シンとユキ、神様に会いに行く
シン歴10年。
魔女の家を訪れることになった。
落ち着いた日々が続く中、5年ぶりに魔女ジローがやってきた。
「やあ、久しぶり。今日は、魔女の家へ招待に来たのだけど。」
「そうだね。すっかり失念していたよ。 で、これからすぐ? 」とシン。
「いやー、なんぼなんでも、ユキさんもいることやし、明日迎えに来るけど、良いかな?」
「ユキ、どうかな?」
「良いよ。明日、朝2番手でお願いできますか? 」
「わかった。じゃあ 明日ね。」
「ところで、ジローは年取らないだね。」
「そうだよ。 もうこの姿で、150年になるかな。」
といって、帰っていた。
翌日、ジローが銀色の乗り物でやってきた。
シンが出かけると聞いて、皆がシンの家の前に集まっていた。
銀色の細長い物体が、降りてくると、皆が一様に後ずさった。
そこから、黄色のオーバーオールにピンクのブラウスの女の子が出てきた。
「さあ、どうぞ。」とジローが招く。
ユキとシンは乗り込んだ。シンは乗り物には慣れていたが、ユキは、はしゃぎっぱなし。
ふわっと上昇すると、続いて高度を上げてゆく。
集まったシン王国の皆が、仰ぎ見ている。
眼下は、シン王国であり、予想したように王領や神殿、川を挟んで各領地が見える。
しばらく、シン王国の上を飛んでもらった。
そして、機体は、海に出ると東へ針路を取った。
北にそびえる山の北側は、急激に海に落ちていた。我々が居たところは大きな島だった。
さらに東へ海の上を進むと、大きな陸地が見えてきた。端から端は視認できない。海岸線に沿ってしばらく行くと、山の方に針路を変えた。そして、大きな広場と神殿が見えてきた。
その神殿の奥に、魔女の家があった。
「ようこそお出で下さいました。」と管理者のサナエとメイドたちが迎えてくれた。
平屋の杉皮で葺いた、大きな家だった。
ドアを開けると、広い土間があって、その先に3つのドアがある。右側のドアは居間兼食堂、真ん中のドアは自室へ、左側は調合室となっている。それぞれのドアの先は広くて、外側からは想像できない作りである。自室へのドアを開くと、廊下があって右側がサナエの部屋、その奥がジローの居室となっている。その先は一見行き止まりの壁に見えるが、前に進むと廊下が伸びて、左右にそれぞれ5つの客室が連なっている。そしてその奥に歴代の魔女の室が続いている。
「初代様は“ハナ”と申されます。混沌としたこの世界に調和をもたらせた方です。当時は、人間、獣人、竜人、魔物などの小さな集団がたくさん居て、いざこざが絶えない状況だったそうです。初代の“はな”さまは、それぞれの生息域をお決めになられ、それぞれに統治組織を作ったのです。」
「2代目の“ニーナ”さまはエルフでして、あまり外には興味がなく、もっぱら詩を読んだり、薬草の研究をされておりました。」
「3代目の“カレン”さまは、竜神族でして、ほとんど竜神エリアに行かれていて、滅多にこの魔女の家に来られなかったようです。」
「4代目の“けいこ”さまは、人族で農業の普及に尽力されたようです。」
「5代目の“ササ”さまは、私の生みの親でして、高度な文明から来られたようです。そして、この魔女の家に世界のモニタを設置されました。“ササ“さまの部屋では、この世界の至る所をモニター越しに見ることができます。もちろん、シン様の領地も一目です。」
「6代目の“ひかり”さまも人族の方で、商業関係に詳しく、商業ギルドを設立して物の流れを活発にし、世界を豊かにしました。」
「7代目の“ミズキ”さまは、猫族の方で森の開拓に尽力され、この魔女の家の周囲を切り開き、牛やヤギを放畜場をつくりました。農園など自給できるよう魔女の居住区を設け、聖地として地盤固めを行いました。」
「神様は、この奥の部屋におられます。」
どうぞ、と言ってドアを開けた。中には神棚が有って、その奥に神様がおられた。
2礼して、柏手を4つ。
「お初にお目にかかります。シン王国のシンと申します。こちらは伴侶のユキです。」
「ユキと申します。」
神様を交えて、歓談できたのは、全く予想外だった。
ここの神様は、この世界を作った”神崎元”、その人だった。
ユキが、子供が授かるようお願いしたら、
「あい、わかった。 きっと産まれるから安心しなさい。」と。
管理人のサナエが、お守りのようなものをユキに手渡していた。
そこにはなぜか、日本語で”安産祈願”とあった。




