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閑話 真白親衛隊 ⒈

 ンギャー!年明けたのに新年の挨拶をする時期はとっくの昔に終わっているヽ(;゜;Д;゜;; )

 大変遅くなりました。本編ではなく親衛隊の話です。すっ飛ばしてくれても構いません。完全に作者が遊ぶために書いているネタ要員ですので。ふざけまくってますが、お目こぼしを。


 メルスティアが、まだクリスティーナだったときの、クヴァシルの国立学園に入学したての頃の話です。

「真白親衛隊第一回会議を始めます。記念すべき第一回の司会は、この(あか)が務めさせていただきます」


 五人の中心に一本の蝋燭の明かりだけ。薄暗がりの中、(あか)と名乗った青年の言葉でそれは始まった。学園の全ての者が寝静まった夜、この部屋に集まったのは«真白親衛隊»を名乗る五人の青年たちだった。


「まず議題は親衛隊の増員についてです。では提案者の(あお)、提案理由をお願いします」


 (あか)に指名された(あお)は、懐から一枚の羊皮紙を取り出した。植物紙が生産が始まって以来、羊皮紙は王城で行われる会議や、正式な契約書に使用されてきた。そのため、生産枚数は年々減少傾向にあり、値段も高騰している。そんな羊皮紙を使うほど、彼らにとってこの会議は重要視すべきものなのである。


「ああ。今回の提案理由は、我々親衛隊の噂を聞きつけ、親衛隊所属への志願者が増加していること。令嬢たちの組織している«真白の会»では身分問わず所属し、その数は今も増加傾向にあるらしい。共に«真白の令嬢»を敬う者として、我々も見習うべきではないか?」


 インテリ眼鏡の彼はブリッジを押し上げながら説明した。そんな(あお)の言葉に皆がうなずく。男尊女卑が当たり前とされるクヴァシル皇国で男性が女性を見習うなど、言語道断であるが、«真白の令嬢»のことになると話は違ってくるらしい。


「賛成だ。でも、それじゃあ問題が出るんじゃね? 今は色で呼び合ってるからいいけど、これから増える人全員を色で呼べなんて無理があるからな。そこんとこどうする?」


 お気楽な口調で尋ねたのは菜種(なたね)。彼が言うことは最もである。親衛隊の彼らには、それぞれ婚約者がいる上に、旗頭に掲げているクリスティーナは第一皇子の婚約者だ。親衛隊は彼女に恋慕しているわけではないが、端からみればそうともとらえられてしまう。そのため、万が一に備えて互いの名前は決して呼び合わないようにしていた。今は五人しかいないので問題ないが、これが十、二十と増えていけば色が重なる者が必ず出てくる。そうなったとき、互いを色で呼ぶのは困難になってくるだろうということだ。


「それは単純さ。ナンバーをつけてしまえばいいのさ」


「翠に一票」


 なにやらキザったらしい声の(みどり)が名案を出した。それに(あお)がすぐさま賛成する。


「仮にそうするとして、誰がNo.1を名乗るつもり? できれば僕が名乗りたいけど」


「待ってください、桃。それは私だとて名乗りたい。抜け駆けは許しませんよ」


 No.1の称号をめぐって桃と(あか)が小競り合いを始めた。呼び方など些細なものかもしれないが、これに順番がつくとなると些細など言ってられなくなる。序列ができるからだ。


「ここにいる全員がNo.1じゃだめか?」


 呆れたように二人を見る菜種が口を尖らせる。隣の(あお)が可愛くないぞ、と突っ込むが全く気にしない。


「ふっ。そこまでナンバーに拘るのなら、我々はNo.0と名乗ればいいのさ。No.0ならば何人いてもいいだろう」


 訳のわからない理屈を口にする(みどり)に、なぜか(あか)は名案だと頷いた。


「その案を採用しましょう。我々五人はNo.0と名乗り、これまで通り色で呼べばいいのです。これから入る者たちにはナンバーを名乗ってもらいますが」


「俺は全面的に賛成だ。菜種は?」


「ん、問題なしかな。桃、どう?」


 (あお)に尋ねられた菜種は桃に話をふる。


「いいよ。僕たちの間に差がつかなければ別になんでもいいからね」


 桃が笑うと、(あか)がコホンとわざとらしく咳をし、次の話題に移る。


「では次ですが……。これから人が増えるとなると、互いに親衛隊であるかそうでないかを見分ける必要が出てきます。その手段となるものを提案してください」


 議題らしい議題が出てきたことで、四人は真剣に考えはじめた。僅かな沈黙の後、最初に口を開いたのは菜種だった。


「ブローチとかどうよ? どんな服着ててもつけられるじゃん」


 自信ありげな菜種に、桃がキョトンとした顔で尋ねる。


「意匠が服に似合わない場合ってどうするの?」


 至極当たり前な質問に、菜種は同様する。そのことは全く考えていなかったようだ。雷が落ちたような顔に(あお)がため息をつく。


「お前はお馬鹿だったのか」


 その言い方の方が馬鹿らしく聞こえると突っ込んだ者はいなかった。


「それに、もし親にブローチの意味がバレたらどうするつもりですか? 外聞が悪いどころではありませんよ」


 婚約者がいる身で、また、婚約者がおらずとも次期皇太子妃を慕う親衛隊に所属していると親に知られでもすると、彼らの人生はお先真っ暗だ。万が一親が理解のある人間であればいいが、男尊女卑が根強いクヴァシルではあり得ないだろう。それを想像して五人は青ざめ、心の声が一致する。


 ────ブローチだけはない!


「けれど、同一の意匠を施した何かを身につけておくのは名案だ」


 (みどり)が会議中で初めて『さ』を言わずに言葉を発した。


「ふむ……。ならば先に意匠を決めなければなりませんね。ああ。私としたことが、なぜこんなことで悩むのでしょう。簡単でしたね。«真白の令嬢»ですから鈴蘭に決まっていました」


 (あか)が意匠のデザインをすぐに決める。«真白の令嬢»のモチーフは鈴蘭とされている。可憐で美しい姿を例えたのだ。デザインのテーマは決まったものの、それを何に施すのかはまだ決まらない。

 親衛隊に所属しない人にバレにくく、親衛隊同士がお互いを確認できるように常日頃から身につけている、もしくは所持しているもの。ここで、桃に閃きの女神が微笑んだ。


「ハンカチだよ! 刺繍したらいいんだ」


 突然声を上げた桃に四人は驚き、そして慌てて口に人差し指を立てた。今は他の生徒や教師たちが寝静まっている時間。桃の声は五人の中でも一番高く、響きやすい。声を潜めずに話すと、誰かを起こしてしまう可能性があった。

 四人にものすごい勢いで静かにするように、というジェスチャーで迫られた桃は両手で口をふさぎ、高速で頷いた。


「そう、静かにしましょうね。教師や管理人に見つかってしまえばこんなこと二度とできませんから。……しかしそれは名案です。私は賛成ですね。みんなはいかがです?」


 うっそりと微笑んだ(あか)の顔は、蝋燭の明かりのせいでものすごく不気味だった。正面からそれを見てしまった菜種は顔をひきつらせる。言葉遣いのわりにホラーは苦手なようだ。

 桃の提案に反対する者はいなかった。しかし、ハンカチに刺繍するとなると問題が生じる。


「ここに刺繍のできる男がいるわけないのさ」


 『さ』が復活した(みどり)がポツリと呟いた。

 男尊女卑国であろうがなかろうが、刺繍のできる令息などほとんどいない。刺繍は淑女の嗜みなのである。


「真白の会に依頼すればいいだけだ」


 (あお)がまた眼鏡のブリッジを押し上げる。しつこいようだが、男尊女卑国であるクヴァシル皇国で、男性が女性に依頼をするのは常識ではない。だが«真白の令嬢»が関わる以上、そんなことは道端の石ころ、いや、砂粒に等しかった。


「依頼するなら対価を払えばいいんじゃね? こないだ親衛隊に入りたいって言ってたやつがいたけど、そいつ侯爵家の長男でさ、どう考えても無理だろ? だから金銭的な面で援助したいって言ってきてよ」


 菜種がした発言は、後にビッグな人物までもが親衛隊の援助につくことに繋がる。それはまた次回かそれ以降に話すことになるので、今は置いておこう。

 そんなことは全く考えていなかった菜種の発言は、すぐに採用された。


 結局、24の鐘を過ぎてしまったため、真白親衛隊第一回会議はここでお開きとなった。始まりはこの五人であることをここに記しておこう。

 親衛隊の話はまだまだ続きます。続きはまた別のところで。


 次話は本編に戻ります。復活したセルシュから告げられて行く先はセルシュの領地?!

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