。彼への恋心はもうない。きっと。
読んで頂きありがとうございます。
引き続き更新していきますのでよろしくお願いします。