追憶
4作品目投稿しました。
久々の投稿でしたが、楽しく書きました。
ぜひ読んでいただけると嬉しいです。
昔を振り返ることが好きだった。振り返れば愛おしい日々ばかりを過ごしてきたから。でも、後悔もある。忘れられない日々。置いてけぼりにしてきた日々。過ぎ去った日々。その日々の上に私は立っている。
どれだけ忙しくしていても忘れられない、いつも頭の隅にへばりついて離れないこの記憶は一体なんなのであろうか。この記憶を早く忘れてしまわなければならないのに。
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いつまでも止まってはいられない。また歩き出さなければならない。そうやって、あなたと過ごした時間は思い出の中で眠りにつく。忘れるための眠りではない。いつか思い出せるようにしまっておくための眠り。
「向こうでも頑張れ、応援してる」
その一言だけ言って、彼は何も言わなかった。この別れが今生の別れであったことは2人とも分かっていたから他の言葉を口には出さなかった。
もちろん好きであったし、悲しい気持ちはあったが、自分のやりたいことは東京にしかなく、彼も私に前を向かせることだけしか言わなかった。彼は私が後悔しないように優しさは見せない。
「ありがとう、またね」
そう言って、私はあなたに背を向けて歩き出した。東京行きの空港まで見送ってもらい、今、彼に別れを告げた。そこに涙はなかった。未練がないといえばそれは嘘になる。しかし、中学二年生から付き合っていた彼に遠回しに別れを切り出されたとき、悲しいというより、これで終わりか、と妙に落ち着いていた。私が東京でも上手くやっていけるように背中を押してくれた彼。4年間付き合った彼。ずっと一緒にいると思ってた彼。喧嘩もした。笑い合った。将来の話もした。その彼に別れを告げ、東京に私は旅立った。そんな高校最後の冬の終わり。
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その後、次第に東京の生活にも慣れてきて、仕事も順調だった。新しい彼氏もできた。色んなところに行った。水族館、動物園、ショッピングにも。新しい彼氏との付き合いはとても楽しかった。
しかし、確かに好きな気持ちはなくなっていったのだが。7年経った今でもこんな鮮明に覚えているのだ。鮮明に覚えていると言っても、ふとした瞬間に思い出すというくらいである。それくらいではあるものの、それは紛れもない事実であり、私にとって一番の謎である。
今、目の前にいる私の彼氏はとてもいい人で、私よりも大人で、本当に優しくしてくれる人。私の大好きな人。
それなのに。なんで、今更。
読んでいただきありがとうございました。
ぼちぼち投稿していこうと思いますので、よろしくお願いします。