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報告会という名のプチ尋問会

 ブックマークありがとうございます!後日報告もありがとうございます!助かります!


 もし忘れていらっしゃる方がいたら……

聖騎士

 ザラド・ブルスター 

  火属性 ハンマー

 スザンナ・ノイセル 

  水・風属性 独自魔法 短槍

 ケルビン・レイバン

  地・闇・水属性 毒(魔法具)使い

 夏の魔物(アエスターデモン)討伐完了から2日。私たち聖騎士は事後処理に追われていた。ラスターさんは当時の伝達事項をまとめた報告書と、デモンバクの魔力に関する報告書。アリス様は捜索の経緯の報告書。ジルベルト様は普段のセルシュヴィーン殿下の護衛に加えて、デモンバク討伐時の詳細の報告書を。そして私は礎の間での報告書。といった感じだ。結構鬼畜だよね。この騎士団。だって討伐完了直後からデスクワークだよ?!こっちの身体を何だと思ってんのって。少しは休ませてくれてもいいじゃんって思って、報告書を細かい文字でびっしりと埋めて突きだしたのはちょっとした八つ当たりです。文官の人たちごめんね?


 そして今は聖騎士に収集がかかったから、いつも通り聖騎士の訓練所近くの部屋に向かう。


「メルスティア只今到着しました」


 扉を叩きそう告げると、中からスザンナ様の返事があった。

 中に入ると、ほとんどの人が揃っていたみたいで、あとはケルビン様だけ。各々好きな椅子に座っている。それより、ラスターさんとアリス様が若干げっそりして見えるのは気のせいかな?ラスターさんはホワホワオーラがいつもの六割ぐらいだし、アリス様は目が少し死んだ魚の見える。絶対口に出して言うつもりないけど。


「あとはケルビンか。……ああ、来たな」


 総帥様がそう言った直後、ケルビン様が扉を開けて入ってきた。心なしか前見たときよりも山吹色の髪がボサボサじゃない?


「揃ったわね。早く始めるわよ。今日は報告書に追われて寝不足なのよ。この私のツルツルお肌に悪いの。早く帰ってケアしたいわ」


 とっても自由なアリス様。さほど今までと変化のない肌に手を添えながら憂える姿は様になってる。じゃなくて、やっぱり報告書に追われてんだ。その後ろでウンウンと同意しているラスター様も追われてたみたい。ジルベルト様は相変わらず無表情で何考えてるか分かんないや。ほんとにピクリとも動かない。


「始めるか。今回の討伐は結論から言うと、夏の魔物(アエスターデモン)は王都の結界により討伐された」


 あっ、それ最初から言う?結構はしょってるから分かんない人には分かんないと思うんだけど。

 総帥様の言葉に心の中で突っ込みながら見回すと、案の定頭にクエスチョンマークが浮いている人たちがいる。スザンナ様とケルビン様、そしてザラド様だ。スザンナ様は静かに微笑んでるけど小首を傾げてるし、ケルビン様はボサボサの髪が邪魔して表情がよく見えないけど、口が開いてるのが見える。一番顕著なのはザラド様で、顎に手を当てながら口をパッカーンと開け、天井を見上げてる。あ、すごく脳筋のバカに見えるよ……。


「総帥様、ご説明いただいてもよろしいでしょうか?理解が追い付かないのですが」


 小さくスザンナ様が手を挙げる。


「そうだな。私が説明するより当事者たちが説明した方がいいだろう」


 そう言って総帥様は私たちに説明を丸投げしてきた。でも総帥様の言うことは一理あるので、私たちは簡単に事の経緯を説明した。

 私の礎の間でも話になると、皆が若干引いてしまったような気がしたけど、それは気づかなかったことにしよう。だって不可抗力だもん。


「メルスティアは化け物じみた魔力持ってんだなぁ。ハッハッハッ!」


 一拍拍子抜けした後、ザラド様に豪快に笑われてしまった。いやいや、これでも私一応女子だからね?お年頃の花も恥じらう女の子だからね?これでも国一番の淑女って言われてたんだよ?化け物ってねぇ……。うん。ちょっぴり傷付いたのは置いといて……。


「魔力……沢山持ってかれた……。回復は……?」


 やっぱり聞かれると思った。絶対くるよね、そこ。ケルビン様に聞かれて、仕方なく答える。まあ、ここで聞かれなくてもジルベルト様からあの魔力増幅剤(ポーション)のことについて聞くって言われてたから、同じ結果になってただろうけど。


「自作の魔力増幅剤(ポーション)を飲みました」


 『自作』の言葉にケルビン様がピクリと反応する。そういえばケルビン様は研究が好きなんだっけ。気になるのかな。


「その魔力増幅剤(ポーション)ですが、今日持ってくるようにと言っています。効き目は絶大のようですが、その副作用が服毒した状態にしか見えなかったので」


 ちょっ!違う!副作用じゃなくて味だから!

 真顔でさらりと私の後に付け加えたジルベルト様に遠い目をしてしまう。


「ほう。それは気になるな。出してみよ」


 総帥様に言われたら出さざるを得ない。仕方なく亜空間から魔力増幅剤(ポーション)を取り出した。


「これです」


 一見普通の魔力増幅剤(ポーション)と見た目は変わらない。それに加えて私の作っているものは原液と、使えるように薄めたものでも色が一緒なのだ。下手すると間違うことがあったりなかったり……。あまりいい思い出ではない。でもちゃんとそれは見分けられるように、原液は蓋を黒に、薄めたものは蓋を透明にしている。

 そして今目の前にあるのは()()()のビン。しまった!


「あっ!これは間違……!!」


 慌てて薄めたものと取り替えようとするも時既に遅し。総帥様がおもむろに手に取って開けてしまった。ギャーーー!

 咄嗟に鼻と口を手で塞ぎ後ろに飛び退く。ヤダヤダ死にたくない!いつも作るときは魔法をかけて嗅覚を麻痺させてから作る程の代物。それを……!


 一気に強烈な悪臭が部屋に広がる。一瞬にして部屋は地獄のような悪臭に支配された。あまりに強烈な匂いに涙が滲み、喉がヒリヒリする。息を止めてしまいたい。


「ラスター!風!」


 アリス様が怒鳴ってラスターさんに風を起こすように命令した。いや、伝えた?同僚に命令ってのもおかしいかもしれないけど、この場合は命令だね。女王アリス様降臨。

 ラスターさんが全力で暴風を起こす。窓はバリンッと大きな音を立てて崩れ落ち、扉は一瞬で吹き飛び、壁や天井がミシミシと音を立てて軋み出す。


「総帥様閉めて!」


 ザラド様が苦し紛れに声を絞り出した。でも、確実に総帥様には聞こえてるはずなのに総帥様はピクリとも動かない。そんな……!

 するとジルベルト様がすっと総帥様に近寄り蓋を閉めた。そしてビンを奪うと私の方へと放り投げる。えぇええっ!

 急いで亜空間を開いてビンを放り込む。その代わりに消臭効果のあるハーブを取り出す。大量に取り出したので悪臭をすぐに吸い込んでくれた。なんとか息をつける状態になり安堵すると、ラスターさんが私に詰め寄った。


「メルスティアちゃん僕たちを殺す気?!」


 ごめんなさいとしか言いようがない。私が取り出すビンを間違えたのだ。


「すみません、原液の方を取り出してしまって……。取り替えようとしたのですが……」


 総帥様に目を向けると、まだ固まっている。あれ大丈夫なの?もしかして気絶したりしてない?

 私の視線に気付いたスザンナ様が軽く手を動かした。すると総帥様の顔を水が包む。いやいやいや!それ死んじゃうからっ!

 五秒ほどして総帥様の目がカッと開き、その瞬間に水が消え去る。あ、起きた。


「今のは一体……」


 やっぱり気絶してたみたいだ。そりゃそうだよね。あんな至近距離で原液の匂いを嗅いだんだもん。気絶するか。


「それで、何故こんな殺人級の代物を作った?」


 総帥様をほっぽってジルベルト様が聞いてくる。総帥様はいいのかな。


「既製品じゃ足りないんです。回復速度も回復量も」


 私の言葉に納得したように皆が頷く。ここにいる人たちは基本的に一般の人よりも魔力が多いから、既製品では何本も飲まないといけないのだろう。


「それは分かるわ。私も困っているのよね。でも、これはさすがに……。毒と勘違いするのも無理もないわよ」


 スザンナ様が同意を示してくれるけど、やっぱり匂い気になるよね。私も正直どうにかしたい。


「一応、使うときには薄めているので、ここまでの悪臭はないんです。ちょっと、いや、かなり不味いですけど……」


 少し遠い目になりながらもそう伝える。


「それでも使うときは必ず一言伝えてねぇ?それかぁ、一人でいるときに使って欲しいなぁ」


 ラスターさんにご最もな意見を言われて、ちょっぴり悲しくなる。でもね、これすごく効くんだよ?


「匂いとか味はその、あれですけど、効果は絶大なんです。誰か使いませんか?回復量も速度も他のものとは比べ物になりませんよ?」


 ダメ元で勧めてみるとほぼ全ての人から目を逸らされた。でも、その中でジルベルト様だけがほんの少し瞳が揺れている。あ、これ脈ありかもしれない。後で勧めてみよっと。


「コホン。それで、結界にはどれ程魔力を持っていかれたんだ?」


 話を進めるために総帥様が話を変えた。いや、話についていけてないから?


「9割ほどですね」


 そう答えると、ジルベルト様から訝しげな目を向けられた。


「あり得ない。一気に9割も根こそぎ持っていかれたら意識を保っていられる筈がない」


 うっ……。それ言われると。確かに9割持っていかれた。でも魔力保有量の9割ではなくて、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()9()()なんだよね。う~ん、適当な言い訳しておこうかな。


独自魔法(オリジナル)を創るときに何度も魔力を一気に消費していたので慣れているんです」


「スザンナ、それは本当か?」


 同じく独自魔法(オリジナル)持ちのスザンナ様にジルベルト様は確認する。


「私が使うのは魔力をあまり消費しないものなので……」


 スザンナ様は申し訳なさそうに答えた。独自魔法(オリジナル)でも人それぞれだもんね。


 私の魔力については、宮廷魔法使いの魔力測定が近々行われるので、そこで測ってもらえばいいということになり、報告会は私へとプチ尋問会として終わった。


 部屋から出ると、ケルビン様が私を待ち構えていたらしく、腕を掴まれた。


「原液貸して……。改良……」


 さすがに原液はあのビンしか無かったので、素材を伝えると、山吹色の奥で紫の瞳がキラリと光ったように見えた。

 その後、ケルビン様が実験室に籠ったのは言うまでもない。

 夏の魔物関連がやっと終わりました!これで次に進める!

 次話はセルシュヴィーン第2王子再来です。もしかしたらあの子も出てくるかも……?!

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