本当の令嬢って何だっけ…
ブックマーク&評価ありがとうございます!
39度の高熱を一晩で36度まで下げた後、地獄の2日間を切り抜け何とか生還したNeisheliaです。正直死ぬかと思いました(´・д・`)
今は安心して話を進められます。進められる内に二話進めます!
『第二王子再び』と話が噛み合わなくなっていたので修正いたしました。
可愛らしい小鳥によるモーニングコール。明るいキラキラとした鳴き声で目が覚める。
おっはよ~ございま~す!メルスティアで~す!今日も元気に頑張りま~す!
…何となく心の中で言ってみたけどただのバカだよね。うん。忘れて。
ベッドから飛び起きて着替える。聖騎士は基本的に何を着ていても良い。普通の騎士や宮廷魔法使いは許されないんだけど、ずば抜けてるチートな聖騎士たちは本人の実力にあったものを着るべきなんだって。聖騎士は聖騎士のブローチがあるんだけど、それ付けてればオッケーらしい。何か学校の名札みたいじゃん?
髪をポニーテールに結い上げておしまい。…え?化粧?何それ。美味しいの?
…嘘です!嘘だから!化粧が何かぐらい分かってるから!公爵令嬢の時にメイドからめっちゃされてたから、今はうんざりなだけだから!
正直言ってね、私元がいいから素っぴんでも全然いけるんだよね。あ、嫌味じゃないよ。ずっと言われ続けてたことだから。自己評価じゃなくて他人評価だからね。
部屋を出て一階に降りる。一階の食堂は既に人で溢れかえっている。ガヤガヤとした喧騒の中、私は朝食を受け取るために長い列の最後尾につく。
────…お腹空いたぁ~。
さっきから良い匂いがしてくるんだよ。ザ・朝ごはん、的なさ。そろそろお腹鳴りそう。てか、列長いんだけど。
長蛇の列はサクサクと進んでいくけど、それでもまだまだ先は長い。ご飯は遠い。これは何の試練ですか…。
やっとのことで私の番になった。
「はいよ。これね。」
「ありがとうございます。」
いかにも食堂のおばちゃんらしきおばちゃんが匂い通りのザ・朝ごはんを渡してくれる。実はここ、食事代要らないんだよ!国が負担してくれてるらしい。まあ、その分私たちの給料から引かれてるんだろうけど。
手渡されたトレーを持って座れる場所を探す。
…おっ!あそこ空いてるじゃん。しかもあれはもしかして…?
何となく見覚えのあるピンクのポニーテールに近づいていく。うん。確かに見覚えがあったよ。
「あのー、隣いい?」
ピンクのポニーテール改めアミュエリスに声をかける。アミュエリスは食べ物を頬張ったまま私を見上げる。
「ふぁ!へふふふぃははん!…んグ、いいよ~!」
うん。口に詰め込んだまま話すのはやめようね。聞き取りにくいしお行儀悪いよ。
「ありがとう。」
アミュエリスの隣の空いている席に座る。アミュエリスは目の前の子と食べてたのかな?アミュエリスの前にはパステルブルーの髪を緩くみつあみにした、儚げな女の子。服装からして宮廷魔法使いかな。
そうそう。この食堂は騎士と宮廷魔法使いが共同で使ってて、その代わり浴場は宮廷魔法使いの寮にあって騎士も使うことになってるんだ。だから騎士寮と宮廷魔法使い寮は繋がってるんだよ。
「あ、フィー。この人はメルスティアちゃん。あの例の聖騎士さんだよ。で、メルスティアちゃん、こっちは私の友達のフリューフィリア。子爵家のお嬢様で、宮廷魔法使いなの。」
あ、お嬢様だったんだね。てか貴族令嬢でも宮廷魔法使いなれるんだ。やっぱりケリドウェンは違うなぁ。
「初めまして。フリューフィリア・ノースランドです。メルスティアさん、宜しくお願いします。」
何か丁寧に挨拶されたんだけど…。この子って貴族だよね。今の私は平民だよね。ここはへりくだって接するべき…?
「こちらこそ宜しくお願い致します。フリューフィリア様。私のことはメルスティアとお呼びください。」
「あぁっ!そ、そういうわけじゃないんです!そんなに畏まらないでくださいっ!私はここではただの宮廷魔法使いですから!聖騎士であるメルスティアさんの方が偉いんですよ!」
身分を考慮したらいけないみたい。フリューフィリアちゃんは慌てふためいてしまった。
「そうだよメルスティアちゃん。フィーは子爵家のお嬢様だけど、私だってこれでも男爵家の娘なんだからね!そんな私を既に呼び捨てにしているメルスティアちゃんにはフィーをフィーと呼ぶ権利を授けよう!あと私のことはアミュと呼ぶがいい。ハッハッハッ!」
うん。訳分かんないよ?ちよっと待って。アミュエリスって男爵令嬢だったの?失礼ながらそう見えなかった…。いやいや、それより何故にアミュエリスがフリューフィリアちゃんを愛称で呼ぶの許しちゃってんの?!それはフリューフィリアちゃんが決めることだよね?
「えとー…。フリューフィリアちゃんで良いのかな?それとも「フィーって呼んでください!メルちゃん!」」
私の言葉が子爵令嬢にぶったぎられた。これで良いのか子爵令嬢よ。てかね、突っ込ませて…。
────私はお寝んねする子供向けのお人形じゃないから!!
それでも我慢しよう。だってこれ通じないんだもん。
「へぇ、へふはん。ははふはふぇふぁーほはふぇはーふぉ。」
おい!男爵令嬢!それでも男爵令嬢か!パン咥えたまんましゃべらない!そして牛乳で流し込もうとして、むせかえってるし!突っ込みどころ満載だね。でも確かに朝ごはんが冷めるのは勿体無い。…ん?待って。今スルーしかけたけど早速メルちゃん言ってない?あぁ、もういいや。
「確かにそうだね。でもね「アミュ!口に何か入れたまま喋ってはいけません!いつも言っているでしょ!」」
またしてもフィーに遮られた。いつも言ってるって、おかんみたい。もしかしてケリドウェンの令嬢ってこれが一般的な感じ?不安になってきたんだけど…。突っ込みはフィーに任せて朝ごはん食べよっか。
今日の朝食は食パンにベーコンに目玉焼き。そしてサラダが付いてて女性に優しいよ。あ、あとアミュエリスがむせた牛乳ね。
ベーコンと目玉焼きを食パンに挟むと…?あら不思議!これで貴方も空飛ぶ青い石に囲まれる!そしてバ○スと唱えれば?故郷が崩れ去るよ☆
スミマセン。別に馬鹿にしてる訳じゃないよ。私これめちゃくちゃ好きだもん。ここでは見れないけど今でも好きだもん。私の中の不朽の名作だもん。
そしてあのシーンと同じようにパクりとかぶりつく。するとトロリと黄身がパンに染み込む。美味しい。ちょっとパンがパサパサしてて固いけど黄身が染み込んだところは柔らかくて美味しい。
「そういえば、今年は遅いですよねぇ。」
フィーが思い出したように呟く。頬にそっと手を添えているのが様になってるよ。
「あ~、そうだよね。何か全然見つからないんでしょ?もかしたら捜索に聖騎士向かわされるかもね。」
アミュは深緑の瞳を私に向けてくる。でもね、私何のこと言ってるのかさっぱり分かんないだけど…。
「それ、何のこと?」
サラダを食べる手を止めて尋ねる。このサラダしゃきしゃきしてて美味しい。
「えっ?知らないのですか?」
「うっそ。知らない人初めて見たよ。ね、本気で言ってる?」
二人が一斉にこちらを向く。そんなに勢いよく振り向くことかな?ご令嬢のお二人さん。
「あ~、言って無かったっけ?私クヴァシルからケリドウェンに来たのが3ヶ月ほど前で、色々知らないこと多いんだよねぇ。」
「え?それでもあちらでも出ていたでしょう?季節の魔物。」
真朱の目をパチパチと瞬かせながら首を傾げるフィー。あ~、それね。って知らないんだけど…。私令嬢だったから周りが教えてくれなかったからよく知らないや。
「クヴァシルだと女子ってそういうのあんまり関わらせてもらえないから、よく知らないんだよね。教えてくれる?」
すると二人は目を剥いた。いや、だからご令嬢がこれで良いんですかって。もう、いいや。突っ込み疲れた。
「そ、そういうもんなんだ…。簡単に言うとね、季節の終わりに現れて、それを倒さないと次の季節がやってこない魔物だよ。」
めちゃ迷惑なやつやん。
アミュとフィーの説明を纏めると、季節が巡るために倒さなきゃいけなくて、元々同じ国だったクヴァシルとケリドウェンの何処かに必ず現れるらしい。どの季節に何処に現れるかはランダムらしくて、季節の終わりは空気が少しピリピリするって。
うん。そんなこと知らなかったよ。てかこれすぐ忘れそう…。
そのあとは最近魔力が暴走しちゃった人がいたとか、その人のせいで負傷者多数だったとか話したよ。これが世間話になる令嬢ってどうかと思うよ。あ、私も一応元令嬢か。
「あ~、いたいたぁ。…うぉっと。メルスティアちゃん、発見~。」
話の内容と全くもって正反対のほのぼのとした声が聞こえてくる。声の方に振り向くとやっぱり花が見える。えっと、今日はオキザリスっぽいのとハナスベリヒユっぽいのが見えるかな。
「あ、おはようございます。ラスターさん。」
背景にほわほわとした花を抱えたラスターさんが私たちのところに辿り着く。服が揉みくちゃにされてヨレヨレになってるよ。
「今日はぁ、聖騎士の部屋に来てねぇ。場所はぁ、ずば抜けた魔力がぁ、沢山集まってる所だよぉ。じゃあねぇ~。」
それだけ言ってまた人混みに戻っていく。また揉みくちゃになってるよ。がんば。
「今のって、ラスター様ですよね?」
「うん。あの風の魔人だよね?!すっごい!私初めてこんな近くで見た!」
「私も!魔力操作がとてもお得意なんでしょ?」
ラスターさんめっちゃ絶賛されてる。てか今『風の魔人』とか言ってなかった?それ二つ名かな?風が得意なのか。へぇ。
まあ、取り敢えず、私は自力で聖騎士の部屋に辿り着かなきゃいけないらしい。頑張りますか。
令嬢ってこれで本当に良いのでしょうか…?
それでは続けて「強烈な初対面」をどうぞ!