↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
予知夢から始まる英雄譚  作者: 鴉山 九郎
【5章 飛翔を妨げるは強欲の重み】
22/44

2.天使が告げる白昼夢

「て、天使様が、こんな寂れた田舎に、なんの御用でいらしたのです」

「寂れた田舎とは、謙遜なされるな。のどかでいい場所ではないか。住んでいるのも、善良そうな人ばかりで」


 嘘——いや、世辞を言うのにも慣れてきた。

 上に立つ者は、本音をさらけ出すのもいけないそうだ。アラベラがそう言っていた。

 任務の関係で、もう十箇所以上の村を回ってきたが、田畑で作る物と家の造りが少々違うだけで、どこも似たり寄ったりである。この土地では、大麦と茅葺き屋根が連なっている。

 こんなところで一生を過ごす人生を想像すると、ぞっとする。きっと、退屈で死にたくなるだろう。

 それを当たり前だと思い込んでいる人間達は、憐れだ。


「こんな狭い世界で、終わっていいような人達だとは思えない」

「あ、はは、は、天使様もお世辞を言うのですなあ」


 なかなか物事の本質を捉えているではないか。

 初老の村長は広い額の汗を拭いながら、私の応対をする。私の後ろにはいつも通り、五人の部下が居並んでいる。村の広場に降り立つ前に、できるだけ柔らかい表情をしておけ、と言った。そのはずだが、人間がこれだけ恐縮している様子を見るに、仏頂面でもさらしているのか。

 天使様、と言いながら、まるで悪魔でも見るような目ではないか。

 これまで善良に生きてきました。だから、これからも、何事もなく、平穏に、厄介事はここではないどこかで起こってください。そんな慎ましやかな願いをひしひしと感じる。


「世辞ではないとも。御前達こそ、私が探し求めていた人材だ」

「探し求めていた……とは?」

「心の清らかな者、とでも言っておこうか」


 村長が震えだした。なぜだ。まさか、私の言い方が、生贄を要求しているようにでも聞こえるのか。あながち間違っていないから困る。

 村の人間達は遠巻きに、物陰から私達のことを窺っていた。好奇心旺盛なのは若者が多い。大人は私達の姿を見るなり、家に引きこもってしまった。


「御前達、この世界を治める気はないか」

「……は?」

「私が、御前達を王にしてやる。——ああ、いや、王は一人しかなれないが、そうだな。今よりずっと、偉くなれる。今よりずっと良い暮らしが、手に入る」

「わ、わたくし共は、そんな大それたこと……」


 やはり、悪魔契約でも迫られているかのような焦りようだ。限りなく真実に近いのが、悩みの種である。


「ここは良い場所だ。だが、暮らしも豊かとは限らない。御前達が汗水垂らして育てた作物は、どこへ行く? その大半は、御前達の腹に入らない。そうであろう? 領主に吸い取られる仕組みだものな」

「そのようには思っておりません! 本当に、そうは思っていないのです……。わたくし共は、この土地に住まわせてもらっておりますので……」


 今一瞬、素の表情が出てしまったかもしれない。

 本気で、なぜ御前達がへりくだる必要がある、と励ましたい気持ちに駆られる。あ、いや、言えばいいのか。この場合、本音が最適な気がする。


「ほう。ここが誰の土地だと?」

「りょ、領主様です」

「違うな。田畑を耕し、地に根を張るのは御前達だ。ここは御前達の土地であるべきなのだ。腹ばかり肥えていく豚領主ではない」


 村長が目を丸くする。

 私がこの地の獣人領主を罵倒したように聞こえたのだろうか。領主は本当に豚の獣人なのだから、私に他意はない。


「し、しかし、他の土地では、人間は奴隷にされるのです。それを、領主様は慈悲深く、こうして普通の暮らしをする権利を与えてくれましたから……」


 普通の暮らしをする権利だと。憐憫を通り越して、憤りすら感じる。普通の暮らしとは何かも知らないで、よく言えたものだ。私だったら、もっと上手く治められる。アラベラだったら、私以上に上手く治める。有翼人が天下を治めたら——

 ……いや、今は確約された未来のことはどうでもいいか。

 彼らは農奴というやつである。なまじ自由があるから勘違いしているが、私から言わせれば、立派な奴隷だ。

 村から逃げ出そうとしたら、殺される。それか、捕まってどこかよその領地へ、今度は本物の鎖に繋がれ、奴隷として出荷されるかだ。


「なんとも哀れで、健気な民だ! 己の内の不平不満を飼いならし、現状に満足しようとは。天使の導きも、悪魔の囁きと切り捨てようとする!」

「あ、あ、あの、気分を害されたのであれば謝ります! どうか——」

「いや、結構。私はむしろ、立派な心掛けだと感心しているよ。呆れるほどにな! だが、私の期待に応えてくれる人間ではなかったようだ。実に残念だ!」


 部下に合図し、立ち去る準備をさせる。五人が、畳んでいた翼を広げる。


「私達はまた、我ら『浮遊の民』を救済する者を探す旅に戻るしかあるまい」


 最後に、私が翼を広げた。その瞬間、これまで物陰に隠れていた若者達が、わっと飛び出してきた。


「待って! 待ってくれ! あんたらの話、もっと聞かせてくれ!」

「そうだよ、天使様相手に茶の一つも出さない非礼な村長のことなんか、ほっといてさ。あたしらに話してよ」

「お、おまえたち、何を言うんだ。さっさと行かせてしまえ、こんな面倒事——あっ」

「ほらみな。この老いぼれジジイには、天使様への敬意なんか、これっぽっちもないのさ」


 翼を折りたたむと、若者達は目を輝かせ、村長は苦虫を噛み潰したような顔になった。

 いつだって、若者は未来を掴み取るものである。それを握り潰そうとするのも、老いた者の常だ。

 私とアラベラの結婚も、長老共になかなか認められなかった。もちろん、アラベラに問題があるわけはない。私の出自がどうとか、愛の前には無粋なそういう話である。むしゃくしゃしたので、戦果をあちこちで挙げまくったら、黙った。アラベラには褒められた。愛の勝利だ。

 もっとも、有翼人の“長老”は役職名なので、必ずしも老人であるとは限らない。


「このクソッタレな生活をどうにかできるってんなら、大歓迎だしよ」

「やめろやめろ! そんなことを言うな! どこで誰が聞いているか分からないというのに!」

「爺さんはうるせぇなあ。あんたがこの暮らしに大満足してようが、俺たちには不満しかねぇんだよ」

「お、おまえたちは、獣人の恐ろしさを知らないから、そんなことを言えるんだ。あれに逆らうなんて、とんでもない! 一人でも歯向かったら、村全体の責任になる。頼むから、何もするな! 何も言うな!」


 これほどまでに恐れているからには、それなりの理由があるのだろう。逆らった人間の末路でも目にしているのかもしれない。たとえば、獣人が素手で人間を八つ裂きにするところとか。人間を踊り食いしているところとか。

 実際にやるかどうかは知らない。だが、獣人ならやりそうである。


「……どうやら、私の方も気が急いていたようだ。すまない。御前の気持ちも考えず」

「そう思うのなら、早々に立ち去ってほしいものですな」

「そうするのは簡単だ。だが、本当にそれでよいのかな? 何も恐れる必要のない、真の意味で自由な生活をしたいとは思わないか? 御前が獣人を恐れる気持ちはよく分かったとも。だが、恐怖の対象を除けば、御前は今よりずっと心穏やかに暮らせるはずだ」


 後退してしまった前髪は戻ってこないが、それ以上の進行を止めることはできるかもしれない。保障はしないが。

 村長は額がてかてかと光るほどの脂汗を浮かべている。


「そ、そんなことは無理だ。あれに、どうやって」

「私達が助力してやると言っているのだ。御前達が、この抑圧された生活から抜け出すのを。……天使の加護では、物足りないかね?」

「こんな人間なんぞのために、なぜ、天使様が」


 村長の瞳が揺らぎだした。もう一押しだ。いにしえの威厳を存分に活用すべく、翼を目一杯に広げる。

 神託を告げる天使ぐらいには見えるだろう。


「すべての民は幸福を享受する権利がある。赤子は祝福されて生まれるべきだ。死は老いの結果であるべきだ。民に身分など必要あるまい。なぜなら、人は皆等しく尊いからである。そこに差があるべきではない」


 人間達はぽかんと口を開けて聞いている。


「今の大陸は不健康に過ぎる。誰にも望まれぬ赤子が生まれ、戦に赴く若者ばかりが死んでいく。戦に駆り出されずとも、民は戦の負担を強いられる。貧しい農村では口減らしに子供が売られ、それでも餓死者が出る。……こんなことは、あってはいけない」

「あ、ああ、そうだ。その通りだ」

「そういえば、隣村では子供が何人か売られたって……。この村もいつか——」

「今の大陸には、世を正す者が求められているのだ。ベスティニア皇国の貴族連中とは正反対の、清らかな者を! 御前達に不平等を強いた諸悪の根源はどこにいる? 答えは明白だな。そら、ここからでも見えるだろう。御前達を見下すよう建てられた、高い城が」


 腕を振って、領主の城を指し示す。ここらは農村ぐらいしかないので、多少遠くとも、城のような大きな建物はよく見えるのだ。

 人間達はつられるように城に顔を向けた。普段なら、うつむいて視界にも入れないようにする対象と、真正面から対峙する。次第に目が細められていき、やがて睨むようになる。


「あの城は、御前達の働きにより建てられ、御前達の働きにより維持されている。だというのに、御前達のものではない。可笑しな話ではないか」

「た、たしかに、変だ。本当なら、作物だって、全部私たちのもののはずだ」

「作物の代わりに金を置いていくなら、それは立派な商いだ。だが、奴らは税と称して奪い取っていく。街道の通行料と称して、金品を奪う盗賊と何が違う? あるいは、どうか恵んでください、と拝み倒されたなら、心優しい御前達は分け与えるかもしれない。しかし、奴らはそれもしない。御前達が作ったものは、自分達のものだと思っているからだ」


 人間達をぐるりと見渡す。こちらを見返す目は、どれも飢えた獣の如く据わり、熱に浮かされているようだった。


「農具の代わりに剣を持て。この不合理な状況を壊すために! 御前達から与えられた飼料をたらふく食べ、肥え太った豚など、敵ではあるまい」


 今度は、明確な侮蔑の念を込めて言う。人間の若者達は拳を振り上げて同意した。先ほどは狼狽えた村長ですら、小さく何度も頷いている。


「今立ち上がれば、俺たちは自由になれるのか?」

「なれるとも。正しい者が、正しく在る姿になるだけだ」

「か、勝てるのか……? 本当に?」

「天は正しく在る者を見捨てない。近隣の農村にも呼びかければ、城を制圧するぐらいのことはできる」


 私の言葉一つで、彼らは安心を手に入れる。勝利を確約されたと、安堵する。

 まったく、人間がいまだに天使という幻想を抱いていたことには、感謝を述べたいぐらいだ。


「え、偉くなれるとも、言ってたよな。あれも、本当か」

「御前達の働き次第だ。望むのなら、私は御前を王にだってしてやるぞ」


 咳き込むように聞いてきた若者の肩に手を添える。声を潜め、あえて囁くように言ってやると、人間はごくりと唾を飲み込んだ。

 一拍置いて、息を詰めていた人間達が騒ぎ出す。


「お、俺、王様になる!」

「はっ、てめぇみたいなヒョロガリがなれるかよ。俺様の方がケンカは強ぇぜ! 王様になるとしたら、この俺様だな!」

「馬鹿がなれるとは思えないな」

「んだと、コノヤロー!」

「ねぇ、どっちでもいいけどさあ。王様になった方が、あたいのことを嫁に貰っとくれよ」


 御前達の中で王になれる器を持つ者なんて、一人もいやしない。将軍だって怪しいだろう。頭を使わない力自慢は、すぐに討ち死にして上り詰めることはない。売女のように浅ましい言葉遣いをする王の后など、もってのほかだ。

 はしゃぐ人間達を前に、冷めた目をしまいと努力する。

 しかし、羨ましいものである。夢物語で盛り上がれるほどの、子供のような無邪気さは。頭が空っぽとは言わないが、たぶん畑をいっぱいにするほどの花が咲いている。傀儡の王としては申し分ない。

 盛り上がる人間達の中に一人、ずっと考え込んでいる少女がいた。彼女は私と目が合うと、首を傾げた。


「でも、天使様。さっき、差はよくないって、おっしゃっていたでしょう? 王様なんて、いていいのかしら」


 あどけなさを残した、利口そうな顔をした少女だった。経験を積み、年を経れば、いずれはアラベラのような——というのは言い過ぎにしても、賢い指導者になれるかもしれない。

 しかし、いかんせん、少女には少女らしく天使を信じる純真さがあった。いかに賢くとも、私の思惑を読み取ることはできない。つまり、彼女が賢い指導者として花開く未来はないということである。実に残念だ。


「いいところに気付くお嬢さんだ。そこで騒いでいる大人にも見習ってほしいほどの」


 私の出した声が冷えていることに気付き、若者達は身を強張らせる。


「玉座で踏ん反り返るのが王の仕事ではないぞ。御前達、そのことを分かっているか。偉くなる、というのはそれだけ責任が伴うということだ。自分以外の、大勢の生活を背負うということだ」


 これは私の本心である。ついでに添えると、貴族の仕事はきらきら輝くことではないはずだ。


「王とは、民をまとめ、民の幸福に責任を持つ者のことを言う。国の隅々、末端の民にまで、幸を行き渡らせるのが王の仕事である。ただ威張り散らすのでは、今の堕落した貴族共と変わらない」


 若者達をぐるりと睨むと、彼らは居心地悪そうに目を逸らした。


「勝手振る舞う王など無用。暴君を生み出すくらいなら、今ここで私が切り捨てよう」


 さりげなく双剣の柄に手を置けば、男達は青い顔で後ずさった。

 私が真に天よりの使者であるならば、栄光をもたらす存在であると同時に、断罪にも躊躇しない裁定者である。そのことにようやく気付いたのだ。


「わたしたちの中に、そんなことをする人はいないわ。ね、そうでしょう?」

「……ああ、もちろんだ。自分が嫌ってるもんに、わざわざなる奴はいねぇ」

「そうだよな……。天使様に言わせれば、あいつらの在り方は間違っているんだもんな」


 少女が問いかけると、男達は神妙な顔つきで頷いた。

 だが、少女はまだ小首を傾げている。私に見られていることに気が付くと、少女ははにかむように唇を噛んだ。

 有翼人には、男らしい、女らしい、といった概念のない中性的な顔立ちをした者が多い。ふとした折に、男でも女性の柔和さを醸し出せるし、女でも男性の精悍さを演出することができる。私が微笑めば、少女はそこに、母に抱くのと同じ種類の安心感を見出す。

 狙い通り、少女の緊張は少しほぐれたようだった。


「天使様、もう一つだけ。聞いてもよろしいでしょうか」

「何かね?」

「なぜ、わたしたちにお願いするの? わたしたちを救ってくださるのなら、天使様が王様になってもいいのに。なぜ、そうしないの?」


 思わず、笑みがこぼれた。作った微笑ではない、本物だ。

 すべての民が、この子のようにあればいいのに。賢く、健気で、庇護のしがいがある。自らの翼の内に収めてしまいたい衝動に駆られる。あるいは、これが母性というやつかもしれない。


「私達が『浮遊の民』と呼ばれているのは知っているかな?」


 聞けば、少女は頬をかすかに染めて頷く。


「私達もかつては国を持っていた。だが、それは王宮と神殿の腐敗により、滅んだ。残された者は地上に降り、流浪の生活をするほかなくなった。その時に決めたのだよ。私達は国を持たない、とね」


 もっとも、それは条件付きの宣言なのだが。そこまで教える必要はあるまい。


「だが、戦乱に明け暮れる世では、羽を休める地も見つからない。何より、民の苦痛や怨嗟の声を聞くのは耐え難い。私達はこの戦乱を、どうにかして終わらせたいのだよ。戦うだけなら私達にもできるが、国を持たぬと決めた以上、その後のことが気掛かりだ。故に、乱世の後の世を治めてくれる者を探していたのだ。私達に、安息の地を約束してくれる者達を」

「それがどうして、わたしたちなの?」

「虐げられる側の痛みを知っているからだ。痛みを知る者は、他者にそれを強いることはないだろう? ——私は、ただで御前達を王にするわけではない。御前達の治世のもと、争いのない世が実現されることを望み、玉座へと導くのだ」


 私には役者の才能があるのではないか。滑らかに口から出てくる作り話を、自分までもが信じてしまいそうである。

 大筋は真実と変わらない。ただ脚色が少しばかり増えてしまっただけ。

 若者達はもう、浮かれていなかった。天から幸運が降ってきたのではなく、天から使命を課されたのだ、という自覚が芽生えてきたようだ。


「約束します。俺達が、平和な世の中を実現するって。だから、力を貸してください」

「素晴らしい。私はとても心強い協力者を得られたようだ」


 底抜けのお人好しで、とても騙しやすい協力者を。もちろん、感謝はしている。

 差し出された男の手を、私は力強く握り返した。嘲笑も柔らかな笑みに見えてしまう、自分の甘いマスクに乾杯だ。

 だが、少女の期待に満ちた瞳で見上げられると、とっくの昔に仕舞い込んだと思った良心が痛んだ。

 気分を誤魔化すように、懐を探る。指先に触れた物を手の内に握り込んでから、膝をつき、少女と目線を合わせた。


「お近付きの印に。手をお出し」


 少女が素直に手のひらを上に向ける。そこに、懐から取り出した物を置いた。


「これは?」

「有翼人の技術と叡智の結晶だ。危険が近付くと、強く光り輝く」

「お星様みたい」


 金平糖のような形と大きさの結晶が、少女の手の上で、淡く光を放っていた。少女は落とさないよう気を付けながら、そっと転がす。


「かつて天に在った時、我らは星に手が届いたのだよ」


 私達はこうして、民に施しを与えながら生きてきた。

 千年帝国の遺物である技術や知識を教える見返りに、居住の場を提供させてきた。私達は同時に知恵も与えてしまうため、権力者にとっては小蝿のように煩わしい存在であったようだ。連中は、民に賢くなってほしくないのである。

 その地の権力者に煙たがられ、最後には追い出される。そんなことが何度繰り返されようと、私達は生き方を変えなかった。

 民を豊かにしている、という自負もあった。だが、それ以上に。失われてしまうことが恐ろしかった。

 帝国時代の技術や知識の大半は失われ、私達が継承しているのはほんの一握りに過ぎない。権力者に与えたところで、技術は独占され、知識は秘匿される。万民には行き渡らない。

 それは、有翼人の誇りが忘却の彼方に追いやられるのと同義なのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。