強烈な初対面
二話同時更新です。前話を読んでいない方はそちらを先にお読みください。
朝食を終えてアミュとフィーと別れると、騎士団の訓練所に向かう。高い魔力が集まってるとこか~。正直言って、城壁内だから貴族多くて魔力高めの人が多いんだよね。取り敢えず魔力探ってみるか…って!何これ!異常事態だよ!こんな魔力量高い人が集まるなんてある?!いや、普通ないだろ!
ラスターさんが言っていた通り、確かに周りと比べてずば抜けて高い魔力が一つの場所に集まってる。本当にずば抜けてる。もしかしたら私よりも多いかもしれない。少なくとも一人は私より多い。多分総帥だろう。あの人の魔力はヤバイ。
その場所に向かって歩き出す。途中ですれ違う人から二度見されてる気がしないこともない。そういえばアミュが私をフィーに紹介するとき『例の聖騎士』って言ってたから、噂でも流れてるんだろう。それに初登城したときの伯爵令息みたいな視線も混じってる。そのほとんどは恐らく貴族の騎士だろう。いや~、妬み僻みって怖いよね。女同士のそれも独特な怖さあるけど、こういうのも怖いわ~。
そんな視線を向ける人たちに毎回ニッコリと極上の笑みを向けながら歩いていると、目的の部屋の扉が見えてきた。周りと変わらない見た目の扉。でも周りと違うところが。
────何故にこんな魔法かけてあるの?
扉には魔法が厳重に、幾重にもかけてある。絶対私を嵌める気だ。てかこれに気付かない人いたら面白いんだけど。魔力を通して魔法を全て解除して扉を開く。
「失礼します……?」
中には誰もいない。ううん。違うね。誰もいないように見える。光魔法で姿を消してるんだろう。次いでにそれに使われてる魔力も隠蔽されてる。でも残念でした。私に魔力隠蔽は通じませ~ん!記憶戻ってからずっと魔力偽装&魔力隠蔽やってきた経験値なめんな!
でもどうしたものか。ここで魔力隠蔽を解消しちゃったら駄目な気がする。う~ん…。
バーン!
「あらぁ?もう来ていたのね、新人ちゃん。私が遅れたのかしら?いいえ、それはないわ。貴女が早すぎるのよ!やり直して来なさい!あと総帥様~、隠蔽ばれてますから意味ないですよ?ほら、早く解いてくださいよ」
先ほど閉めた扉が豪快に開かれて濃い紫の髪をした女性が入ってくる。バシバシ睫毛に真っ赤な口紅、艶かしい体を惜しみ無く見せびらかすような布面積の小さい服。一応長めのローブを羽織ってるから許容範囲かな?色気を振り撒きながら喋るその人は妖艶という言葉がしっくりくる。
てか今さらりとかなり理不尽なこと言われたよね。何時に来いって言われてないから今来たんだけど…。しかも物騒な歓迎までされてたんだけど。何ていうか…、女王みたいな人だね。
「全く……。アマリリス其方が遅い。それに今のは流石に理不尽だと思うぞ」
そんな言葉とともに巨漢の男が現れる。あ、この人知ってる。総帥様だ。建国祭のときに戦ってた人だ。確かこの国最強だったよね。名前はカルステッド٠ブライトだったはず。«炎雷の王»だったかな?確かに炎雷だよね。燃え盛るような真っ赤な髪に深紅の鋭い瞳。いかにも強いです!って感じ。
一緒に六人の聖騎士も姿を現す。その内の二人はラスターさんとジルベルト様。他の四人も見たことがある。確か入団試験の時の人たちだ。
「ようこそ、聖騎士隊へ。しかし、あの魔法が解かれるとは想定外だった。魔法が発動してからの其方の行動を見るつもりだったのだがな」
総帥様がにこやかに言う。いや、待ってよ。あの魔法発動しちゃったら、ここら一体吹き飛んでたよね?!どうするつもりだったの?!
「……総帥。あれだと……俺ら……巻き込まれる……」
山吹色のボサボサの髪で顔が見えない人が私の心を代弁してくれる。ぼそぼそ話してるけどありがとう!
「それもそうだったな。まあ、私がいるのだ。何てことはないだろう」
そうですか~。正直何も起きなかったから今更だよね。
えーっと、私はいつ発言して良いのかな?発言するタイミングが全く見えない。
「カルステッド様、メルスティアちゃんが困っています。早く話を進めましょう」
波打った豪奢な金髪の女性が総帥様に進言する。アマリリス様とは違って何て言うかな。こう柔らかい感じ?おっとりしたような雰囲気の人。絶対貴族だ。それも高位の。
「そうだな。……ごほん。改めて、私はカルステッド・ブライト。ケリドウェン王国総帥を務めている。属性は火と光だ。国王の護衛騎士でもある。歓迎するぞ、メルスティアよ」
やっぱり火と光か。多分光は光でも«炎雷の王»だから雷系だろう。治癒系出来るのかな…?
「次は私ね。アマリリスよ。家名なんて聞かないでちょうだい。レディに聞くのは失礼ってものよ。護衛騎士ではないわ。属性は植物と闇よ。愛用している武器はも・ち・ろ・ん、鞭♡宜しくね、新人ちゃん!」
パチンッと綺麗なウィンクを決めて言われた言葉に納得する。鞭愛用ってもろ女王じゃん。この妖艶な色気駄々漏れのアマリリス様にはよくお似合いです。はい。
「……ケルビン・レイバン。地……闇……水……。……毒……研究ーー!…好き。よろ……し……」
最後消えてったよ~!暗いっ!めっちゃ暗い!山吹色のボサボサ頭でマッドサイエンティスト感増してる!絶対引きこもりだ!顔が、顔が見えない!ヨレヨレの服と細い手足が不摂生物語ってる!この人本当に聖騎士……?そして色々残念なとこ有りすぎてスルーしてたけど、三属性持ちじゃん。普通にすごい人……。
「ザラド・ブルスターだ。試験ときは世話んなったなぁ。お前ほんっとスゲーよ。あ、俺一応火属性だけどあんま使わねー。身体強化の方が得意だ。基本ハンマー使ってる。まあ、素手の方がやりやすいんだけどよ。ってことで宜しくな~」
あ、この人試験の時に倒した人だ。別に怒ってなさそうだから良かった~。それより、身体強化が得意かぁ。身体強化って部分的にやるのは案外簡単なんだけど、全身にやったり、部分的でもそれを持続させ続けるのは難しいんだよね。後から反動があるから、元から身体鍛えておくか、魔力で反動を相殺するしか無いから。焦げ茶の髪がツンツンしてて努力とか面倒くさいって投げ出しそうな見た目だけど、相当な量の努力を積んできたんだろう。
「スザンナ・ノイセルです。王妃様の護衛騎士をしています。属性は水と風なの。あと、独自魔法が使えるわ。メルスティアちゃんと同じなのよ。嬉しい。フフッ!私は短槍を使うわ。是非仲良くしてね」
大輪の花が咲いたように笑うスザンナ様。同性の私でも見とれる…。凄く綺麗なローズクォーツのような瞳は愛嬌があって親しみやすい。こんな人が短槍を扱ってる様子は全く想像できない。
「ジルベルト・プリアモスだ。知っての通りセルシュヴィーン殿下の護衛をしている。属性は水。使うのは片手剣だ。君の実力は認めている。宜しく頼む」
硬っ!ジルベルト様硬い。てか淡々とし過ぎでしょ。これがあの日店の前で迷っていた人とは思えないんだけど。っていうかやっぱりこの人は«氷の貴公子»だ。完璧なる無表情クール属性だよ。素晴らしい!
「最後はぁ、僕ねぇ。僕はぁラスター・ロビンソン。風属性でぇ、魔力操作はぁ、僕がケリドウェン一だと思うよぉ。武器は一応片手剣が使えるけどぉ、基本的に魔法を使うからぁ、最近は剣使ってないよぉ。メルスティアちゃん宜しくねぇ」
大取りはラスターさん。何かね、ラスター様じゃなくてラスターさんの方がしっくりくるんだよ。ジルベルト様の後にラスターさんってラスターさんのほわほわ感が5割増しくらいになるんだけど。相変わらずふわふわな髪ですねぇ。あ、ラスターさんの口調が移ってしまった……。
「私はメルスティア・カルファです。属性は全属性、武器はレイピアを扱いますが、他の武器も一通り全部扱えます。独自魔法は失われし夢幻世界以外にも使えます。至らないところばかりですが、最善を尽くしていく所存です。宜しくお願いします。」
私も自己紹介をする。こうして自分の出来ることを並べると自分のチート加減がよく分かる。総帥様たちも驚きで固まっちゃってるもん。うん。我ながら本当にチートだ。規格外でごめんなさい。でも私は悪くないもん!
「……そ、そうか。……そうか。ま、まあ宜しく頼む。改めて聖騎士隊へようこそメルスティア・カルファ。歓迎する!」
総帥様が若干狼狽えながらも絞めてくれた。その後、私は入団試験の時に使った失われし夢幻世界について根掘り葉掘り聞かれましたとさ!
聖騎士のキャラが濃い!とにかく濃い!一番まともなのジルベルトかスザンナだと思います。いや、ジルベルトは…はっ!駄目だ!これはネタバレに!ということで一番まともなのはスザンナです。
次話は城内探険です。案内してもらうだけですが。誰に案内してもらおうかなぁ~。
あと、「僕の愛しい人」に内容が抜けている部分がありましたので加えました。気になる方はご確認ください。最後の方です。読まなくても(微妙に関わりますが)あまりこれからに関わりません。