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一万人の転移  作者: 藤村 次郎
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現状の把握

 本部の横に設営された指揮官のテントの中で、一夜が明け、2日目を迎えた。

俺は夢であることを願って眠りについたが、現実は目覚めとともに押し寄せてきた。

転移前のシンはどのような人だったのか? まあ真似ることもできないので、素で行こう。

但し、俺の前世やパラレルワールドの話はマサムネやユキ姫にもやめておこう。魔女の話も当面はNG。

とにかく、12000人を任された。12000人で、まずはサバイバルだな。特に衣食住の食は最優先だ。

12000人が持っている文化、文明の延長で、導いて行く必要がある。焦ってはいかん!。


「おはようございます。シン様」

「うぉん! 」と尻尾がせわしく動く。

「ユキ姫、おはよう。朝食を取ったら今日の予定を皆で相談しようかな? 」

「そうですね。朝食が済み次第、皆を集めましょう。」


 ユキ姫は、早朝、索敵隊をさらに奥へ探らせた。夕方までに戻って来るよう指示を出した。

「マサムネ、石版と石筆は用意できるか? 石版は大きいものが欲しい。」

マサムネは兵糧隊のアランを呼んで、石版の用意をさせた。

索敵隊の情報とサクヤに各隊を探らせた情報などから、シンとユキ姫とマサムネの3人は昨夜の情報と合わせて整理した。ユキ姫が石版に整理した情報を書き込んでゆく。


 軽く昼食を取ったあと、草原に大の字になって「ああ、いい天気だなあ。心地よい春の息吹を感じる」とシンはなぜか寛いでいる。ポチが喜んで横にやってきた。頭を撫ぜながら掻き寄せると大きな尻尾がせわしく揺れる。

何とか兵も寛いでいるようだし、何もかも吹っ飛んだ。

あれこれ考えてもわからないのだ。この状況を受け入れようと。

「シン様。お疲れ様です。」とユキ姫。

「昨晩、索敵隊を放して、夜の様子を探らせましたが、昼間と変わらず危険はなかったようです。」

「あい。わかった。」

確かに、昨晩は特に大きな音も、遠吠えなども聞こえなかった。静かな夜だった。


 太陽が西に傾いてきたので、メイドの3人が夕食の支度をしている。

まあ、こんな状況だからおいしいものを要求するのは酷なものだ。

さて、副官、5大隊長、兵糧隊隊長、救援隊隊長、親衛隊隊長を一堂にして、夕食をとる。

「皆、よく聞いてくれ。わかっていることを整理したのでマサムネから説明する。」

おお怖!、厳つい隊長どもの目が怖い。


1、およそ、ここの地形は、東西に長く、南北は海と山に挟まれている。東にも西にも大きな川があってその先は行けない。南が海で対岸は見えない。北側は高い山に続いている。

2、森と草原が広がって、なぜか道のようなものがところどころにある。

  また、森の中には廃墟があり、草原には耕した痕跡が見える。

3、兵糧隊には3か月分の食料がある。

4、敵がいない。

5、国との連絡が取れない。孤立している模様。

6、煮炊きする鍋や包丁など調理器はある。

7、小動物、貝や魚、草、果物など食べられる物がある。

8、近在に町など、我々以外の人は見当たらない。

9、猛獣や危険な動植物は確認されていない。

10、今のところ統制が取れている。

って、ところだ」

「まあ、忌憚なく発言してほしい。」とシン。


まあ、厳つい連中を前にして、ちょっとビビっちゃうな。


 5大隊長、兵糧隊隊長、救援隊隊長、親衛隊隊長を集め、現状の説明と今後の対応について話し合った。「食べること、排せつすること、寝ること、および規律の順守は重要だと思う。徹底させるように」とシン。

「規律は今迄通り。違反者には罰を与えることも今迄通りとする。」親衛隊のムルベ隊長。

規律は、各隊で厳重に行われる。そして、共通部分と女性は親衛隊が守ることにした。


 「シン様、女性の保護については、2つ方法を提示したい。一つは縄張りをしてその中を女性居住区として監視は親衛隊60人が24時間体制で就かせます。さらに兵糧隊に、性欲抑制剤を毎食に投与します。しばらくこれで様子を見てみたいのですが?。」とユキ姫。

「まあ、妥当なところかな。それでいいよ。マサムネ、関係者に指示をしてくれ。

それから、兵糧隊の水は底をついたので、明日の朝 食事の後で全員を川沿いに移動させたい」


確かに女性が危ないな。それにしても性欲抑制剤なんてものがあるのか!。

とにかく、話し合ってこの難局を乗り越えねばならない。


「兵を、ぼーっとさせておくのは良くないので、何か知恵はないかな? 」とシン。

「訓練はできそうですが」とオルバ。

「武器を使わない体術も取り入れたらどうでしょうか? 」とササキ。

「基礎体力は大切です。ランニング、匍匐前進、土嚢を担いだ過負荷運動なども良いですね。」とブルグ。

「各隊で、提案のあったものを取り混ぜて計画を立てたらどうでしょうか? 」とエルンギ。

「自主的が何より。自分たちの兵は自分たちで面倒見るのが一番良いと存じます。」とマサムネ。

「そうだな。各隊で案を出してくれ。明日打ち合わせをしよう。」とシン。

案を出させることで、各隊長も責任感が持てるというものだ。


 シンは、各隊長から今日の報告を受けた。

概ね、大きな騒ぎもなく日が暮れた。

「シン様、兵に暇を与えると、よからぬ者も出てこようというもの。訓練だけでは食も増えるし、ここは一考せねばなりませんね。」と副官のマサムネ。

「そうだ、食糧調達をさせるか!。しかし、今日はもう遅いなあ、寝るとしよう。」


ユキ姫は、タマロ王国の第3皇女である。小さい頃から賢く、特に戦術について右に出るものがいないほど卓越したものを身に着けていった。シンはタマロ王国の東に接する、カラサワ領の、領主の3男である。ユキ姫は政略結婚の意味も含めて、シンの婚約者としてシンのもとに向かわされたのである。それから1年、シンと戦術の論議を交わし、互いに信用を置くようになった。そして、今回の戦いと異変。


 サバイバルに重要なことは、食べる、排せつする、火をおこす、雨風を防ぐ、食糧の調達の5つである。この排せつをうまく処理しないと、疫病が発生する。1万2千人の排泄物は想像を絶する量になる。まあ、穴を掘って埋める。或いは、川の水を引き込み、溜りを作る。そこから跨げるほどの細い溝を1M離して、50作る。その溝の先は少し低くして、束ねて川下まで導いて放流する。水洗だけど、川の下では魚も捕れなくなる。

と、話をしていると一部の兵から昨日の野糞したが、朝行くときれいになくなっていたと言ってきた。そんなこともあるのかと調べに向かわすと確かに跡はあるのだが、匂わない土の様でそのなかには、ミミズのような生物がいっぱいいたとのこと。

これは朗報だ。自然に戻す機能がこの草原にはある。であれば場所を区割りして、埋めさせればよいのでは。

ということで、実践したところ問題ないことが確認された。


 そして、雨風を防ぐには手持ちのテントで何とかなる。冬に向けての住居をどうするかが問題だ。

2日目も、大きな混乱なく、やり過ごせたと言うべきか。

まあ、ここまで何とかやれてるかな? マサムネやユキ姫たちは、どうもシンが変だと感づいているようだ。ここは、しらばっくれてやろうじゃないか。どうせ元々のシンがどういう人間かはわからない。おれがシンなのだ。


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