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閑話 If シリーズ もしもハロウィンがあったなら

 ハッピーハロウィーン!実はジャックオーランタンってカボチャじゃなくてカブらしいですよ。


 ジャックという青年が悪魔に魂を売る代わりに貰ったお金でお酒を飲んだら、そのお金は偽物だったため、魂は渡さないと言うと、死んだときに悪魔と契約したから天国から入るのを拒否され、仕方なく地獄に行けば魂は渡さないと言っただろうとこちらでも拒否される。そうして天国にも地獄にも行けなくなったジャックはカブをランタンにしてさ迷い歩いている…。


 という話だそうです。諸説あるようですが。


 というわけで、本編ではまだ夏ですが一足先にハロウィンin下町です。どうぞ!

 さて、今日はハロウィーンと言う名の収穫祭。ケリドウェンもそのことで浮き足立っている。

 斯く言う私もウキウキワクワク!いや、年齢的にお菓子あげる側に回れよって言われそうだけどこの世界で初めてのハロウィンだよ!クリスティーナとして公爵令嬢やってたときは仮装パーティーとか出来なかったからね。代わりに仮面舞踏会やらされたけど。あの時はエドルグリード様がすぐに私を見つけて、その後他の人と踊らないようにってずっと捕まってたから面白くなかった。と、言うわけで私はお菓子を貰う側に回る!!


 約束の時間にエミリーの家に着く。今日はエミリーの家を出発点にしてお菓子を貰いに行くのだ、フフフン。

 扉をノックするとエミリーの声が聞こえてきた。


「あ、メリー?ちょっと待って~!」


 二階から駆け降りてくる音が聞こえる。エミリーの家は五階建てで一階がお店、二階がエミリーたちの家で三階と四階が工房、五階が倉庫と住み込みの人の部屋になってる。

 エミリーが出てくるまであと十秒。私は変化(へんげ)する。勿論黒猫。そう、黒猫!ブラックキャット!ハロウィンといえば魔女とかお化けとかフランケンシュタインとか色々あるけどやっぱ黒猫、ブラックキャットでしょ!


 ガチャ、と音がしてエミリーが鍵を開け扉を開く。そして驚いたようにキョロキョロと辺りを見回す。私を探してるんだろうね。フッフッフッ。私は下ぞ!下にいるんだぞ!

 って、こっち見てよ!


「エミリー、Trick or treat !」


 エミリーが私の声に驚いて下を見る。そしてもっと驚いたように目を見開く。どうよ!黒猫の完璧な発音!元日本人でもネイティブなみの発音を身に付けてるんだぞ、私は!(お菓子欲しくてTrick or treat だけ極めたんだけどね。)


「えっ…?メリー?…な訳無いよね~。メリーどこ行ったんだろ~。時間なったのにな~。」


 私を見て驚いた、まではいいんだけど私だって分かった瞬間ニヤリと笑って、わざとらしくそんなことを言い始めた。

 って、そのまま扉閉めようとしないでっ!!

 慌てて変化を解く。


「ちょっ、待ってエミリー!ごめんってば!」


「あはは!私の勝ち~!だからお菓子ちょうだい?」


 どういう理屈か全く分からない発言をするエミリー。ていうか何の勝負してたの…。


「やだ。」


 ニッコリ笑顔で断る。私はお菓子を貰うために来たのだ。そんなもの今は持ち合わせてない。


 中に入ると沢山の布が散乱している部屋がお出迎えしてくれた。その中心にはハリス。メロンパンが大好きなエミリーの弟だ。ここで私は悟った。


────着せ替えハリス君人形…。


 今はカボチャをモチーフにした仮装をさせられて、ニコニコ笑顔のハリス。そしてその周りには言わずもがなハリスのサイズの仮装服たち。既に着たあとのあるものもあれば自分の番が来るのを待っているものもある。…エミリー何着作ったの。


「ねえメリー、可愛いでしょ?マイエンジェル!」


 そんなキラキラ笑顔で振り返られても、この惨状を目にしている私はどう反応すればいいのかな?


「あ~!メルおねーちゃん!こんにちはー!」


 困っている私に元気なハリスの声が飛んでくる。ありがとう!


「こんにちは、ハリス。今日はハリスも一緒に行くの?」


「そうだよ~!おねーちゃんがね、いっしょに行こーって!だからね、ハリー、おきがえしてるの!」


 キヤッキャと笑って教えてくれる。そうか。今日はエミリーのハリス惚け話で決まりか…。

 そんなことを考えていると、エミリーが二着の仮装服を持ってきた。


「ねね、メリー。こっちとこっち、どっちの方がよりマイエンジェルを可愛く見せると思う?」


 ハロウィンだから可愛くじゃなくて怖くじゃないの。それを口に出してはいけないと本能が叫んでいるので、心の中で突っ込む。エミリーが手にしているのは可愛らしい狼っぽい服と猫っぽい服。


「私の好みは…じゃなくて、ハリスに似合うのはこっちじゃない?」


 そう言って猫っぽい方を指す。ハリスのオレンジの髪に合わせたオレンジの猫耳がセットになってて可愛い。


「だよね!こっちだよね!やっぱりメリーは分かってるぅ!じゃ、ハリス!こっちに着替えよっか~!」


 そうやって手渡された服にうんしょ、うんしょと着替えるハリス。途中手間取るところをエミリーに手伝ってもらいながら着替えてる。着替え終わるとエミリーが猫耳をつけてあげると完成!あ、可愛いわ。


「うん!可愛いよハリス!さすがマイエンジェル!にゃ~って言ってみて?」


「にゃ~!」


「はぅっ!か、可愛い~!もう死んでもいい!」


 いや良くないから!てか自分の世界に入っていかないで。私ここにいるからね。絶対私の存在忘れてるからこれ。


「エミリー、お~い、戻っておいで~?」


「はっ!いけない。もっと可愛いハリスを見る前に死ぬのはやだ!」


 それで戻ってくるの…。うん。やっぱりエミリーはエミリーだ。


「それで?エミリーはどんなの着ていくの?」


 そう聞くと待ってましたと言わんばかりにエミリーは何やら取り出してくる。緑のフワリとスカート部分の広がるワンピースで、所々に肉球マークが付いている。腰の所からは尻尾が垂れてる。そしてやっぱりセットの赤茶の猫耳。


「これよ!ハリスとお揃いの猫コーデ!メリーの分はないからメリーはさっきの猫でよろしく!」


 デーンといい笑顔で突き出すついでに私の仮装、というより変化まで決められた。うん。文句無いよ。さっきやっちゃったから覚悟はしてた。でも本当にするとはね…。ま、いっか。


「いいよ。」


 黒猫に、だーいへんしーん!くるりんぱ!…はい。調子乗りました。スミマセン…。


 黒猫に変化し空中で一回転してから床にしなやかに降り立つ。てか今思ったけど黒猫の私って黒毛に目は琥珀でしょ?完璧じゃなうっ!


「うわぁ~!ねこさんだ~!」


 ハリスが変化した私に駆け寄って私を抱き上げてしまった。足がぶら~んと揺れる。


「あっ!ハリス降ろし「あぁ!似合う!最高!よし。このままで行こうねハリス~!」」


「エミリー!!」


 私の言葉を遮ってブラコンがまた暴走し始めた。そして私の抗議の声が聞こえないほど自分の世界に入っていっている。これはもうお手上げだよ…。

 私は諦めてハリスに抱かれたままお菓子を貰いに行くことになった。




★°٠*。☆٠°*。★°٠*。☆٠°*。




「インディ、やっほ~!」


 カボチャが玄関に飾ってある家を何軒か回ってインディの家にたどり着く。エミリーが軽くノックするとインディが出てきた。


「ああ、エミリーとハリスか。…メルスティアは?」


 インディ、エミリーいるから別に私のこと気にする必要ないよね?可愛い二人を前にしてそんな真剣な顔で私のこと聞かなくていいと思う。


「メルおねーちゃんはこの子です!」


 ハリスが私をインディに突き出す。おっふ。急に動かされるとびっくりするよ。

 インディは訝しげに私を見る。そりゃそうだよね。急に目の前の猫が人間だって言われても困るよね~。


「本当にメルスティア?確かに色は同じで綺麗な猫だけどメルスティアはないだろ。」


 そう言いながら私の頭をなでなで。これって女子が憧れるシチュエーションランキング上位に入るやつだけど、状況が状況だから全く何も感じない。寧ろうとうとしそうになる。

 インディの指が私の顎を撫でようと向かって来たところで覚醒する。うとうとしてる場合じゃない!


「インディ!Trick or treat!」


 ばっ、と顔を上げて言うとインディがピシリと固まった。ん?大丈夫?

 目の前にあるインディの手を猫パンチしてみる。びくともしない。


「インディ?大丈夫?生きてる?」


 流石に猫が急に喋るのはこたえたかな…?首を傾げているとインディが再起動した。


「あっ、えっ、あっ、メ、メルスティアァッ?!う、や、その、あぁ&¥%℃#§*$&¢!!」


 あ、壊れた。私の後ろでエミリーがゲラゲラ笑ってる。助けてあげてよ。私を抱え直したハリスも絶対何が面白いのか(私もだけど)分かってないのに笑ってる。


「ハリス、降ろして。」


 ハリスの肩をペシペシ叩いて訴えるとハリスは降ろしてくれた。変化を解除して元に戻る。


「ふぅ~…。疲れたぁ。ね、インディ大丈夫?」


 インディの顔を見上げるとインディはみるみるうちに首からどんどん真っ赤になっていく。しまいにはプシューと効果音が付きそうなくらいゆでダコ状態になった。や、本当に大丈夫か?


「や、その、メ、メルスティアだと、おっ、おっ、おっ、思わなく、って…!~~~っ!無理!ごめーん!」


 インディは走り去って行ってしまった。別に気付かなかったこと怒るような人じゃないよ私。気付かなかったことってそんなに恥じることでもないと思うけど…。


「あっはっはっはっ!はぁ、はぁ。…ふっ!や、やるね、ぷふっ!メリー。ふはっ!」


「メルおねーちゃん、やるー!」


 エミリーどんだけツボってんの…。そしてハリスはやっぱり分かってないのにエミリーに合わせてる。言ったあとに分かんないって感じで首傾げるのやめようか。


「ねぇ、エミリー。インディどっか行ったけどいいの?てかお菓子…、貰えなかった…。」


「いいっていいって!んふっ!」


 涙目になりながら必死に抑えようとしてるけど全然抑えられてないよ。真顔と笑い顔がエミリーの顔で相撲してる。うん。頑張れ。


 取り敢えず、インディからお菓子が貰えなかったのだけが心残りです。

 インディが赤面して逃げちゃったのはただの猫だと思って綺麗だと言ったり、なでなでしたりしたのが本当はメルスティアだと分かったから。

 エミリーがツボったのは嵌められた感じになったインディとそれに気づかないメルスティアが面白すぎたから。

 ハリスはよく分かってません。


 そしてインディのところもう少し書きたかったけどエミリーがブラコン暴走させるから…。


 結局インディやっぱり不憫!っていう落ちでした。ちゃんちゃん。

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