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一万人の転移  作者: 藤村 次郎
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ユキ姫の思い

 シン様は優しい。

この大転移で本当のシン様を失い、もやもやが繰り返し湧いてきて、沈んだ日もあった。

逞しく、凛々しいシン様はどこへ行ったの?。


容姿はシン様だけど、中身は全く異なり、すぐごめんなさいと謝るし、一足も二足も後ろに引きながら話をする。もう、最初はいらいらしたけれど。優しい性格から来るものと次第に理解してきた。

いつも「俺は、導き手だ。だから皆を幸せにする。」って、口癖のように呟いている。

アズサ村のアヤが赤子を抱いて怯えているのを見て、私にその対処を任せてくれた。あの時の優しい眼差しを忘れられない。そのあとも、女性居住区に来て子供や赤子をあやしていた。子供が好きなんだ。

もっとも、貴族とか庶民とかそのような括りで人を見ていない。不思議だ。私もシン様も、カラサワ領では貴族であり、庶民と一緒に何かをするなど考えも及ばないことだった。

しかし、シン様は率先して畑を耕し、草を抜いたり、食料の調達など、兵たちと一緒に身体を動かしている。


 3か月経ったころ、自決するものが出たときは、悲しいお顔をされていた。

その時も、神殿前に全員を集めて、黙祷を捧げた。

「あの戦いで、我々は新しい命をもらった。大事にするように! 」と。

多くは語らない。本当は、その戦いでは壊滅することを皆は知っていた。この穏やかな生を大事にせねばとわかりきっていたはずなのに。


 今は、彼が好き。愛してる。

私を、どう思っているのか、聞いてみたかった。

「シン様は、何時か元の世界に帰られるのですか?」

「いや、パラレルワールド管理局の話では、元の世界には俺がいるので、この俺が戻ると鉢合わせになって消滅すると言っている。元の世界の俺は、そのまま日暮里で降りて、カレーを食べて帰宅している。」

「元の世界での奥さんやご両親と会いたいのでは?」

「いや、それは元の世界の俺が対応しているので、必要ないことなのだ。この世界の俺としては寂しいが、元の世界は、何も変わらず進んでいるので、問題ない。」とシン。

「では、私と一緒にこの世界に居ていただけるのですね? 」と私は思わず吐露してしまった。

顔が真っ赤に火照るのがわかった。ただ、俯いていると。しばらくして、

「ああ。こちらこそ、そなたと一緒に居させてほしい。 」と返答があった。


やったーー!。なんてはしたない!!。

OKよね。OKよね。

といいながら、抱きついた。

シン様も、優しく抱いてくださった。


それから、いちゃちゃとした2人が、しばしば目撃されるようになった。

「うぉん うぉん もう目が当てられん。」


11月20日。

神殿で、婚約の儀を行い、翌年の春に結婚式を行うことになった。

「うぉん 春まで持つのかよ。」とポチが心配していた。


 12月1日。初めての冬で、雪が降ってきた。午後から曇ってきて、夕方には足が埋まるぐらいに降り積もった。領民は、雪対策に右往左往している。

子供たちは、ポチと一緒に騒いでいる。例の3少女も嬉々として雪合戦に興じている。

平和だ。冬を越すだけの食料もしっかり備蓄できた。

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