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56 傭兵は、気づく

 二人が出てきた頃には、グルーの馬車を含めた三番隊までが既に町を出ており

続いて四番隊と五番隊が出発を始めていた。

 残るは――。


「団長様は、ずいぶん余裕だの」


 腕を組み馬の横で待つココ。

 エクシブはふっ、と笑ってこたえた。


「うちの馬車には、忙しないのが嫌いな奴がいるからな」


 ココはクフフと笑い馬車に乗り込むと、エクシブも御者台に飛び乗り手綱を持ちジャンクに伝える。


「五番隊にキックスがいる、お前は単独で伝令を!」

「わ、わかった! なんて伝えれば?」


 エクシブはジャンクに内容を伝えると、颯爽と駈けていった。


 町を出ると鬱蒼とした森が口を開いて待っていた。エクシブが過去に通ってきたのは海沿いの街道であったため初めての行程である。目視で五番隊最後尾の馬車が見えている程度に距離を置き進むエクシブにココは問う。


「そんなに距離をおいて心配ないんかよ?」


 エクシブは視線を前の馬車から外さずにこたえる。


「先頭には山に慣れたクエストと経験豊富なグルー隊長がいる。二番と五番には人より敏感に反応が出来る影師も居る」


 五番には、確かキックスがいた。

 ココはそんなことを思い出す。ココから見てもキックスの察知能力と気配の消し方は尋常ならざるもの。本気で隠れられたら匂いすら追えず、微かな音のみでしか見つけることが出来なくなってしまう。

 ふむ、と声を漏らすココにエクシブは続ける。


「真ん中には猟兵のワイアットと遊撃が得意なあいつがいるからな。何かあればすぐにわかるだろう」


 急いで出発した割りに、特に何かを気にしている様子は無い。

 あまり口を出すのは違うと感じているのか、ふむ、と先程と同じように返すだけだった。


 木漏れ日は少なくまだ葉も多く生い茂る森、別段会話無く進んでいた馬車だが、ふとココが沈黙を破った。


「リハンの森もこんな感じだったの」


 かつて自らを縛り付けていた森。

 エクシブは視線だけを向けると、クフフと笑い続けた。


「今宵は満月……よもや制約を忘れたとは言わせぬぞ」

「んっ?」


 ココはエクシブの隣に座り交互に足振りながら、にやりと笑って言う。


「罪には罰。ぬしの死を以て償ってもらうぞ」


 聞き覚えのある台詞。

 気付いたエクシブは正面を見据えながら相方と同じように、にやりと笑って言う。


「本物だ!」


 自分から振っておきながらエクシブの言葉を聞いた途端に笑い転げるココ。

釣られて笑い出したエクシブにココは笑いすぎて出た涙に指をそっと添えてこたえた。


「クク、このたわけが」


 ココがこたえた瞬間だった。

 いつの間に入り込んでいたのか、音も無く二人に近づく影。手に持つ光るものが今まさにココを狙ったその刹那。


「うっ、えっ!?」


 すっ、とエクシブに腕を掴まれ困惑する侵入者。ココは言う。


「だから言ったがよ?」


 視線は鋭く、口角が細く釣りあがる。


「たわけ、との」


 エクシブはそのまま力づくで荷台から引っ張り出すと、馬車の外へと放り投げた。

 速度は遅くとも、そこから投げられては一溜りも無いだろう。エクシブは何事も無かったかのように馬車を進めて行く。

 ココはふう、とため息をついて口を開く。


「解ってはいても、やはり心臓には良くないの。しかしリン、ぬしもよく気付いたの」


 するとエクシブ笑って言う。


「うちの相棒は、無駄にオレを試さない」


 ココはくすぐったそうにクフフと笑い、そのまま正面を見据えると、ゆっくり真顔に戻して問う。


「さて、一番嫌な選択肢ばかり選ばされている気がするがよ?」


 ココの言葉にエクシブは前を向いたままこたえる。


「だが、確信を得られた」


 強く視線を見据えてゆっくりと続ける。


「このキャラバンは最初から狙われている!」






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