廃屋、廃道、廃耕地の調査
先住人が居るのか、獰猛で危険な生物が居るのか、朽ち果てたような家や道路、橋、田畑がどのようなものなのか?。調査する必要がある。1月15日。
ここ15日ばかりでは、危険な目には誰もあっていないし、誰も来ない。もちろんあの戦争の敵も来ない。
俺は(シン)、ユキ姫と救援隊長のアラン、兵糧隊のユメ そして護衛の親衛隊を連れて、東に歩いていた。ところどころ石畳が残っているでこぼこの道。総勢25人で、わいわいと仲良く道らしい道を進んでゆく。
幅は、馬車が交差できるほどの約4Mほどあって、西へ続く。道端には野の花が咲いており、小鳥の囀りが聞こえる。ちょっと奥には、耕作地であったと思われるように、碁盤目に区画されている田畑らしいものが見える。その奥には土の壁が崩れてところどころ残っており、20から30戸ほどの集落だったようだ。
耕作地には、野菜と思われるものや、穀類がまばらに見える。
大きな葉っぱを見ると、どうもキャベツのようだ。大きく玉になっているものもあった。
「これは、おいしそうなキャベツだ。持って帰ろう。」
兵糧隊のユメ隊長が、さくっと切って、早速お持ち帰りで背中のザックに入れた。
「おお、これは米だね。去年の穂が残っている。種は落ちて付いていないが、周りに芽吹いているようだ。
後で、部下にこの辺りを耕作させよう。」
「あの向こうに見えるのは、桃の花のようですね。」
「柿の木も見える。」
「ああ! あそこに鶏のようなのが一瞬見えましたよ! 」
「ブルグ隊に言って、調査させましょう。」とユキ姫。
結構、食材がありそうだ。生活習慣がよく似た人たちが住んでいたと思える。しかし、どこへ行ったのだろうか?。
崩れ具合だけでは、何とも言えないが、ここ100年より近いとは思えない。
廃墟を探ってみた。小さな小屋のようで、50戸ほどあった。一番奥に広い敷地と庭があって、きっと村長クラスの跡と思われる。柱は木材を使っていたようだが、ほとんど朽ちていた。
下に降りる階段があって、地下室らしきものもあった。
裏手に回ると、奥の方に墓場と思われる、石柱が散在していた。
台所と思われるところには、燃えカスと土器の破片があった。
一行は、川の袂についた。
「橋げたらしきものがあるね。足りない分を作って丸太橋を渡したら、とりあえず急場は凌げるかな。」
「ここから、岸沿いに海の方へ行ってみましょうか? 」
1時間ほど歩くと、湿地帯に阻まれ、それ以上の南下はできなかった。
一行は、元来た道を辿って、本部の天幕に戻った。
今日の成果をまとめて記録する。
夜が明けて、1月16日。
今日は、東の方へ探索し、北の森に近づいてみることにした。
右側には遠く海が見える。海までは、10Km以上ありそうだ。
一行は東へ足を進めた。
今日は、薬草を探したいと言うことで、救援隊のアランが加わった。
東へ10Km、北へ10Kmして、野営という段取りで準備をしてきた。
行く道すがら、アランは薬草の同定と収集に夢中になった。
「これは、“げんのしょうこ“だ。胃薬として立派に役を果たしてくれます。」
救援隊のアランは、一心不乱になって根を掘り起こし、持ってきた袋に押し込んでゆく。
ポチが私も!と、そこら辺中穿り返して・・・。
「うぉん、うぉん たのしいなあ。」
いろんな食材が集まってくるのだが、試食で腹痛や下痢が避けられない状況であるからして、胃薬はいくらあっても足りない。(“げんのしょうこ“は優れた健胃・整腸作用を持ち、下痢、便秘、食あたりに効果がある。)
「おーい。アラン、ポチ 置いていくぞー」
そうだ。もう昼が近いので、この辺で昼食にしよう。
兵糧隊がこさえた、おにぎりと煮豆、少しの干し肉。冷えたスープ。まあ、この状況では欲は言えないな。
腹ごしらえができたので、今度は北に向いて歩くことにした。
元の世界では、春の温かい一日であり、毎日生命の息吹が感じられる世界であった。
草原や耕作地らしいところを縫って道が続く。
ここにも、廃墟がある。でも結構多くて、100軒ほどありそうだ。
アランはドクダミ草、ヨモギ、シソ、クコ、カモミール、おおばこなど、次々発見してははしゃいでいた。
「う、これはもしや??。ケシのみ?まさかアヘンならば痛み止めに使える。覚えておこう。」
「どんどん、萌えてくるようだから、これからが楽しみだ」
「麻もある。綿もある。衣服の原料は何とかなりそうだ。」 よしよしと、アランはガッツポーズをする。
「おーい。アラン、ポチ おいて行くぞー」
アランとポチは名コンビのようだ。
森が迫ってきては、草原が現れ、だんだん登り調子になってきた。
あの岩棚まで行ってみようか。200Mぐらい昇ってきたようだ。眼下に遠く我々のテント村が見える。
「見晴らしが良いね。確かに、人が住んで町や村があったように跡がある。」
「川があって、水が豊富。緑豊かな土地だ。」
「遠くに海が見える。」
太陽が西に傾いてきたので、今日はこの辺で野宿することにした。
親衛隊が野営の準備をする。円形に杭を打って、真ん中にシンとユキ姫にはそれぞれテントが張られた。
少し距離を取って、兵糧隊、救援隊、親衛隊のテントを12個張る。さらにその周りに杭を打って、鳴る子を設置する。
兵糧隊員が夕食を用意した。シンとユキ姫、アランと副親衛隊長のハヤシがテーブルを囲む。他の隊員は車座になって夕食を囲む。
キイに聞けば、廃墟の謎もわかるかもしれないが、皆のペースで時間を過ごす方が良いと思う。「なにもかも、俺は知っている」なんてのはよそう。数百メータほど離れたところに大きな滝が見える。北の山から流れてきたもので、高さは100Mぐらいありそうだ。
海の方は、地球で見る月の倍ぐらいある大きな月が水平線にあって、銀色に光っている。
「シン様」とユキ姫が傍にやってきた。
「ああ。綺麗だなあって。」
「うぉん」あったりまえだよ。
明日は、もう少し山の方へいってみようか。




