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一万人の転移  作者: 藤村 次郎
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建国

 シンとユキ姫が、月夜を見ながら本部のテーブルを挟んで話し込んでいた。

「ユキ姫よ、建国を考えている。このまま兵たちを遊ばせておくわけにはいかないし、生きる目標を与えねばならない。大隊は以前の領地でまとまっているし、8割は農民であることから、自給自足への道はそれほど遠くはあるまい。建国の宣言を神殿の完成に合わせて行おうと思う。それまでに各隊長の意見も聞いておきたい。」

「そうね。建国して地盤を固めるのは良いかと思いますし。軍の最高者が王となるのは歴史上よくある選択だし、この世界には確かに神がおられる。良い機会だと思います。」

騎士以外は、農民が主体である。俗にいう民兵である。

「シン様、この地はたいそう肥えた土地で、水回りも良い。建国を機会に大隊長を領主にして、軍を解散してはどうでしょうか。」とユキ姫。

「俺もそう思う。その方向で国づくりをしてみるか。」それはまだまだ先ことだが。

確かに、ここは良い土地だ。

以前の領土はやせた土地で、収穫も少なく、毎日食べることで精一杯だったそうだ。

ここは、戦う相手がいない。自分たちだけの世界を作ることができる。


 「各大隊は、隣同士の村の集合であり地理的にもまとまっている。然るに、その状態で領主という設定で良いかと思う。兵糧隊と救援隊は、当面、王直轄とする。そうだ、女性の取り扱いについて良い案は無いだろうか? 」

「800人を8等分して、見合いをさせてはどうでしょうか?。もちろん各領主の責任で加護するのは当然ですが。いつまでも親衛隊が睨みを効かすのも無理がありますし。」

「そうだな。子孫を繋いでゆくことも大事だし。競争率は20倍だな。大変だ。おれは、ユキ姫お前がいるから安心かな? 」

「ふふふ・・。そうかな? 油断してはならんぞ。私に好意を抱くものも少なからず居るからのう。」

おお・・。目が怖い。まずい。話を逸らそう。

「よし、見合いの方法、場所、時期などを練ってくれまいか。建国日に告知したい。」

「おもしろくなりそうです。明るい未来を作っていこうではありませんか! 」

ふたりの会話は、夜遅くまで続いた。

「うぉん もう寝ろ。」


 翌日から、神殿の披露式に向かって、大隊長と兵糧隊長、救援隊長、女性代表を集めて、シン王国の設立に向かって検討を重ねた。

1、シン王国とし、シンが王となる

2、大隊は、当面現状の位置とする。

3、ゆくゆくは、海岸を含め、森までを6分割して、領地を設け領主を置く。

    あせらずに、5年を目途に移動を計画する。それまでは、今の野営地をベースとする。

   (6つめは、王都と及び王領である。)

4、治安維持については、シンの直轄である親衛隊が担う。各領には親衛隊から必要人員を派遣する。

5、女性は、当面王の直轄として管理する。

6、兵糧隊、救援隊は、各隊に分割移動する。

7、王領には、自給自足のため各隊よりそれぞれ200人を徴集する。

8、シン王国憲章をもってこの国の理とする。


 子孫継続のためには、女性をどうするかで議論が奮闘した。子孫を残したいと行動するのは男の性である。しかし、財力と力のあるものが多くの女性を獲得して、子孫を増やすのは、自然の理であり、貧しい男は生涯結婚はできない。獣の世界も然りである。

タマロ国もイキア国も同様の文化であることから、女性の獲得競争はゆるやかなものであるといえる。

俺は、一夫一妻を基本にしたい旨を、強く推した。

そして、見合い作戦を行うことでひとまず落ちつた。


 2月20日、神殿が完成したとの報告があったので、早速行ってみた。

20M四方になるよう頭大の石を3人丈の高さに積んで、南より入って北側に祭壇ができていた。また南の入り口には左右に石の柱が立っており、そこには文字が彫られていた。

「ハヤシよ。この文字はそなたが指示したのか? 」とシンが尋ねた。

「いえ、埋もれいていた柱にすでに刻まれておりました。そのまま建てたのですが、まずかったでしょうか?」

「いや、それは良い。なかなか意味深な言葉だ。」


 さて、2月25日、建国当日、皆は神殿の南側に整列した。

親衛隊長のムルベが、号令をかける。

「皆の者、キリーツ、前に注目! これよりシン様より建国の挨拶がある。傾聴せよ! 」

シンが、台座に登ってきた。

「今日は、めでたくも快晴である。このたび神殿の完成とシン王国の建国を祝おう。」

「ここにも神様がおられる。我々は神様の庇護のもと、ここで繁栄することを誓う。」

「神殿を見よ。!右側の円柱には、“生あるものは魂を捧げよ”、左側は“生無きものは魂を望め”と刻まれている。ひとつに悪しき心を持つものはここに跪き、良き心を持ち帰れ。」と。


 「八百万の神々とともにこの地の神も我々を見守ってくださる。感謝を捧げよ!」

シンは祭壇に向けて、2礼4拍手し、シン王国の繁栄をお願いした。そして1礼した。

突然、皆の頭の中に声が響いた。

「しかと、汝らの思いを受け取った。安寧に暮すが良い。」と。

8代魔女ジローは、このタイミングで、メッセージを送ったようだ。

1万2千人は、神の声を驚愕のうちに聞いた。


 長い話は嫌われる。短く簡潔に伝えればよい。詳細は追って周知してゆけばよい。

親衛隊長ムルベより、

「これで、式典は終わる。皆の者は順次神殿に参れ! 解散」

「おお。神様の御声を聞いたか?。何に例える言葉も見当たらない。感動した。」

「さあ、我々もお参りしようではないか。」

「私たちも行こう。健やかな毎日を願って。」

続々と、神殿へ向かう人々が続いた。


神殿の披露と建国の宣言が、滞りなく終わった。

大イベントが民衆の絶賛で完了した。よしよしだ。

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