表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/60

第二王子再び

 ブックマークありがとうございます♪


『本当の令嬢って何だっけ…』と話が噛み合わなくなっていたので修正いたしました。

 ケリドウェンに来て約5ヶ月目に入ろうとしている。因みに騎士団に入団してから既に1ヶ月は過ぎていて、騎士としての生活にもだいぶ慣れてきた。

 今日は太陽がしっかりと顔を出していると言うのに、時折吹き付ける風が冷たい。涼しいじゃなくて冷たい。そろそろ季節が変わるかなって感じ。だからこの風は俗に言う秋風かな。あ、でもでも、気候は秋っぽくないんだよね。まだ夏だ。


 さて、私は食堂で貰ったお弁当を食べるために中庭に来ている。ここは建国祭のときにエミリーと通り抜けた場所。青々と茂る草木が瑞々しい。奥にベンチがあるからそこで食べることにしようかな。

 ここは意外と人通りが少なくて静かだから居心地が良い。別に沢山の人とワイワイやるのが嫌いって訳じゃな無いんだけど、なんか落ち着くんだよね。てか、こんないかにも自然って場所でお弁当食べるとか現代日本ではあり得なかった訳だし。なんか得な気分もする。


 ベンチに座りお弁当を開くと美味しそうな香りが漂ってくる。う~ん、最高!腹ペコ状態の人間にはたまりませんなぁ!さっきまで訓練場でザラド様と打ち合いしてたからお腹がもう、空きすぎて空きすぎて。ここまでくる間何回鳴ったことやら…。

 ザラド様のハンマー凄く重かった。あれは普通のレイピアで受けられるような代物じゃなかったよ。私のチートを込めに込めたレイピアだったから太刀打ちできたけど他のじゃ絶対無理。一瞬にしてポッキリだね。次いでに心もポッキリだと思う。それに私は身体強化をして戦っていたけど腕が痺れてる。それもかなり。ザラド様のあの身体強化は一級品だ。あれを越すものがあるとは思えないほどの完成度だったよ。


 しみじみと思い返しながらサンドイッチをはむはむ…。卵美味しい。パンは堅いけどね。でも分厚いから食べ応えがあるということで。


「随分と美味しそうなものを食べていますね。」


 …私何も聞こえない。二口目をはむはむ。卵が美味しいね。


「卵サンドですか。飲み物は…、無いようですね。一緒にいかがです?」


 …う。近っ…くない。アイ ドント ヒアー エニーシング。三口目をはむはむ。やっぱりパン堅いや。


「私の声は聞こえていないのですか?それとも貴女は造り出された幻影でしょうか?…ふむ、確かめてみましょう。」


 手元が黄金に…って!


「殿下っ!いつこちらにいらっしゃったのですか?」


 私のサンドイッチに噛みつこうとする黄金…、じゃなくて金髪の男。その名もセルシュヴィーン王子。慌てて手を引っ込めてサンドイッチを避難。私のお昼ご飯取んないで!

 驚いたように顔を上げると素敵な笑顔の王子様(黒い笑顔の魔王様)がいる。げっ…じゃなくて何で?とオロオロした態度をとってみる。


「ああ、幻影と入れ替わったのですね。良かった。このままでは貴女が不敬だとジルベルトと打ち合いになるところでしたから。」


 あ、はい。打ち合いにね。切り捨てられるの間違いじゃないかな?この人私が無視してたの気付いててこれやってるよね。てか物凄く面白がってるね。黒いのが滲み出してるよ。うん。私が悪うございました。


「それは甚大な被害になっていましたね。その前に入れ替われて良かったです。」


 うん。物理的にも国家的にも色々と甚大な被害があったと思う。後ろのジルベルト様のオーラが怖い。無表情だから余計怖い。そしてその手やめて!何で右手が柄にかけてあんの!それに左手を鞘に添えてるのも!ストップ!!そしてその横で普通に傍観してるカンジャス・コーヤッツ!止めてよ!あ、カンジャス・コーヤッツはセルシュヴィーン様のもう一人の専属護衛騎士ね。ブロンドのネコ毛にグレーの目をしてて、線が細いから一見弱そうに見えるけど案外強いんだって。

 内心戦慄しながら答えると渋々って感じの動作でジルベルト様が手を下ろした。これで一応安心できた。


「ええ本当に。それはそうと飲み物がありませんね。一緒にいかがです?」


 小首を傾げながらさらりと告げられた言葉でまた戦慄させられる。が、ここで気が付く。あの素敵な(真実薬入りの)紅茶の話でもしたいのかな?ここで話すのもあれだもんね。


「宜しければお言葉に甘えさせていただきます。」


 ここで身分を出して断るのは簡単だけど、それしてもこの人には丸め込まれて結局連れてかれる未来しか見えないんだよね。それなら自分から行った方が良い気がする。

 満足そうに微笑みを深めたセルシュヴィーン様についていくと中庭近くのテラスに連れていかれた。既に用意がされているところが憎たらしい。私が来ないということを全く想定していないというね。うわー…。


「さあ、こちらにどうぞ。」


 まさかのセルシュヴィーン様自ら椅子を引いて私に席を勧めてくる。私が断ることは不可能だそうです。ここも計算されているところがまた憎たらしい…。逃げ場を全て失った私は仕方なくセルシュヴィーン様が引いてくれた椅子に座ることにした。

 セルシュヴィーン様が私の正面に座ると控えていた侍女さんが紅茶を入れてくれた。あの時の紅茶とは茶葉が違うのかな。今日のはジャスミンティーのような香りがする。まあ、香りからして少なくとも薬は入っていないと思う。


「アレンジのない茶葉の味わいを楽しみたいと思いまして、今回は何も入れていないのですよ。」


 侍女さんとカンジャスが下がっていくと、セルシュヴィーン様はそう言って紅茶を口に含んだ。うん。だろうね。今回も何か入ってたらヤバいしね。私も紅茶を口に運ぶ。ふわりと口の中に花が咲いたように味が広がる。


「さて、時間は有限ですからね。まずは先日は失礼しました。貴女を侮っていました。」


「お止めください殿下。仕方ないと思っております。私がクヴァシル皇国にいた以上疑われるのは承知の上でしたから。」


 唐突に謝り始めたセルシュヴィーン様を見て急いで音声遮断の結界を張る。まさかこうも簡単に謝ってくるとはね。この1ヶ月ちょっとで一体何があったというのか。特に何もしてないから判断材料少ないんだと思うんだよね。


「そう言ってもらえるのはありがたいです。もし良ければ前回聞きたかったことを聞いても?」


「私の答えられる範囲であればいくらでも。」


 そうそう、私の答えられる範囲でね。私は一応クヴァシルの貴族の屋敷で働いてた元メイドってことになってるから、メイドが知ってそうな情報だけ話そっと。


「貴女は何故ケリドウェンに来たのです?これがずっと気になっていまして。」


 なんだ。そんなことか。勿論それは…。


「クヴァシルが男尊女卑国だったからですよ。何かと女性だからと言われて行動や言論が制限されていたぐらいです。私は全属性が使えますが、クヴァシルでは女がそんな力を持つ必要がないと言われるのでずっと隠していました。それが不満で不満で仕方なくて…。貴族の屋敷で仕えていた時にこの国のことを聞きまして、私でも騎士になれるのならとその場でメイドを辞めてその足でこの国に来ました。」


 メイドだったこと以外嘘はついてない。クヴァシルにいる間ずつと思っていたことだし、男尊女卑国であったことが私が出国を決意した理由だしね。ちゃんと本当のことだよ。


「そうでしたか。それはそうと、そろそろ季節の魔物(ファスルデモン)が出てくるころなのですが、クヴァシル皇国でどのようにして討伐していたかご存知ですか?」


「ファスルデモン…ですか?」


 何それ?そんなの知らないんだけど…。

 検討がつかない私を見てセルシュヴィーン様もジルベルト様も訝しげな顔をしている。これって知ってないとおかしいやつ…?


「知らないのか?…っ失礼いたしました。」


 ジルベルト様が思わずといった風に呟いた。滅多に感情の浮かばない目は驚愕に染まっている。でも表情筋はピクリとも動いてないんだけどね。でもその反応ってことは常識的なことじゃない?もしかして私常識が無い?!ヤバいよねこれって。


「お恥ずかしながら、今初めて耳にしました…。」


 私の告白を聞いたセルシュヴィーン様が雷に打たれたような表情を浮かべる。あのセルシュヴィーン様がこんな表情をするって相当だよね…?


「…コホンッ。そうですか。季節の魔物(ファスルデモン)とは季節の変わり目に現れる魔物(デモン)のことです。普通の魔物(デモン)とは違って眷属を従えていたり、強力な魔法を使ってきたりする魔物(デモン)でとにかく厄介なのですが、更に厄介なことに季節の魔物(ファスルデモン)を討伐しなければ季節が巡らないのです。」


 あ、それ聞いたことあるかも。この世界に来て間もない頃にエドルグリード様と読んだ絵本に書いてあったと思う。確かその絵本ではその魔物(デモン)を倒せなくて一年中冬が続いてたっけ。あれって実話なんだ~。へ~。


「そうなのですか。教えていただきありがとうございます。クヴァシルでは女性というだけでそういうことの情報が入り難かったので…。それには私も出向くことになるのでしょうか?」


「そうなると思いますよ。ただそれが我が国に出現した場合ですがね。」


「それはどういうことなのでしょうか?」


「かつてケリドウェンとクヴァシル皇国が一つの国だったのはご存知でしょう?」


「はい。」


 うん。それは知ってる。そして二人の王子たちのせいであっさりと二つに別れたんだよね。


「その頃はその国全土のどこかで出現していたのですが、二つに別れてからもそれは変わらないわけでして、ケリドウェンかクヴァシル皇国のどちらかに必ず現れるのです。ただその出現場所がランダムなので毎回対策しなければならないのですけどね。勿論クヴァシル皇国に出現したならば私たちの対策は無駄足になるのです。」


 へ~、そうなんだ。ってことはそろそろ季節変わるから対策しなきゃだよね。でもこっちに現れなかったら準備やらなんやらが全て無駄と…。はた迷惑なやつだな。

 とここで何か引っ掛かる。これどっかで同じ話聞いたよな~。どこだっけ?ま、いっか。


 その後も適当に話をして解放してもらった。セルシュヴィーン様案外話せる人だったなぁ。あの探ろうとしてくるところさえ無ければの話だけど。まあ、今回はいろいろ勉強になりました。


 そしてケリドウェン王国内での季節の魔物(ファスルデモン)の目撃情報が上がるのはそれから二週間後のことだった──。

 メルスティアは常識がありませんでした(笑)

セルシュヴィーン以外と良い仕事してくれます。そしてジルベルトのキャラがちょっとずつずれていっている気がするのは私だけでしょうか?


 次話から季節の魔物(夏の魔物)討伐に入って行きます!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ