建国祭 ⒈
メルスティア視点→エミリー視点→メルスティア視点です。
誤字脱字や内容のおかしなところがございましたら、ご指摘いただけると嬉しいです。
『近衛兵』を『護衛騎士』に変更いたしました。 7/27
国名が間違っていたので訂正いたしました。 3/29
「やっほー、メリー!準備できてる~?」
扉をバーンと開いて開口一番、すん~ばらしい程にハイテンションのエミリーさん。
ちよっ、まだ着替え中なんだけど……。てか、部屋のドアぐらい、ノックしてよ……。
大通り巡りからはや2ヶ月。私はエミリーの家に泊まりに来ていた。流石工房長の家。私が住んでる所とは広さとか、高さとか、色々違いますわ~。って思った。勿論、公爵家の屋敷とは比じゃないけどね。エッヘン!
そして今日はケリドウェン王国の建国祭。王族のパレードが大通りで行われた後、騎士や宮廷魔法使いによる出し物的なのがあるんだって。ファンタジー!!って、今まで散々私も剣振るったり、魔法ぶっぱなしたりしてきたんだけどね。
ってことで、今日はエミリーとそれらを見に行くことになってる。
「エミリー、ノックぐらいしよーよ。私着替え中なんだけどー!」
文句を言ってやりながら着替えを手短に終わらせる。今は夏の真っ盛り。今日の服は白の薄い半袖の上からシンプルな黒のキャミソールのワンピース。シンプル イズ ベストっていうテーマ。着飾るの面倒だし。
着替え終わってからエミリーの方を向くと、ニッコリ笑顔のエミリーさん。どういうことだ。その笑顔が心なしか怖いよ。
「ホントにそんな服で行くのかな?メリー?折角の建国祭なのに?」
待って!ホントに怖いから!何そのワキワキとした手は?!ああ、いつかのメイドたちを彷彿とさせるよ……。これ、逃げられないやつじゃん。
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私が部屋に入ると、メリーは着替え中だった。夜着を脱ぎ捨てて下着姿になっているメリーは、女の私でさえも魅惑的に思えた。本当に天然ですかそれ、と言いたくなる程豊満な胸に、滑らかなキュッとした曲線を描く括れ。いつも見てたけど、ここまでとは思わなかった。だって、服の上からじゃ分かんなかったんだもん!まさか着痩せする子だっただなんて!ずるい!いいないいないいなー!完璧なプロモーションを隠し持ってたのね!
なんて思ってるうちにメリーが着替え終わった。って、
シンプル過ぎー!素材めちゃくちゃ良いのにそれが引き出せてないから!
今日は建国祭。だからほとんどの人たちが着飾ってパレード等を見に行く。その中でこんな服装だったら、悪い意味で目立つよ。
そうだ!なら私がメリーを仕立てあげようじゃない。針子舐めちゃあ、いけませんよ~?
私は獲物を見据えながら手をワキワキとさせる。色々コーデが浮かんでくる。この美少女を私の好きなようにするんだ。
どうしようかなぁ。……よし!決めた!
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私はあれよあれよという間に服を脱がされ、別の服を着させられた。エミリーが以前作った服だそう。白いオフショルダーのフレアワンピースは薄い生地で透け感がある。スカートの裾にはにはぐるりと小花の刺繍がされている。その上から薄茶色のサッシュを巻かれて、某着せ替え人形〇〇ちゃんならぬメルスティアちゃんの完成!
仕上げに薄く紅をさされて、髪をトップでお団子にして先を垂らす。
メイドたちと同じくらいの早業なんだけど……。す、凄い……!
わざと地味に見せていた私が一気にどこかのご令嬢みたいになった。まあ、モノホンの元公爵令嬢だけど。その時に着ていた服とは比べられないけど、元日本人でもある私からすれば良い家の令嬢のように感じる。
エミリーが私凄いでしょ、ふふふんって感じのどや顔してるのは少々気に入らないけど、腕は公爵家のメイド並みかそれ以上だったので誉めてやった。
ん?上から目線だって?そこはスルースルー。
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今現在、私、メルスティアは東京のとある交差点にいる気がいたします。周りには、人、人、人、人、人、人、人、人、人………。そう。私は人混みに埋もれているのです!あっ!ちょっ、押さないでって流される!いっ、以上、中継でしたー!
なんちゃって。ちょっとやってみたかったんだよ。やってみてイタイってことは分かった。でもホントに流されそうだったよ。エミリーが気がついてとっさに支えてくれたから助かったけどね。
今私たちは大通りのパレードを見に来ている。王族のパレード。もうそりゃキラッキラッのピッカピカ。王族の人たちがそれはそれはきっれ~な馬に乗ってぱかぱかやってる。あっ、別に馬鹿にしてるわけじゃないから。その周りの警備が凄すぎてぱかぱかやってる音しか聞こえないんだもん。まあ、私は魔法でいくらでも見れるんだけど。使って怪しまれるのは避けたいしね。
エミリーは私の隣でぴょんぴょん跳ねてる。ウサギみたいですっごく可愛い。
遠目に王族の人たちが見えてきた。ほんのちょっとしか見えなかったけど、周りの年頃の女の子たちが『キャー!』って黄色い悲鳴をあげた。この国の王子が見えたみたい。すごいね。私もそんな声あげてみたい。
「ねえ、メリー見た?今ジルベルト様が通ったよ!」
エミリーが頬を上気させながら言ってきた。
ん?この国の王子って第一王子がユーフレヒト王子で第二王子がセルシュヴィーン王子だったよね?
「ジルベルト様って誰?」
私が訊ねると、エミリーは信じられないとばかりに目を大きく見開いた。
「何言ってるの?!ジルベルト様って言ったら、セルシュヴィーン王子の護衛騎士だよ?ほら、あそこにいるでしょ?水色がかった銀髪の……」
エミリーが指差した方を見ると、確かに水色がかった銀髪の男がいる。
何か見たことあるよ、あの人。どこで見たっけ?確か、えっと……。
「……あっ!あの時の運の悪かった人!」
「えっ!会ったことあるの?いつ?!」
「ああ、話してなかったっけ。大通り巡りの後お店の前に居たんだよあの人。閉まってるって伝えたら、また来ますって言ってたんだけど、結局来なかったんだよね~。そっか~。護衛騎士じゃ時間無いよね。納得納得」
エミリーは呆然としていた。おーい、と目の前で手を振るとはっと我に返ったようだ。
「そっ、そうなんだ……」
まだ驚いてるのかさっきの興奮が冷めてる。そっか、へ~、そっかそっか。と、ずっと言ってる。大丈夫かな?
セルシュヴィーン王子の護衛騎士か。でも私会ったこと無いよね。
私がまだ«真白の令嬢»と呼ばれるクリスティーナだったころ、ケリドウェンの第二王子であるセルシュヴィーン王子は、クヴァシル皇国に留学に来ていた。
もし、その時期があと一ヶ月でもずれていたら、アストレアの魅了の餌食になってただろうな。
私は次期皇太子妃だったから、よく話の場に参加させてもらっていた。セルシュヴィーン王子は頭のキレる人だった。話は一見世話話にしか聞こえない。でもその中で情報をさりげなく引き出そうとしてくる。
私やエドルグリード皇子はそれなりの教育を受けていたし、私なんて前世の経験もあった。エドルグリード皇子に至っては世紀の天才なんて言われるぐらいだったら良かったものの、他の人は太刀打ちどころか、それに気付くことさえできてなかった。国同士の問題になるような事は聞き出そうとしてなかった事が救いになったくらいだ。
その時にジルベルトなんて護衛騎士は居なかった気がする。確かもう少し年配の人だった。ということは、ジルベルト様は新しい護衛騎士なんだろうな。
そんなことを考えながら馬のぱかぱかという足音が遠ざかって行くのを聞いていた。するとエミリーが私の腕を掴んだので現実に引き戻される。
「よし!競技場行くよ!」
次は競技場で騎士や宮廷魔法使いが出てきます。