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29 傭兵、攻める

 敢えて人数を言わないあたり、かなりの数なのだろう。逃げた数もかなり居たはずだが、まだそれだけ残っているとなると敵の首領は――。

 エクシブが色々と考えているなか、ココはにやりと笑い告げる。


「まっ、ぬしとウチなら数が多かろうと問題はないの」

「違いない」


 ココの一言にエクシブはくすりと笑いこたえた。

 エクシブが斬った壁の曲がり角を曲がると、先の方にうっすらと門のような扉が見える。

 距離はあるがそこそこ大きく見えるあたり、かなり立派な扉だ。


「あそこか」


 意を決して、四人は扉に向かう。

 近付けば近付くほど、ざわざわと人の声が聞こえ、遂に辿り着いた。


「オレが開ける。皆は端に」


 開けた瞬間矢の的になる可能性もある。

 エクシブの言葉に三人は頷き動く。

 皆が端によったのを確認して扉を押し開けた。

 見た目のわりに軽く、ギシギシと音を響かせて開く。

 その先は、まだ城として機能していたころは舞踏会や宴をひらいていたであろう広間だが、最早廃墟となっている為ひどい状況だ。

 そして、四人にとってもあまり芳しくない状況でもある。

 いったい何人いるのか。

 武器を構えたならず者たちがこちらを見ていた。

 睨む者、にやついている者、中には騎士風の者までいる。

 そしてその中央に足を組みかつてこの城の王が座っていたであろう玉座に座る者。エクシブはその者を知っている。


「リンよ、奴が黒蜥蜴かよ?」


 ココの問いにキックスがこたえる。


「違うわ。奴はその名を使ってたにすぎない。だって──」


 ココは黙ってキックスを見る。するとゆっくりと続きを告げた。


「あたしが黒蜥蜴だから」

「ぬしが? しかし、なら何故奴が黒蜥蜴を名乗れるんよ。ぬしの通り名なら誰も奴を黒蜥蜴とは思うまいよ」

「王族や貴族の暗殺、誘拐を主にする黒蜥蜴の正体を知る者は極一握り、奴の罠に嵌り私も容疑にかけられてしまったのよ」


 口惜しそうに言うキックス。


「そのせいで三年も監禁された。三年間かけグラン=エクシブが見つけてくれた目撃者のおかげで出ることができた。そしてこちらも知ることが出来たの。犯人は屈強な身体つきの男だったとね」


 正体を知られてはならない黒蜥蜴。真犯人により濡れ衣を着せられていたキックス。

 ココはやっとエクシブが彼女を連れてきた意味がわかった。

 エクシブは続ける。


「黒蜥蜴は暁の極秘事項。キックスが本物だと名乗ることは出来ない。だから奴を偽者ではなく本物として処理することになった。七年前のあの時、パイクガルドの戦場から不自然な離脱をし、その後行方を眩ましたあいつをな」


 顔を歪ませ憎憎しげに呟いた。


「ダーイン、まだ生きていたのか」

「いよぅ、狂神」


 回りの者たちはエクシブたちを警戒しつつ囲み、様々な武器を構えているなか、少し上の方からにやにやと笑う。


「狂神?」


 聞きなれぬ名にエクシブを見るココだが、敵を見詰める目を見て絶句する。

 からかわれてため息をついていた、あの優しげな傭兵はここにはいない。

 暗黒剣の悪鬼羅刹──。

 リン=グラン=エクシブ。

 つめたく、何者とも相容れることはない無機質な瞳。

 それを見て男はくっくっと、いやらしく笑う。


「本性あらわしたな狂神ぃ。歓迎してやるぜ?」

「……言いたいことはそれだけか?」


 ぽつりと呟きエクシブは暗黒剣の封印を解くと、鋼の鞘が地面に落ち大きな金属音を鳴らした。

 片手に残る黒くにぶい光を放つ大剣。


「相棒の侮辱、そして身内の字を語り犯した罪……」


 ふらりと身体を揺らし暗黒剣と片翼を構えて言い放つ。


「死であがなえ」


 ココはその姿に怯える。

 何故ならその口元は──、笑っていたからだ。

 ココはキックスに問う。


「奴は何者よ? こんなリンは初めて見たがよ」


 人とは思えない奇妙な雰囲気に囲む敵だけではなく、味方までが恐れる。

 抱きつき震えているカレナを支えながらココはこたえを待つと、キックスはゆっくりと告げた。


「奴は十兵団にいた傭兵、彼の元部下よ。ダーインは……」

「元、部下?」


 エクシブはそんな三人を無視するかのようにゆらりと動き、剣を二本持ちながらとは思えない素早さでならず者を蹴散らしはじめた。

 誰かが叫ぶ。


「あの黒刀はやばい! 止めろ! あれさえ止めちまえば──」


 しかし、助言も虚しく暗黒剣に触れた武器はまるで小枝の如く簡単に折られ、片翼のレリーフを象った剣に次々とまわりの者は斬られていく。

 ゆっくりと顔をあげ、声の先に聞く。


「止めちまえば──。なんだ?」


 鮮血と共に笑いながら舞うエクシブは、まさに狂神。

 しかし、ダーインはその場で動かずにつまらなそうな顔で叫んだ。


「グラン=エクシブ! てめえ手を抜いてやがるな!」


 ざわめきがたつ。

 ダーインのその言葉に改めてまわりは怯える。

 それもそのはず、たった一人で形勢を逆転したエクシブが手を抜いていると言うのだ。


「十兵団、八団のグラン=エクシブといえば、先行斬り込み団長。その剣に触れた者は──」


 ダーインは吐き捨てるように告げる。


「一刀両断じゃねえのか? 団長さんよ」


 確かにエクシブに斬られた者は武器を持つのは難しいが、命に関わるほどの深手ではない。


「すっかり狂気が抜けちまってるんじゃあありませんかね? 団長」


 エクシブはダーインを睨み付け言い放つ。


「お前に団長と呼ばれる筋合いはない。それに安心しろ」


 暗黒剣をダーインに向け続ける。


「お前はこいつらと同じじゃすまない」


 にやりと笑いダーインはこたえる。


「はっ、俺様もなめられたもんだ! あんた、俺の実力を忘れたのかよ?」

「所詮各下、よく吠える」

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