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一万人の転移  作者: 藤村 次郎
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アズサ村のアヤ

11日目の朝が来た。

「おはようございます。」とキイとアンがやってきた。

「はやいね。」

「それはもう、大きな転移で貴方に多大の迷惑をかけていると思うと。」

「では、言葉の通じない女の子が2人いる。確か電車の中で見たことがある。」

「あ・・。これはこれは、彼女らはタイムトラベラーで指名手配中なのです。よかった、早速持ち帰ります。」

「でもなあ、急に居なくなると皆が不審に思うので、しばらく様子を見られないか? 」

「まあ、危険はないし、この星には今のところ時空の接点はなさそうですし。彼女らもどこへもゆけないでしょうから、シン様に預かってもらっていいですか?。時空の接点を探し出すという特技以外は、全く普通の女の子です。本人たちも自覚しているので、下手なまねはしないと思いますが、念の為、魔女の家から来たメイドのアヤメに監視してもらいます。」

メイドのアヤメ? あ・ちょっと小さくてどんくさいやつか! いつの間にか斥候が入っていたのか。うんうん。

「ここでも時空の接点が現れるの? であればもとの世界へ戻れるの? 」と俺。

「いや、そう簡単には発生しませんし、この星は受け入れだけで、外へは出られません。」

「そういうものなのか?。 」

「そういうものです。これはパラレルワールド管理局と魔女との取り決めです。」

「ってことは、あのタイムトラベラーの子は、ここで終点ということなのか?」

「そうです。」とキイ。

「俺たちも? 」

「そうです。」

「もう一人紛れ込んでいるようだが、黄色のオーバーオールにピンクのブラウスの女の子。誰?」

「見つかっちゃいました。彼女が、この星の魔女のジローですよ。」

「へえー、そうなんだ。そうかあの知ったような眼差しはそういうことか!。 」驚かないよ。

「まあ、“待てば海路の日和あり“って言葉もあるから。それに12000人の面倒を見なくちゃ・・・。」

「心中、お察しします。できる限りご支援を致しますので、よろしくお願いします。」

「ウォン 話は済んだか?。」


 「シン様、おはようございます。誰かと、お話し中でしたか? 」とユキ姫が近づいてきた。

「ちょうどよかった、一緒に、ナズナのところに行ってくれないか。」

女性居住区にやってきた。

「ナズナさん。おはようございます。 出自の不明な3人はどこに? 」とシン。

「こちらです。言葉が通じないので、皿洗いや子供の面倒を見てもらっています。」


 あれは、「だるまさんが転んだ」という遊びだ。

「ジロー、アマルガ、エンダント こちらへ 」とナズナが3人を呼び寄せる。

10歳位ぐらいの少女たちがやってきた。

「こちらがジロー、アマルガ、エンダントです。」

紹介されていると理解したのか、

「おはよう。ジローだよ」と黄色のオーバーオールにピンクのブラウスの女の子。

「******アマルガ」と「******エンダント」と言って、にこっとした。

「よろしくシンです。」

「よろしくユキです。」

お互い挨拶をした。

ジローが他の2人に「******」と言うと、2人は遊びの中に戻って行った。


 「ジローさん。 少しお話がしたいのですが?」とシン。

3人は本部に向かった。

3人とマサムネを呼んで、4人でお茶を飲んだ。

「さて、あなたは、この星の8代目の魔女ジロー…でいいですか? 」

「あーい。肯定します。」とジロー。

「どうして、あの2人と一緒にいたのかは問いませんが。 これからの話をしたいのです。」シン。

次に、ユキ姫とマサムネに向いて、

「その前に、俺はシンではない。皆がここに来た時、シンの身体に移ってきた精神体だ。“導き手”として、この身体を使わしてもらっている。目的は12000人の転移者を健やかに過ごさせることにある。」とシン。

「なるほど、どうりで違和感を感じたのですね。」とユキ姫。

いやいや、そんなに簡単に納得してもらっても・・・。


 ジローは、「私は、皆さんがこの星に馴染むようであれば、歓迎します。基本的に干渉はしません。基本的に自立の道を歩んでくださいね。本当はもう少し子供たちと遊んでいたかったのですが、なぜかシンさんに見つかってしまいました。」

「なかなか信じ難いのですが・・・・」マサムネは絶句した。

「ジローさんの考えは、とりあえずわかりました。今後のことは基本的には俺たちでやってゆくということで頑張りましょう。ユキ姫、マサムネ、今まで通りでよろしく頼む。それから、このことは他言無用ということで重ねて頼む。」

皆に怪しまれないように、早々に解散した。

パラレルワールド管理局の話は、ややこしいので出さなかった。


 アズサ村のアヤの話をユキ姫が聞いてきた。

アヤは夫と2年前に結婚したが子供ができて間なしに夫が死んだ。今日の食料にも事欠くようになって、途方に暮れるばかりであった。そのとき、この戦での救援隊募集の話が、村長の叔母さんからあった。その叔母について、この戦にやってきたとのこと。赤子を置いていこうにも、預かってくれるところもなく、いっそ荷物の中に潜り込まそうと考えたらしい。しかし、戦いに負けた時は、奴隷になりこどもの命もわからなくなる。運命を共にするしかなかったということらしい。

アヤと同じように考えた者が、5人もいたとは!。


「ところで、シン様。と今まで通りお呼びしていいのでしょうか?」とユキ姫。

「ああ。それで頼む。」


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