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53 狐と傭兵旅支度

 日の進みとは人の思い通りにはいかないもの。エクシブやココが慌ただしく旅の準備を終えたところで、既に出発の日となっていた。

 グルーの馬車隊が駐在しているラフェスト商会に朝一番で辿り着いた二人を出迎えたのはテランとカレナ。


「おはようございます。ココお姉様、エクシブさん」

「ついに出発の日となったな」


 思えば短くも深い付き合い。ココは深く礼をする。


「師匠、今日まで世話になったの」


 するとテランは笑って返す。


「いやいや、世話になったのはこっちの方だ。行商の修行に終わりはない。まずはイグナスまでの旅路をがんばりなさい」


 カレナはテランの話が終わるとココに駆け寄り書類の束を差し出す。


「この時期お姉様の経路で取引されている物を調べました。受け取って下さい」


 見れば相場からラフェスト商会に縁のある店まで事細かに書き出されており、見るだけでかなりの時間をかけたであろうことがわかる。

 ココはカレナを強く抱き締め、書類を受け取った。


「こんなに沢山……、大変だったろうによ」


 内容がどうの、ではなくその行為が嬉しかったのだろう、ココは瞳を潤ませながらも満面の笑みで感謝を告げると、またカレナを抱きしめ頬擦りした。


 テラン父娘との挨拶を終え二人はグルーの元へ向かう。グルーは商人たちと何やら確認しているようだったが、近付くエクシブたちに気付き笑顔で迎えてくれた。


「おはようございますグルー隊長。今日からお世話になります」

「なに、世話になるのはこっちの方だ。傭兵の配置予定はこの紙を見てくれ。言われた通りにしたが、確認はそっちで頼む」

「わかりました。ではまた後ほど」


 エクシブはそう言うと、集まりはじめていた傭兵たちの元に向かいだした。ココもそれに着いて行こうとすると、グルーに肩を捕まれ一言。


「ココ、お前はこっちだ」


 予想外の出来事だったのだろう。止められたココの目が、まるで知らない場所に預けられた子供の様に悲しい。

 思わず足を止め、苦笑いをするエクシブ。軽くココに手を振り歩きだした。

 申し訳なさそうに離れていくエクシブ。ココはそのままの表情でグルーを見つめると、頭を掻き、困った顔で言う。


「そんな顔をするなよ。馬車と売り物がある行商なんだろ? 目的地まではお前もキャラバンの一員だから、こっちで会議に出てもらわにゃ困る」


 そう言われてしまえば仕方がない。ココは諦めたのか、頷きグルーに付いていった。

 さて、エクシブの方はと言えば、グルーから受け取った割り振りを片手に傭兵の確認をしていた。


「では、次に各副団長を決める。一番から五番目はワイアット、六番から十番目をクエスト。十一番から十五番をガライヤ……」


 グラン=エクシブが率いる傭兵団の噂が飛び交い、まわりにはそれらを聞き付けた野次馬目的の傭兵たちがあつまっていたが、次々に挙がる名にざわつき始めた。


「ワイアットって、あのワイアットか?」


 思わず声をあげ確認する者に、集団を覗きこんでこたえる。


「ああ、間違いねえ。見ろよ、あの白くてでかい弓。轟弓の弟だ」


 すると、また別の傭兵が首を振って言う。


「いやいや、クエストの方がやばいだろ。アステナ山に砦を構える岩窟王の片腕だぜ」


「うわっ、梟のガライヤまでいるのか!? なんで俺がいないんだよ」


 中には悔しがる者までいる。

 その後も名を挙げられた総勢六名。とても安値では雇えない実力も経歴も申し分の無い猛者の集団である。


「おっ、こりゃなんの集まりだい?」


 ざわつきの中一人、若い旅姿の傭兵らしき者がまわりに問うた。


「えっ? お前何にも知らないのか?」


 こたえた者は驚くと、苦笑いしながら返す。


「今さっきここに着いてさ。そしたらギルドは空だし、なんか集まってるしでよ」

「そうか、そりゃしかたがないな」


 納得したのか、まるで自分のことのように今回エクシブが請けた依頼や、そのメンバーを雄弁と語り始めた。


「……ふーん。そりゃヤバイなぁ」


 説明が終わると、彼は腕を組んで呟く。


「ああ、確かにヤバい。こんなメンバーなかなか集まらないからな」


 噛み合った言葉にきこえるが彼の反応は何か違う様子に見える。

 彼は何かを考えているかのような顔からころりと表情を変える。


「悪いんだけど、もう一つ聞いて良いかい?」

「んっ? ああ、なんだ? 何でも聞けよ」


 まるで情報屋にでもなったかのように問い返す傭兵に、真剣な顔で聞く。


「最近ラルバターレで妙なことがあったって聞いたんだけどさ」

「最近? ああ、三ヶ月前の偽黒蜥蜴事件か! あれならグラン=エクシブが解決したよ。なんでも黒蜥蜴を名乗っていた首領は、元十兵団の団員だったらしくてな」

「そうか、どうりで遅いと……」

「遅い?」

「えっ? ああ、いやこっちの話だ、気にするな」


 思わず出てしまった言葉に問い直され慌てて返し、彼は集団とは逆を向く。


「色々聞けて助かったよ。ありがとな」


 そう言うとどこかへと行ってしまった。




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