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一万人の転移  作者: 藤村 次郎
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保護観察その2

 なかなか、いい方向になっているね。

体術の奨励も良いね。前向きに進んでいるのは何よりだ。

さて、何かプレゼントを用意するかな。

「サナエさん、キーがシンに魔法が使えると話しているので、そろそろ魔法を許可しようと思うのだが、どうだろうか? 」

「ジロー様、ここはシンに土の魔法を与えて、建国の祖として働かせた方が皆の信頼を得やすいと思います。ユキ姫には水の魔法を与えてるとよいかと。」

「うん。そうだな。シンには耕地や治水をやらせ、ユキ姫には神の治癒なんて良いな! 」

トップに立つものは精々、汗を流してもらおうか。その方が民の纏まりも良いだろう。


 アルファ的な種族と思っていたが、以外にも大人しい。彼らの歴史では、人であって神であるような宗教が複数あって、その布教と権勢欲が絡んで、兵を立てて侵略を繰り返したこともあったようだ。最後は一瞬で世界が破滅する力を、多くの国家が持つことで、危うい均衡を保っていた。しかし、パラレルワールド管理局の資料では、結果は消滅になっていた。ここに転移されてきた人々は、同じ道を歩まないよう3度目の挑戦なのだから。

3度目とは、あの星に戻すという意味ではない。種族として3度目の生を育むということだ。しかし、第8代魔女のジローとしては、子孫の発生を抑えて、基本的には自然消滅への道を歩ませようと思っている。もしかして、それまでに、アルファ因子の減少が確認されれば、この星の他の種族との交配の中に溶け込ませる案も捨ててはいない。


 まあ、シンが生きてきた地球では、最終兵器があって、すべてを焼き尽くしても有り余るくらいの数を多くの国が持っていた。しかし、どの国も行使しないだけの分別はあったようだ。思えば薄氷を踏むような世界であったと思うが、多くの人は平和を楽しんでいたようだ。平和を信じながら一瞬にして消滅するのであれば、それはそれで良いのかもしれない。


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