夏の魔物討伐 ⒈
ブックマークありがとうございます!
題と内容が一致していない感じが拭えませんが気にしないでくださると嬉しいです。
「そうそう。で、そのお店なんだけどね、新商品出たらしいんだよ。」
「そうなんですか?行きたいです。今度一緒に行きませんか?」
私、メルスティアは今、フィーとアミュと一緒に食堂で朝食を食べてます。そして罪悪感に苛まれてる最中です。何でかって?察してくださいよ。二週間前のセルシュヴィーン様との会話のやつですよ。はい。季節の魔物のことですよ。
…だって!完全に忘れてたんだもん!前にフィーとアミュが話してくれてたことなんてすっぽりと頭から抜け落ちてたんだもん!仕方ないじゃんっ!あのとき忘れそうだなぁ…なんて思ってたら本当に忘れてただけだもん。
でもね、こんな言い訳しても二人はそんなこと知らないわけだからどうしようもなくて…。結局自分のなかで罪悪感に苛まれてるってわけ。うぅぅ…。
「メリー?大丈夫?おーい。」
「…っ!ごめんごめん。ちょっと考え事してた。私もそのお店行きたい!」
アミュに目の前で手を振られてはっと我に返る。危ない危ない。よし、あのことは忘れよう!3、2、1、ポンッ!メルスティアは過去の過ちを忘れた!ってどこの可愛いポケットに入るモンスターだよ!
「じゃあ決定です!二人の次の休みはいつですか?」
フィーが両手を胸の前で合わせて喜ぶ。声が弾んでいてすっごく楽しそう。そんなに行きたかったんだ。フィーって服とかのセンスめちゃくちゃ良さそうなんだよね。普段着とか見たことないけど身に付けてる小物とかセンスが光ってるって感じ。センスが光ってるって言えばエミリー、どうしてるかな。聖騎士なってから会ってないんだよね~。会いたいな。
「私は二日後。メリーは?」
「私は三日後かな。あ、でも休みはずらせると思うよ。ケルビン様がその日に休み欲しいってぼやいてたから、言ってみたら変えれるかも。」
「私も二日後です。ではメリーが二日後に休みが取れたらその日に行きましょう!」
ケルビン様に会いにいかなきゃ。ラスターさんに聞いた話なんだけど、ケルビン様はケルビン様専用の研究室があるらしくて、基本的にそこに籠ってるんだって。そこ訪ねればいいよね。
和気あいあいとした雰囲気でガールズトークを楽しんでいた矢先、食堂全体に一つの声が広がった。
『全騎士団員、全宮廷魔法使いに告ぐ。今しがた季節の魔物がケリドウェン王国内で確認。各自隊ごとに集合せよ。繰り返す。全騎士団…』
一気に食堂に緊張が走る。カチャカチャと世話しなく聞こえていたカトラリーの音や話声が止み、食堂内にいる全ての人の目付きが変わる。完全に仕事モードだ…。
真剣な顔をして皆が一気に動き出す。今まで食べていた食事を置いて食堂から出ていく。セカセカと歩いている人が多い気がする。
「二人とも、お出掛けの話は延期になりそうだね。」
「そうですね。早く終わるといいのですけど…。では、お先に。」
「私も。メリーも早く行かないとね。じゃ!」
フィーとアミュも席を立ってそれぞれの隊のところへと歩いていく。私も行かなきゃね。残念だけどお楽しみは延期らしい。
私も席を立って聖騎士の部屋へと向かう。食堂を出ると人がごった返していて通りづらかった。
なんとか聖騎士の部屋に辿り着くと既にジルベルト様とアマリリス様以外が揃っていた。その二人もすぐにやって来て全員揃うと、総帥様が口を開いた。
「今回の夏の魔物だが、実態は確認されていない。被害だけが確認されている。ここ王都より数十キロ北で森林が焼き尽くされたらしい。進行方向がどうやら王都だとのことだ。迅速な発見及び討伐が要される。よって各自持ち場は護衛騎士は今は護衛。ラスターとアマリリスは捜索部隊。ザラドは王都周辺の警戒。ケルビンは指令部隊。そしてメルスティアは王都の結界の礎。質問は?」
すごいね。今の一息で話したよ。で、息切れ無しと。ワーオ…じゃなくて!私は結界の礎かぁ。実際あんまりやることないんだろな。てか私まだ実戦に出させてもらえてないんだよね。ま、仕方ないか。取り敢えずレッツラゴー!って行くの明日だ。
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食堂に戻ると、なんということでしょう!置いていった食事がそのまんま残ってるではありませんか。いや、ホント、マジでそのまんまなの。埃とか一切被ってない。普通あり得ないんですけど。温かスープの湯気も立ってるし。まるで時間が止まってたみたい…ってこれ本当に止まってたんじゃない?
「ねぇフィー、これって時間止まってた感じ?」
私より先に戻っていたフィーに聞いてみる。フィーは宮廷魔法使いだからなんか知ってるかもしれない。
「これですか?そうですよ。ここのおば様方が私たちが出たあとに時間を止めてくださってたのです。実はここのおば様方は元宮廷魔法使いの方が多いのですよ。」
え?マジで?初耳…。かなりすごいことをさらりと言ってのけたねフィーちゃんよ。食堂のおばちゃんってそんなハイスペックなの?!驚きで声が出ないんだけど…。
「あれ?なんかメリー固まってない?あ、もしかしておばちゃんたちのこと聞いたの?やっぱ驚くよね。メリーがこんなに驚くの初めて見た!」
アハハッと後ろから覗き込まれた上に笑われた。しかも私の背中をバンバンと叩きながら。アミュって騎士だから案外力をそ強くて地味に痛い…。てかそんなに笑わなくて良いじゃんアミュ~…。
口を尖らせてじと目で見ると目元に涙を浮かべながら、ごめんごめんと言ってきた。まだ笑いが収まらないようで、クククと体をよじらせてる。失礼な…。
「それで、二人はどうだった?私は発見次第駆け付ける実働部隊になったよ。」
私の隣に座りながらアミュがそう言った。ちょっと羨ましいな、なんて思ってないよ?別に自分が結界の礎に派遣だから拗ねてなんてないからね?
「私は捜索部隊です。私は水属性が得意なので発見次第、実働部隊が来るまでの時間稼ぎが役目ですね。メリーはどうですか?」
「私は王都の結界の方になったよ。だから特に何ともないかも。」
肩をすくめながら答えると、二人は何言ってんだこいつ、的な目で見てきた。私なんか変なこと言った?
「え~っと…。何かおかしなとこあった?」
「おかしなとこも何もっ!王都の結界って超重要ポジションだよ!」
「そうてすよ!特に今回はと~っても重要です!」
鬼気迫る勢いで詰め寄られてしまった。あ~、やっぱなんかやらかしたっぽい。
「何で?」
「コホンッ。いいてすか?季節の魔物には眷属がいますね?」
「はい。」
何やら唐突にフリューフィリアの季節の魔物講座が始まったよ。姿勢を正して聞かなくては。
「その眷属は魔力を求めて彷徨きます。例年は王都などから遠い田舎の方で発生していましたので、山などを彷徨いていました。」
ふむふむ。山は木の実とか小動物とかの魔力がいっぱいだもんね。しかも純度の高いものが多いから魔力の宝庫!…ってあれ?今回は王都近くだよね。てことは…。
ピンと来て顔を上げるとフィーが満足そうに頷いた。
「その顔は気付きましたね?ではメルスティアさん、続きをどうぞ。」
「はい、フリューフィリア先生。今回の季節の魔物の発生源は王都に非常に近いです。従って、その眷属たちも王都の近くに出現します。そうなると近くに山や森がないので自然と魔力を多く保有する人間が多くいるこの王都にやってくる、ということですね?」
「はい!大正解です!」
パチパチパチ~!と横で手を叩くアミュの顔が小馬鹿にしてる。ちょっとむっとしたので頬をつついてやった。
「眷属は基本的に弱いんだけど時々強力なやつがいるから、毎回聖騎士から誰か一人が結界に、もう一人はその周辺の警戒に駆り出されるんだよ。」
へぇ~。そうなんだ。知らなかった。今回私が選ばれたのは多分だけど魔力量だよね。かなり多いから万が一の時も私の魔力使った結界でなんとかできそうだもんね。
一人納得していると、食べ終わった食器を二人が片付け始めた。慌てて自分の分も片付ける。
「ねえねえ、夏の魔物ってどんなのが多いの?」
この前セルシュヴィーン様に教えて貰ったとき、季節の魔物になる動物は様々だと聞いた。あ、魔物って、癪気を大量に浴びたりした動物がなるやつだから種類は様々なんだよね。もちろん魔法動物でも普通の動物でもどっちでもなる。
「夏の魔物は火属性の魔物だよ。だからフィーが捜索部隊に入れられたってわけ。」
カチャカチャと食器を返却口に置きながらアミュが答えてくれた。夏だから火属性なのかな。すごい単純…。
そんなことを考えながら二人と別れて明日からの準備のために寮の自室へと向かった。
結界の礎ってどんなところですかねぇ。
次話は結界の礎での話ですね。もしかしたら短めになるかもです。
この小説の改正版をアルファポリス様でも掲載を始めました。チマチマと更新中です。よければそちらも見てくださると嬉しいです(^-^)