3.The Good Shepherd 2-良き羊飼いとの対話-
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1〜4話まで多少変更しましたが、内容はほとんど変わっていません。2009.05.07 GUOREN.
「君は、結構笑い上戸だったんだな。ウィル」
アレックスが去った後のCIA長官室に、突然声が響く。
机の上にある、PC画面からだ。
どこか非難めいた声色だった。
実は、アレックスがこの部屋に来る前に、ホワイトハウスから一本の通信があった。
CIA長官ウィリアム=チラージンはその通信を切断せずに、アレックスとの会話をそのまま相手に聞かせていたのだ。
「す、すみません。あんな表情なんて、めったに見られないものですから。ああ、拗ねないで下さいよ?閣下。あの顔を見せて差し上げたかったのは山々ですが、そんな事をすればアレックスのやつ、怒るじゃないですか。これ以上嫌われるのは御免ですからねぇ」
「ちっ」
「今舌打ちしました?」
「気のせいだ」
画面の相手は少し拗ねているようだ。
いい歳したおっさんの拗ねた顔など、見ていて気持ちいいものではない。
ウィリアムは早々に話題を変えた。
「それよりキース、今の話は聞こえていたでしょう?」
パソコン画面の向こう側にいるキースと呼ばれた人物――大統領に向かって、ウィリアムは軽く肩をすくめる。
「ああ、聞こえていた。まぁ、アレックスの事だ、滞りなくやってくれたとは思うが」
大統領は、アレックスの事を信用していた。
それはウィリアムにとっても同じである。
「ええ、そのあたりは報告書を見る限り、問題はないでしょう。問題といえばあいつの休暇ぐらいじゃないですか?そろそろ、休ませないと」
「ああ、確かに働きすぎだな。取り敢えず、そのアレックスの報告書を持って、後ほどこちらに来てくれないか?話したい事もある」
大統領の視線が、ウィリアムの手に持っていた報告書に移る。
「これをまとめ終わったらすぐにでも」
「ああ、なるべく早く頼む。それにしても、君があんなに緊張した顔をしたのは久々だったな。面白いものを見せてもらったよ。余ほど怖い顔をしてたんだな、アレックスのやつ」
クックッと笑いながら、大統領は画面を切った。
一瞬暗くなったパソコンの画面には、顔をひきつらせたウィリアムの顔が反射していた。
きっとこのネタで当分遊ばれるんだろうなと、ウィリアムは思った。
ウィリアムの手が知らず知らず髪にいくのは、仕方のない事だった。
前回の続きです。
中途半端の長さでごめんなさい。