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64 狐、カマをかける

 男を乗せ走り出す馬車。

 馬を走らせながらエクシブは問う。


「岩窟の巨人所属の者か?」

「……そうだ」


 バレていることには気付いている様子の男にエクシブは特に返答することなく次の質問をする。


「岩窟王の命か?」


 少し間を空けて待つが、返答はない。

 無言の車内にため息をつくがエクシブは後ろを振り返ることはない。

 男はエクシブの後ろに座っている。縛られているわけでもないが、逃げる様子も無い。

 何故なら後ろには、ニヤニヤと男を見つめるココの姿があるからだ。


「いい加減、こたえろ」


 口を開かない男に再度ため息を吐くが、話さないのが唯一の抵抗と言わんばかりに口を噤み、その素振りすら見せない。


 先は急がねばならない。だが、憂いは残る。唯一の情報源は語らない。

 停車していた時間で、先の状況が悪化している可能性は高い。

 いや、寧ろ悪化していると判断するべきだろう。


 やはりクエストは……。


 エクシブは睨むように先を見据え馬の手綱を強く握る。

 そんなエクシブに、気軽に声をかける者。

 クフフと笑いココは言う。


「リンよ、クエストの疑いも晴れたのだからよ、肩の力を抜くのも主の仕事だがよ」


 その言葉に唖然とした様子で振り返る男二人に、尚も楽しそうに喉を振るわせるココ。

 そんな様子にエクシブではなく男のほうが食って掛かる。


「お、お前! 何を、いったい何を証拠に!?」


 焦るように叫ぶが、ココは変わらぬ様子で涼やかに言った。


「主の様子が、すべてを語っとるがよ」


 押し黙る男に、ココはクフフと笑い続ける。


「慌てすぎ、焦りすぎ、怯えすぎ。ふむ、師匠の言う『細かな行動は情報の山』とは言い得て妙だの」


 ココの言葉に鎌を掛けられたことに気付いた男は悔しげに歯軋りすると、ココを睨んで押し黙った。


 これ以上の言葉はない。


 まるで、そう言わんばかりの表情にココはクフフと笑い、背中で感じる二人の様子にエクシブはため息を一つ吐いて呟いた。


「岩窟王……、ディエゴのおやじ殿は帝国に弱みを握られた、か」


 ワイアットと合流した地で、微かに感じた別の部隊。逃げていく薄い気配は影師であると予測はしていた。微かに見覚えがある動き、たしか帝国つきの影師『暗部』と呼ばれる部隊があったはずだ。


 勿論、正確な情報ではないとあくまで状況とエクシブの感じたものだけを積み合わせただけだ。


 だが、それならば少し強引にはなるが辻褄はあってくる。

 止められない馬車。エクシブはその先を睨みつけ目的地に向かう。

 

 予想通りならば……。

 エクシブはココを一瞥すると、ココは相変わらず捕まえた男をからかいながらにやにやしている。しかし、こちらが見ていることにも気付いてはいるようで、何か言えばすぐにでも動いてくれるそぶりは見せている。

 エクシブは苦笑しつつ、頼れる相棒に感謝し、最悪の場合を想定しながらも、決意を固めた。


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