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一万人の転移  作者: 藤村 次郎
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昔の住人

 まあ。死人も出なかったので、強制関与はよそうと、ジロウは思ったのだが。

神殿前に集まるよう、シン王に連絡した。

いつものように、シン王側はシン王とユキ、そして5大隊長と兵糧隊長、救援隊長と女性代表の10人。

ジローとサナエ、5人のメイド。今日はパラレルワールド管理局は加わっていない。


 ジローが話し出した。

「今日は他でもない、先日のエルンギ領での武力行使に端を発した話です。

あなたたちの星は、チャンスを与えたのに3回とも消滅に至ったのです。あなたたちが、もう戻る星はありません。パラレルワールド管理局からも、そのように聞いています。原因は、文明が発達しすぎて破滅に至ったのです。多くの星では文明と文化がバランスよく発展するため、破滅に至ることはありません。しかし、あなた方の星は精神が十分育つ前に文明が暴走しました。」


「初代エジク文明、2次ダスイ文明、3次メソポ文明がありました。いずれも、この魔女の星で精神修養された人たちが帰還して開いた文明です。しかし、3000年も持たなかった。」

「シン王、率いる皆さんは、この星で生きながらえるチャンスを得たのです。」

「人は大きな力の前には無力です。何もせず屈する人、泣きわめく人、戦う人がいます。あなた方は、守るものが居るからこそあの戦いに赴いたと信じています。」

「その精神を大切にしてくださいね。決して攻める側に立たないよう注意してください。」

「この世界は広い。過去、現在、未来の中で、あなた方は自由です。」


「なかなか信じがたいお話ですが、心して承りました。鋭意努力いたします。」

「戦うことは悪なのでしょうか?」

「そうは言っていません。守るために戦うことは尊ぶべきことです。誰かを屈服させるために戦うのは悪です。

そのような因子をなだめる手段として、教育や信心があります。その他にも方法が多くあります。」


ちょっと、油断したか。とシンは反省した。

ポチにアルファ因子検知の閾値を下げるようにお願いした。

ポチの本当の仕事は、アルファ因子や暴力、扇動などの情報をジローとシンに報告することであった。


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