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建国祭 ⒉

 二週間ぶりに更新します。最初に宣言してはいましたが本当に不定期更新です。それでもブックマークをしてくださる方、ここを訪れてくださる方々、本当にありがとうございます。これからもこのようなことが多々あると思いますが、何卒宜しくお願い致します。


 7/12 エミリーの髪の色が違っていたため、修正致しました。

 エミリーに手を引かれ、私たちは城門へとやって来た。


────クヴァシルの城と全然変わんないや。でも、中に平民でも入れるのは違うのかな。


 クヴァシル皇国とケリドウェン王国は70年ぐらい前までひとつの国だった。でも、その時の二人の王子があることで対立してたらしい。

 一人は実力主義で女性であろうが平民であろうが、能力のある人達を取り立てていくことが、国のためになると言う王子。

 もう一人は女性や平民は大人しく貴族の男にしたがっておけば良い、女性や平民に力を持たせるべきではないと言う王子。

 これだけでもう分かると思うけど、前者がケリドウェン王国の初代国王に、後者がクヴァシル皇国の初代皇帝になった。


 ただ、対立した理由がその考え方の違いだけだったから、別に血で血を洗うような争いにはならなかったって。


 考え方違うね→一緒にいたら面倒くさくなりそう→じゃあ、同じ考えを持つ人たちで別れよう→国を創ると手っ取り早い→二つの国に別れよう


 って感じでクヴァシル皇国とケリドウェン王国に別れたそう。これは公爵令嬢の時に、王妃教育の中で聞いた。初めて聞いたときどう思ったか…。


────軽っ!軽い、軽すぎる!ちょ~~軽っ!


 国規模の話なのにサクサクと決まったって言われると、そう思わずにはいられなかった。日本人だった頃に習った歴史の中では、考え方が違ったらすぐすぐ戦争になってたのに。貴族社会だった頃なんて特に。

 でも、そのお陰で(?)平和に過ごせてたから良いのかな、なんて思ってる。現に、セルシュヴィーン王子もクヴァシル皇国に留学に来ることができるくらいだし。


「ちょっとメリー!何ボーっとしてんの?早くしないと良い席取られちゃう!」


 エミリーの急かす声に現実へ引き戻される。エミリーは城門の向こうでぴょんぴょん跳ねながら手を振っている。それにあわせて明るい赤茶がパタパタと上下する。


────フフッ。可愛い…!


 ああ、行かなくちゃね。良い席取られるのは困る。私が一番楽しみにしていたものを良い席で見られないのは残念だもんね。


「ごめんごめん。今行くから!」


 私はそう言って城門をくぐる。やっぱりクヴァシルの城門と変わらない。ロイヤル風の白い門。所々金で縁取られていて太陽を反射して煌めいてる。内側も似たような感じ。クヴァシルの城に来たみたい。

 エミリーに追い付くと、エミリーは私の手をとる。


「もう!ほら、行くよ!近道するから付いてきて!」


「ちょっ、まっ…!」


 そう言うが早いか、エミリーは私の手を引いて走り出す。ぐんぐんと人の間を縫って向かう先は、人が少ない通路。奥には中庭らしき場所が見える。

 そこまで来ると、エミリーは一旦足を止める。


「はぁ……はぁ……。ふぅ~…。……つっかれたー!メリーは大…丈夫?」


 両膝に手をつき、エミリーは息を切らしている。エミリーよ。走り出したの君だからね。めっちゃ肩で息してるけどさ…。

 一方の私は全然平気。余裕綽々。そんな私を見てエミリーは未だに荒い息をしながらも目を見開き、息を飲……


「けほっ、こほっ、……ごほっ!」


 急に息ん吸うから過呼吸になりかける。危ない!


「もう、大丈夫?そんな状態で変に息吸い込んだら、もっと苦しくなるから!落ち着いて。ゆっくり息するよ。ほら、吸って~……吐いて~。もう一回。…吸って~……吐いて~…。」


 私が言うのに合わせてゆっくりと深呼吸すると段々と呼吸が穏やかになっていく。呼吸が整うと、エミリーは口を開く。


「メリー、平気なの?今ので?うっそ?!」


「ほんっと。…っていうか、ここ本当に近道なの?」


 エミリーを真似ておどけて返すと、エミリーはちょっぴり頬を膨らませた後、答えてくれる。


「勿論!この中庭を真っ直ぐ突っ切った所にある塀に、木の扉があるの。その向こうが競技場。本当はぐるって回って行かなきゃいけないのが、あっという間に着いちゃうんだ!」


「へ~。よく知ってるね、そんなこと。」


 得意気に話してるけど、普通そんなこと知ってるのかな。知ってたら他にもここ通る人がいると思う。


「まあね。伊達に針子やってないから。ちっちゃい頃からお母さんの仕事に付いてきて探検してたの。」


 それ、針子関係あるの?と言いたいところを我慢する。


「そうなんだ。あっ、早く行かないと席無くなっちゃう!」


 私がそう言うと、エミリーははっとして『こっち』と案内してくれる。


 中庭を抜けて木の扉の前に来る。扉は白く塗られていて、パッと見分からないようになっていた。

 扉を開けると競技場の裏の入り口に出る。中からはガヤガヤとしていて、賑わっているみたい。


「こっち側の席って、正面入り口から遠いからまだ空いているはずなんだ。行くよ。」


 中に入ると、エミリーの言ったとおりこちら側は席が空いていた。舞台を挟んで向こう側の席は人が溢れかえっていて混雑してるみたい。

 私たちは舞台がよく見える一番前の席に座る。

 私は改めて辺りを見回す。左手の方に周りと区切られた造りの席がある。多分王族の席なんだろうな。この競技場は円形の造りになっていて、席はどこからでも見やすいように段状になっている。


────わぁ…。コロッセオみたい。すっごい……!


 そんなことを考えているうちに私たちの周りの席も次第に埋まってきた。




★°٠*。☆٠°*。★°٠*。☆٠°*。




 やがてほぼ満員状態になり、立ち見客がちらほらと出てきた。


「メリー!始まるよ!ほら見て!」


 エミリーが指差している方を見ると、二人の男女が舞台の中央へやって来ていた。服装からして男性が騎士で、女性が宮廷魔法使いだと思う。

 女性が片手をばっと天に向ける。すると、そこから眩い色とりどりの光が勢い良く溢れ出す。光は互いに絡み合いながら天に昇る一つの大きな柱となった。それは一気に膨れ上がると競技場一帯を包み込む。


────…っ!…ま、眩しいっ!


 堪らずぎゅっと目を瞑る。そして恐る恐る開くと光は収まっていた。そして会場は静まり返っている。

 男性が一歩足を踏み出す。


『ご来場の紳士淑女の皆様!これから始まりますは、皆様お待ちかねの騎士による剣舞に宮廷魔法使いによる演出、そして国一を争う聖騎士による一対一の真剣勝負!最後に国王陛下のお言葉を戴きます。どうか最後までお付き合い頂けますよう。

 

 それでは始めましょう!まずは5対5の剣舞、その迫力をとくとご覧あれ!』


 後ろの女性が魔法だろうか。男性の声が会場に響き渡る。すると、待ってましたと会場全体が沸く。熱気がすごい。でも、そんな光景が嬉しくなる。

 クヴァシル皇国にいた頃は平民と貴族がこんな風に入り交じって一つのことに盛り上がるなんて無かった。まず、貴族だけであっても女性が参加なんて無かったぐらいだ。

 それがどうだろう。ここはそんなこと関係なしに盛り上がっている。まるで日本にいた頃の野球やサッカーの試合みたい。

 

 私の心も段々と元気のバロメーターがぐんぐんと上がってくる。私は野球がすごく好きだったから、一ヶ月に一回は必ず試合を見に行っていた。そんな気分になってますますテンションが上がる。


 さっきの男女が出ていって10人の騎士が入ってきた。そこには女性騎士もいる。流石は実力主義国。

 5人ずつに別れて互いに向かい合う。その姿が上空に魔法で映し出される。


────光魔法だろうな。何人がかりでやってるんだろう。すごいな。


 液晶パネルではなく空間に現れた映像を見て感嘆の息を漏らす。舞台を見ると、何やら魔法具を使っているのが見える。発展してるなぁと思っていると、空気がぴんと張りつめる。

 騎士たちが己の剣を目の前で真っ直ぐと立てて剣舞の最初の構えをとっている。観衆もその緊張感を受けて彼らに集中する。


「…はっ!」


 一人の騎士の掛け声により剣舞が始まった。

 予告詐欺です。申し訳ありませんm(_ _)m

二週間も空いたのに…ってことで不憫なインディの建国祭をどうぞ。


  ~ボッチな俺の建国祭~


 どうか聞いてほしい。俺は一週間前に意を決してメルスティアに建国祭へ行かないかと誘った。そうしたらなんとだ。なんと!


     断られた…。


 エミリーとすでに約束しているとのことだ。おのれ、エミリーと思った俺は悪くないと思う。この間の大通り巡りでも邪魔されたのに、今回もだ。それをカイザーに言うと『お前だからな』と言われた。辛すぎる。


 と言うわけで今俺は一人で競技場に来ている。そこ、悲しいやつだなんて思わない!そしてメルスティアたちを見つけた。いつからここに居たのだろう。もう奥の方の席を取っている。ってメルスティア。綺麗すぎる。

 あの漆黒の艶めく髪をひとつにまとめ、それと対照的な白いふんわりとしたワンピースを着ている姿は、天使としか言いようがない。天使が地上に舞い降りている…!

 固まっていると周りの人たちに席を取られてしまった。くっ…。仕方ない。あのこの世のものとは思えないほどの清く愛らしく美しいメルスティアを見れたから、その代償だと思えばなんてことはない。

 そうして俺は席を取るために人の波に入って行くのだった。

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