ときには遊びに行こうじゃないか
下記終わっていたのにデータが残ってませんでした。orz
すごく焦りましたがなんとかなりました。内容がおかしいところや誤字脱字がありましたらご指摘いただけると嬉しいです。
エミリーをロリ顔設定にしました。 7/27
私がパン屋に勤め始めて1ヶ月がたった。この世界での時の流れは地球とほぼ同じだ。違うのは1時、2時という数え方ではなくて1の刻、2の刻と数えることと、曜日が無いことだけだ。分かりやすくていい。
さて、今日はパン屋さんは定休日だ。10日20日30日が定休日だ。ということで、私はインディとエミリーと遊びに行く。
エミリーは針子をやっていて、新しいものに目がない。流行に敏感な子だ。赤茶の癖ッ毛を2つ結びにし、オレンジのくりくりした目を輝かせてファッションについて語る姿は、しっぽを千切れんばかりに振っている子犬のようで見ていて頬が緩む。しかもロリ顔で小柄。絶対人気だね。
今回のお出掛けはインディの発案だ。何を考えてるのか分かんないけど、大通りの店巡りだって。仕事で買い出しに行くときに見るから別に変わんないと思うんだけど……。だから、最初は行かないって断った。でも、エミリーが行くって言ったから私も行くって言った。インディ、ちょっと遠い目をしてたけど気にしなーい気にしなーい!
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相変わらず大通りはどこも賑やかだ。中世のヨーロッパのような町並みはおもちゃの国見たいで、可愛らしい。するとどこからか甘い香りが漂ってきた。
おっ! あそこのパフェ美味しそう! 苺みたいなあれ、リンゴの味するんだよね。
早速美味しそうなものを見つけた。エミリーも同じものに目を向けたみたい。目で合図してくる。
食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい。
エミリー、心の声がただ漏れだよ。そんなに訴えなくても分かるから。私たちはインディの方を向く。
「……」
無言の訴えの末、私たち二人が勝利した。私たちはインディからパフェを勝ち取った!
インディがパフェを買って来てくれる。おお、紳士だね。クヴァシルにいたころじゃ考えられなかったよ。
「──っ!! あっま~い! 美味しい!」
エミリーは早速口に入れている。目を輝かせて美味しそうにしてる。何そのリアクション。可愛いんだけど。ほら、インディが嬉しそうに見てるよ。
私もパフェを食べる。すると、口の中に甘いものがふんわり広がって、頬がとろけ落ちそうになる。クリームの甘さと、リンゴのような果物の僅かな酸味がベストマッチしてて最高だ。我ながら上手く食レポできたと思う。えっ、できてないって? 我ながらだからいーの。
「……ん。美味しい」
素っ気なくても仕方ない。さすがに二人の前で食レポをするのは恥ずかしいので一言で表す。だって、他に表しようがないもん。インディはまだ食べてないのに、もう幸せそうな顔でこっちを見てる。
ほうほう、そういうことか~。エミリーが可愛かったのか。そんなに可愛かったのか。だから大通りを巡るって言い出したのか。エミリーのこの可愛い顔が見たかったんだね? そうかそうか。見れて良かったね。
すると、インディがじと目になった。まさか気づかれた…?
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「メリー、あの服可愛くない?」
とある服飾店に飾ってある服を見て、エミリーが言ってきた。それはこれからの季節──この世界の季節は日本と同じで四季がある。今は春の終わりで夏を迎えようとしている。──にぴったりの爽やかな水色のトップスだ。首回りがレースになっているのがアクセントになっていて可愛らしい。けれど、元日本人として、元公爵令嬢として育った私には何か物足りないように感じる。
「可愛いね。あとさ、レースを白にして、裾の両脇にリボンを編み込んで付けたらもっと女の子らしくなって可愛いと思わない?」
日本で見てきた服や、公爵令嬢として養われた美的感覚から考えたことを口にする。
「いいねそれ! 私そんなこと思い付かなかったよ。メリー、すごい! センスあるよ!」
そんなにべた褒めされるとさすがに照れるな。
それから鐘二つ分はたったと思う。私は話に付いていけなくなった。最初の方は私が話を進めていたのに、途中からエミリーの独壇場になった。専門用語がビュンビュン飛んできて、分からなくなった私はずたぼろになった。さすが針子。
インディが呆然とした顔でこっちを見てる。あっ、居たんだ。あっ、いや、忘れてた訳じゃないよ!! うん。話に夢中で存在が頭の片隅にポロッと落ちてただけだから! そう! 忘れてた訳じゃない……はずだ。たぶん。
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「おーい! ゲールのパン屋の看板娘にマンチェスターの針子~! こっちのクッキーでも食べて行かないか?」
お菓子屋さんのおじさんが声を掛けてきた。ん? 私は看板娘なの? ま、いいや。その店の方から焼きたてなのだろう、クッキーの香ばしい匂いがする。
「ギーラさんのお土産にどう?」
「いいんじゃない? 母さん喜びそうだし」
インディに訪ねるとそう返ってきた。私たちはクッキーを一袋買った。ついでにココアクッキーを買って三人で食べる。サックサクで美味しい。これをお土産にして、正解だったな。
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エミリーは今日はこのあと用事があるらしく、帰らなければならないそうだ。私たちはエミリーと別れると家の方に向かって歩いていく。
「今日は楽しかったね。誘ってくれてありがとう。インディ」
私はまだお礼を言ってなかったことを思い出してお礼を言う。インディは少し照れたように笑った。
「そっか。それは誘った甲斐があるよ。また遊びに行こう。そうだ! 今度はふた「あれ? 店の前に人がいるよ。おかしいね」」
歩いているうちに近づいていたお店の前に人がいるのだ。驚いてインディの言葉を遮ってしまった。ここらでは定休日だということは知れ渡っている。だから今日はお客さんが来ることはないはずだ。こういうことは私がここに来てから初めてだ。その人は長身の男の人で黒装束に身を包んでいる。いかにも怪しい。
「インディ、ちょっと待ってて」
私はそう言って、魔法で自分の気配を消す。これは闇魔法の基本中の基本だ。そして、静かにその人の背後に近づく。
「すみません。どうかなさいましたか?」
私が声を掛けると、その人はビクッと肩を震わせてから私の方に振り向いた。次はこっちがびっくりする番だった。その人は透き通る感じの美形だったから。
「ああ、すみません。こちらでパンを売っていると聞いたもので……」
「そうでしたか。申し訳ありませんが今日は定休日でして。明日でしたら空いているのですが……」
私はそう答える。
「やはり、そうでしたか。来てみたら空いていなかったので、もしかしたらと思ったのですが……。日を改めて来ることに致します。では、失礼しますね」
男の人はそう言って去っていった。ここら辺の人じゃないんだろうな。しっかし、不思議な人だったな~。それに運が悪いのかな。お気の毒に。
「なんか、お客さんだったみたい。明日来るかもね。じゃ、私はここら辺で。また明日!」
インディにそう言って私は家へと足を向けた。
次からは連続で閑話を入れようと思います。インディ視点の大通り巡りとメルスティアが看板娘になった経緯の予定です。