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悪戯はほどほどに

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 書きたいところまで書いたら長くなってしまいました。

 夏の魔物(アエスターデモン)討伐から2日。あっという間に秋らしい気候になってきた。城の中は討伐が終わったことで穏やかな空気が流れている。

 さて、私は相変わらず一人で中庭で昼食をとっている。因みに今日はサンドイッチだ。それもただのサンドイッチではない。カツサンド!いや~、このカツすごくジューシーなんだよね。それに、最近気付いたんだけど、パンが柔らかくなってるの。そういえばインディにパン酵母渡した記憶がうっすらとある。ギーラさんとかインディとか、どうしてるんだろ。


 懐かしい下町の面々を思い出しながら思考に耽っていると、視界に見たくないものが入ってきた。なんで来られたし。ここは貴方のようなお方が来るところではないと存じます。はい。と言えたらどれだけ楽か。今すぐここから消え去りたい。


「今日もお一人ですか?メルスティア殿」


 そんな私の胸中を知らないその人は、イイ笑顔で話しかけてくる。相変わらず豪奢な金髪ですね。そしてそのキラキラしい笑顔が私には胡散臭く見えてしまう。


「こんにちは、セルシュヴィーン殿下。はい、今日も自分の時間を大切にしたいと思いまして」


 だから帰れと笑顔に込める。絶対伝わってるはずなのに、ガン無視して隣に腰かけてくる。お隣いいですか、の一言も言わないところが憎たらしい。まあ、言われても私が断れるわけないけどね。

 その憎たらしいセルシュヴィーン様の後ろには勿論無表情のジルベルト様と、確かカンジャス・コーヤッツだったっけ。もう一人の専属護衛騎士。実は前々から気になってたんだけど、カンジャス様の立ち位置。すごく違和感がある。だって、あそこは……、私がクリスティーナだったときにアストレアからの暗殺者(お客さん)たちがよくやって来てたところなんだよね。まあ、それを危惧してその道を塞いでるんだとは思うけど。


「ところで、殿下はなぜこんなところへ?」


 ちゃっちゃと用件済ませて帰ってほしいのでストレートに尋ねる。


「ジルベルトから貴女が魔力増幅剤(ポーション)を自作していると伺いまして。ぜひ見せていただきたいな、と」


 頼むように言ってるけど私に拒否権はない。そうか。ジルベルト様が告げ口したのか。そうか、そうか。よし、絶対仕返ししてやる。


「お見せするのは構いませんが、毒のような臭いがします。まあ、その分効果は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()程、ですが」


 ニッコリ笑ってジルベルト様のところを強調する。私の言わんとすることを汲み取ってくれたセルシュヴィーン様はジルベルト様を振り返って笑う。

 あ、魔王とは言わないけど中ボスぐらいの笑みだ。黒い。


「そうでしたか。それは素晴らしいですね。それをジルベルトは受け取っていないのですか?」


 おお!やりたいこと分かってくれた!セルシュヴィーン様がこちらについた今、ジルベルト様への仕返しが実行されることが決定した。


「はい。ぜひとも使っていただきたのですけど……」


 そう言いながら亜空間から魔力増幅剤(ポーション)を取り出す。一見他と変わらない色のそれを見たセルシュヴィーン様は、一層楽しそうに目を細める。


「見せていただいても?」


 どうぞどうぞ!セルシュヴィーン様にビンを渡すと同時に結界を張る。そしてビンを受け取ると同時にセルシュヴィーン様は片手でジルベルト様に魔法を放った。

 結構大きめな爆発音が中庭に響き、煙がモクモクと上がっていく。私が張った結界のお陰で周りに被害はない。でも、セルシュヴィーン様は意外と派手にやるらしい。悪戯を。いや、普通これで悪戯とか言えないからね。相手がジルベルト様だからできることであって、他の人にしてないよ……ね?そしてカンジャス様は一瞬の出来事に唖然として立ち尽くしている。うん。仕方ないよ。まさか王子が自分の護衛を攻撃するなんて考えないからね。

 案の定ジルベルト様は咄嗟に氷を放って相殺したみたいだけど、王族のセルシュヴィーン様の魔法を相殺するにはそれなりの魔力を消費する。今、ジルベルト様の魔力量は相当少ないだろう。これでお分かりいただけただろうか。私たちのしたいことが。


「手が滑ってしまいました。申し訳ありません、ジルベルト。今ので魔力を相当消費したでしょうから、これで回復してください。メルスティア殿、これを使ってもよろしいですか?」


「勿論です」


 魔王降臨。真っ黒い笑顔で魔力増幅剤(ポーション)をジルベルト様に差し出すセルシュヴィーン様。うわぁ、鬼畜!これ、絶対素が出てるよね?めっちゃ楽しんでるよ。以前クリスティーナのときに会ったとき、もしかしたらとは思ってたけど、やっぱり腹黒だ、この人は。


「いえ。私よりも殿下の方が魔力を消費したのではありませんか?貴方が使うべきです」


 自分のことよりもセルシュヴィーン様を、と言うジルベルト様。主を気遣っているように聞こえるけど、魔力増幅剤(ポーション)飲みたくないだけだよね?

 そして勿論それが分かっているセルシュヴィーン様は、ニコニコしながら魔力増幅剤(ポーション)を差し出す。


「魔力が大幅に削られている状態では護衛として心許ありません。私はいいですから飲んでください」


 飲んでください、が飲め、にしか聞こえない。最もな正論に反論のしようがないジルベルト様。

 ざまぁ見ろ!私のところにセルシュヴィーン様が来るようなことをした報いだ!ハッハッハッ!

 してやったりと心の中でほくそえむ。セルシュヴィーン様に圧されたジルベルト様は、ビンを手に取ると、おもむろに中身を煽った。飲み干しても無表情を貫いている。すごい……。思惑など吹き飛び感心していると、ジルベルト様が急に目を見開いた。やっぱり無理だったかな?


「魔力が急速に回復しています!」


 だろうね。でもそれに反比例するかのように顔色が悪くなっていってる。何かごめんなさい。やり過ぎたかも。ちょっぴり申し訳ない気持ちになってきた。

 見てられなくなって無言で治癒をかけると、ジルベルト様の顔色が戻った。ついでにセルシュヴィーン様には魔力回復の魔法を。


魔力逆行(フルツァターナー)


 元々存在しない魔法、いわゆる独自魔法(オリジナル)だ。自分の魔力を使って相手の魔力を使った魔力の倍の量で回復することができる。正直これを考え付いたときはチートが過ぎているかもしれないと思った。でもよくよく考えたら自分には使えないからそこまでチートじゃない……はず。だって独自魔法(オリジナル)だから他の人には使えないし。


「……ありがとうございます」


 私が詠唱したことに驚いたのか、やや間があってお礼を言われる。


「いえ、殿下からお礼を言われるようなことはしていませんよ」


 慌ててセルシュヴィーン様に返す。ジルベルト様には無言で軽く頭を下げられた。こっちが罠に嵌めたからお礼を言うようなことでもないもんね。そしてちょっとじと目なのは気にしないでおこう。


 一連のことが終わったにも関わらず、セルシュヴィーン様ご一行は去ってくれない。まだ何かあるのか。てかそっちが本題なんだろうな。ため息が出そうになるのを堪えてセルシュヴィーン様に向き直る。


「それで、本題は何ですか?」


 尋ねると、セルシュヴィーン様は嬉しそうに口の端を上げた。


「ほら、気づくと言っただろう?」


 ジルベルト様とカンジャス様を振り返る。あれ?言葉が砕けてない……?

 私が不思議に思ったところで、ジルベルト様が口を開いた。


「殿下、失礼ながら言葉が砕けておられます」


「メルスティアはいいだろう」


 はい?せっかくジルベルト様が諌めてくれたと思ったら私はいいですと?えっと……、私は何か信用された感じかな。もしかしてさっきのあれで?いや、なわけ。てかメルスティアって呼び捨てされてるんですが?!敬称つかないの?え、やだよ?これ以上深入りしたくないんですけど!!

 頭上にクエスチョンマークを散らしていると、セルシュヴィーン様が立ち上がった。


「ここで話すのもなんだ。私の執務室に来てくれ」


 え、嫌です。そうきっぱり断るなんてできない私は、大人しくセルシュヴィーン様の執務室に連行されることになった。


 ねえ、私何かした?!




★°٠*。☆٠°*。★°٠*。☆٠°*。




 取り敢えず連れてこられたはいいものの、この人たちは私に午後の予定がないのを知っていたのか知らなかったのか。いや、セルシュヴィーン様のことだから知ってるだろうけどね。

 カンジャス様は他の護衛騎士と交代したため、執務室内には私とセルシュヴィーン様とジルベルト様の三人。もう一人の護衛は執務室の扉の外だ。


「そこに掛けて」


「失礼いたします」


 指し示されたソファーに腰かけると、執務机に肘をついたセルシュヴィーン様はゆっくりと口を開いた。


「下町で、最近不審な動きがあるんだ。城で使われている食材を扱っている店に細工がなされていてな。今日はパンに混入物があった」


 それは結構重大なことではないか。もしそれが王族の食事に出されてみれば、その店は次の日にはこの国から姿を消してるかもしれない。


「それは公にされていることでしょうか?」


「いや、今のところ公にするつもりはない」


 ということは、内密に探れってことかな。それで私は呼び出されたと。良かった~。私何かやらかしたのかと思ったよ。


「では私は下町で探ればいいのですね」


 確認すると、その通りだと肯定された。ならばきちんと情報をもらっていかなければ。


「犯人の目星、及び犯行の意図の目星はついているのですか?」


「恐らく城に内通者がいるのだろう。意図は不明だ。ただ混乱を招きたいのだとすれば、やることが小さすぎる。この裏に何かあるのかもしれないとは考えているが」


 確かに混乱を招きたいだけならやることが小さい。もっと派手にやらないと混乱などは起こらない。でも、この裏に何かあったら?この些細かもしれない出来事は、確かに些細かもしれかないが、無視できないことだ。そこに目を向けさせて……、ということも考えられなくはない。でもこんなことを陽動に使っても、動くのはせいぜい数えるほどの騎士ぐらいだろう。陽動の意味もないとしか言いようがない。


「そうですか。では、最近食材を扱っている店やパン屋の入れ替えはありましたか?」


「ああ。パン屋にジルバのパン屋が加わった。確か貴方が前に働いていたところだろう?」


「はい」


 そうか。どうりでパンが柔らかかったわけだ。インディが頑張ってるのかな。

 そうやって言葉を交わしていると、扉が叩かれる。


「ジルベルト様にお客様でございます」


 ジルベルト様は、ちらりとセルシュヴィーン様に視線を送り、セルシュヴィーン様が頷くと、ここに連れてくるようにと伝えた。

 私が会っていいのだろうか。それより、護衛の任務中に客を迎えるって……。常識的にどうなんだろう。


 数分経って、再び扉が叩かれる。


「ジルベルト様、────でございます」


 ……え?この声……。え?

 ジルベルトのキャラがどんどん崩壊していく……。弄られキャラじゃなかったはずなのに……!!もう開き直ってジルベルトは弄られキャラにするべきかもしれません。


 次話はジルベルトの元にやってきたお客さんとは?もうお分かりの方も多いかもしれませんけどね(笑)

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