プロローグ
「こっちくんな!」
銃口から青いエネルギー弾のようなものが、グラブと名乗る男に向かって飛んでいく。
弾はグラブの目の前で、見えない壁に当たったかのように霧散した。
「な、なんで」
アキラは次の弾を撃つ。
だがそれもグラブの目前で霧散する。
「見えないバリアでも張ってるのか!?」
「グルルル……」
アキラの疑問に誰も答えてくれはしない。
それどころか反応は森から出てくる狼魔獣の群れだった。
「げ! またこいつらかよ……!」
「そのマドウルフたちはお前ヲ食い殺ス責務がアルようダ」
魔獣は唸り声をあげながらアキラを取り囲む。
「あいつも魔獣使いか、ヤバい」
魔獣はゆっくりとアキラへの距離を詰める。
「ヤバいヤバいヤバい」
魔獣使い本体を撃退しようにも見えない壁に弾かれる。
魔獣を撃退しようにも数が多くて手に負えない。
アキラは死がすぐそこにあることを総身で感じる。
「なあ、俺は死んでもいいからこの子たちは見逃してやってくれよ」
「駄目だナ」
精一杯のカッコつけも無駄に終わった。
「俺の異世界冒険譚はここで終わりか。あっけないな。ごめん、メルザ」
アキラは銃を頭の横に持っていく。
「魔獣に嚙み殺されるくらいなら、自刃してやる……!」
銃口をこめかみにつけ、引き金に指をかける。
「バイバイ、人生」
引き金を引く。
アキラの目の前は真っ暗になった。