夏の魔物討伐 ⒊ (ラスター視点)
大変遅くなりましたっ!全然進まない……(。´Д⊂)シナリオ帳だけはどんどん進んでいっているのに……。だから最近の口癖は、「更新しなきゃっ!」です(笑)
今年の夏の魔物はどうやら厄介みたいなんだよねぇ。未だに見つけることができない。それらしき魔力の痕跡を見つけてもぉ、時間が経ってるのかぁ消えかかってるんだよねぇ。だからぁ、見つけていないのと同じってことぉ。
でもぉ、この僕でも見つけられないなんてぇ、どんな能力なのかなぁ。あーぁ。ライラにパパは早く帰ってくるよぉって言ってきたのにぃ。もう今日で、一週間だよぉ。レティーナのご飯も食べたいのになぁ。
目撃情報のあったところへと風に乗って向かいながら、家に帰ったら何をしようか考える。
「ちょっとラスター。さっきから下見てないじゃない。私に任せっきりってどういうことかしら?シャキッと仕事してちょうだい!」
考えに耽っていた僕にイラついたのか、女王様が喚いている。
もう、うるさいなぁ。でもいつものことだもんねぇ。スルーしていいやぁ。
「ちょっと!聞いてるのかしら?!私が話していてよ!」
はぁ。面倒臭いなぁ。こういうとこが無かったらぁ、すごくいい人なのになぁ。
「はいはぁ~い。聞こえてるよぉ。それにぃ、ちゃんと仕事はしてるからねぇ。今のところぉ、探知に引っ掛かってないからぁ、何も言ってないだけだよぉ」
「ならいいわ」
僕がちゃんと仕事を全うしていることが分かるとあっさり引いていった。
こういうところがいいんだよねぇ。ちゃんと弁えてるっていうかぁ。アマリリスとならぁ、仕事しやすいんだよねぇ。と、あれかな?
「今ぁ、遠くの方で魔法の痕跡見つけたよぉ。行ってみようかぁ」
アマリリスの返事を待たずに風を起こすための魔力を増やす。ギュンッという風の音と共に急加速すると、前髪がビシビシと額を打つ。ビリビリと振動する空気の音が耳をつんざく。
「ラスター!下の子たちを置いてってるわよ!!」
「あっ!忘れてたぁ」
魔力を止めると、それに伴って僕たちを運ぶ風も止まった。急ブレーキがかかった反動で前に飛ばされてきたアマリリスを受け止める。ぐぇっと呻き声を出したのは聞かなかったことにしておこう。
聞いたなんて言ったら鞭でビシバシやられちゃいそうだもんねぇ。そうなったら敵う気がしないしぃ。触らぬ神に祟りなしってねぇ。
「急ブレーキは止めてって常々言ってるわよね?落ちたらどうしてくれるのよ」
「落ちなかったでしょぉ?」
「……それもそうね。そのことは……ありがとう」
段々と声がしぼんでいったけど、アマリリスから感謝の言葉を引き出せたのでよしとしよう。
置いてきてしまった騎士たちが来るのを待つため、地上へと降りる。降りてみれば人っ子一人いない。目の前にはだだっ広い草原が広がるだけで、他には先程進もうとしていた方向に、うっすらと山影が見えるぐらいだ。
「アマリリスぅ、今皆どこら辺かなぁ?」
「少しは待ちなさいよ。私の完璧うる艶溢れんばかりの輝きに満ち溢れた髪が、さっきの突風でこんなに乱れたのよ。それを直す時間ぐらいくれてもいいのではなくって?」
う~ん……、そこまで乱れてないと思うんだけどなぁ。それに僕の風に乗るって分かってたんだからぁ、髪ぐらい結んできたら良かったのにぃ。
「どんな風を受けても変わらないフワフワの髪を持つ貴方とは違うのよ。私の髪は繊細なの」
僕の言わんとすることが分かったのか、苦虫を潰したような顔で言われた。実際に、僕の髪はあれだけの風を受けても元のままだ。でもそんなにじと目で見られても交換できるものでもない。そうこうしている内に、髪を整え終わったのか、アマリリスが地に両手を付いた。
「ここから約30キロほど先にいるわよ。どうする?迎えに行く?それとも私が大地を動かしてもいいわよ」
大地を動かすって……。自分がすごいこと言ってるの、分かってるのかなぁ。
「それくらいだったらぁ、少し待ってたら追いつくよねぇ。取り敢えずぅ、連絡だけしておくよぉ。 風よ運べ 音の調べ」
風を頼りに、騎士と行動を共にしている宮廷魔法使いに連絡をとる。
『連絡を受けました。こちら宮廷魔法使いフリューフィリア・ノースランド』
「あ、繋がったねぇ。こちらぁ、ラスター・ロビンソン。君たちを置いて先に行っちゃったからぁ、そこから30キロ北東にいるよぉ。ここで待ってるねぇ」
『えっ!30……っ!しょ、承知致しましたっ!失礼致します!』
「うん。じゃあねぇ。……伝えたよぉ」
魔力を切ってアマリリスを振り替える。そこには地面にどこから取り出したのか分からない布を広げて、優雅に寛いでいるアマリリス。本当に……相変わらずだねぇ。
「そう。なら来るまで私は休ませてもらうわ。ところで、魔法の痕跡はどれ程先で見つけたの?」
これまたどこから出したのか分からないふかふかのクッションに背を預けながら尋ねてきた。
「多分ねぇ、120キロぐらい北東だよぉ。大きさからしてぇ、どう考えても夏の魔物だろうねぇ。魔力の残り方からしてぇ、焼け焦げたような感じだからねぇ」
「へ、へぇ。そ、そうなのね……」
頬をひきつらせて笑うアマリリスに首を傾げた後、僕もアマリリスの横に腰かけた。
「なんで断りもなく横に座ってくるのよ。貴方は私を誰だと思っているのかしら?!」
案の定、アマリリスは今直したばかりの髪を払いながら僕を睨みつけてきた。払われてフワリとではなくバサリと翻った紫色が毒々しく見える。
「誰って言われてもぉ、君はアマリリス・テ「言わなくていいわ!」」
アマリリスの家名を言う前に鋭い声で遮られてしまう。有無を言わせないその表情に、その続きの言葉をつぐむことにした。
そこまで慌てなくてもいいと思うんだけどねぇ。そんなに自分の家が嫌いなのかなぁ。僕はちゃんと誰か答えようとしただけなのになぁ。それにぃ……。
「これでも僕の方が爵位は上だからねぇ?」
一応付け加えると、忌々しいものを見るような目を向けられた。これ以上は何も言わないほうが得策だねぇ。言ったら最後、女王様の鞭の刑に処されるからねぇ。うわぁ、怖い怖ぁ~い。
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二時間ほど待てば騎士たちが追い付いてきた。皆疲労困憊の様子。これから夏の魔物と対峙することになるかもしれないのに、既にこの状態はきついんじゃないかなぁ。
予め配布されていた魔力増幅剤を宮廷魔法使いに飲んでもらい、騎士たちを回復してもらう。残念なことに僕は風属性に特化しているから、回復系の魔法が使えない。アマリリスも地属性に特化しているから、同じく回復系の魔法が使えない。仕方なく全員が回復するのを見守っていた。
「そろそろ行こうかぁ。 風よ運べ 音の波紋 皆ぁ、ここから120キロほど北東に夏の魔物の魔法らしき痕跡を見つけたんだぁ。だからぁ、追いかけるよぉ。王都が近いからねぇ」
皆回復し終わったみたいだから、風魔法で声を拡大させて捜索隊全体に聞こえるようにする。僕の言葉を聞いていくうちに、何人かの顔色が悪くなっていった。おそらく新人かなぁ。前回の募集で入ったんだろうねぇ。慣れてないから怖いのかなぁ。それでも捜索隊に出されるくらいだからぁ、実力はあるんだろうねぇ。
「解除 アマリリスぅ、皆を運べるぅ?一気にぃ、行きたいからねぇ」
「勿論よ。そんなことがこの私に出来ないとでも思って?」
腕を組み、顎を上げ見下ろすという高圧的な態度で、当たり前のことを聞くなと言わんばかりだ。少し……いや、結構ムカつくけどこういうときのアマリリスは本当に頼りになる。
答える代わりにニッコリ笑うとアマリリスもフッと笑った。
「あなたたち、この私が運んであげるわ。感謝しなさい」
鞭を大地にピシリと叩きつけグッと背を反らすアマリリス。騎士たちを目だけを動かして見渡す姿は本当に女王様だ。
そこからは速かった。風に僕とアマリリスが乗って、同じ速度で騎士たちをアマリリスが大地ごと運ぶ。今までの移動速度と比べ物にならない速度め移動した結果、ものの数分で120キロ先の目的地についた。
「酷い……」
目の前に広がる光景は予想していたものを遥かに上回っていた。
焼け焦げた大地。剥き出しになった土はドロドロになっている箇所が多数あり、所々真っ黒な消し炭となった大地の名残がある。それだけではない。かろうじて元は動物であっただろうと判断できる焼け焦げた肉片。辺りに広がる鼻がひん曲がるような死臭。思わず顔をしかめてしまった。
「私がもっと早く気付いていれば……!」
アマリリスは横で怒りを顕にしている。決してアマリリスだけのせいではない。
「そんなことはないよぉ。誰のせいでもないんだからぁ。自然の摂理なんだからねぇ。僕たちにできることはぁ、この魔法の痕跡と同じ魔力を見つければいいんだよね……」
目を閉じて魔力に集中する。今まで以上に神経を尖らせて隅々まで見逃しが一切ないように気をつける。相手は魔力隠蔽が上手いのか、魔力を追うのが難しい。
どこだ。どこにいる。僕の探知を掻い潜るなんて許さない。
見つからない。この僕が見つけられないなんて。どれだけ魔力隠蔽に慣れているんだ。まるで魔力自体を消しているような……。
「そうか。今年の夏の魔物は……」
結局一話に収まらなかったので次話もラスター視点で続きます。